“直接触れる”意思疎通 コロナで困難に 盲ろうの人たちに影響
新型コロナウイルスは目と耳に障害がある「盲ろう」の人たちの生活にも大きな影響をおよぼしています。「盲ろう」の人たちは相手の手に直接、触れてコミュニケーションをとることが多く、なかには感染を防ぐため、外部との接触が大きく減って暮らしに支障をきたし、家族の負担も増しているケースもあり、関係者は支援の充実を訴えています。
「盲ろう」の人たちは目が見えない、または見えにくいことに加え、耳が聞こえなかったり、聞こえにくかったりします。世界的に有名なヘレン・ケラーもその1人です。
川崎市に住む中学2年生の井本美希さん(13)は生まれつき目が見えず、耳も聞こえません。美希さんは主に相手の手に直接、触れることで、さまざまなサインを受け取り、コミュニケーションを図っています。
手と手が触れ合わざるをえないことなどから、新型コロナウイルスへの感染を防ごうと、2月末から学校を休み、両親と姉の家族4人で外出を控える生活を続けています。
美希さんはテレビや新聞、インターネットから直接、情報を得ることができません。ウイルスによって一変した今の状況を理解できず、マスクを着けるのも嫌がってしまうため、気分転換の軽めの散歩でさえ、ほとんどできず、日増しにストレスがたまっていったといいます。
手のひらをひっかきすぎて皮がむけてしまったり、突然、泣きだしたりするなど、精神面で不安定になることもあり、勉強のサポートを含め、家族の負担は増しています。
母親の千香子さんは「ここ最近は『もうしんどいかな』という気はしています。盲ろう者は人がいないと生活が成り立たないので、ウイルスによって『人と接することがダメです』となると、支援がすべて打ち切られてしまいます。盲ろうという障害を多くの人に知っていただき、必要な支援につなげてほしい」と話しています。
川崎市に住む中学2年生の井本美希さん(13)は生まれつき目が見えず、耳も聞こえません。美希さんは主に相手の手に直接、触れることで、さまざまなサインを受け取り、コミュニケーションを図っています。
手と手が触れ合わざるをえないことなどから、新型コロナウイルスへの感染を防ごうと、2月末から学校を休み、両親と姉の家族4人で外出を控える生活を続けています。
美希さんはテレビや新聞、インターネットから直接、情報を得ることができません。ウイルスによって一変した今の状況を理解できず、マスクを着けるのも嫌がってしまうため、気分転換の軽めの散歩でさえ、ほとんどできず、日増しにストレスがたまっていったといいます。
手のひらをひっかきすぎて皮がむけてしまったり、突然、泣きだしたりするなど、精神面で不安定になることもあり、勉強のサポートを含め、家族の負担は増しています。
母親の千香子さんは「ここ最近は『もうしんどいかな』という気はしています。盲ろう者は人がいないと生活が成り立たないので、ウイルスによって『人と接することがダメです』となると、支援がすべて打ち切られてしまいます。盲ろうという障害を多くの人に知っていただき、必要な支援につなげてほしい」と話しています。
全国に約1万4000人
社会福祉法人「全国盲ろう者協会」によりますと、全国にはおよそ1万4000人の盲ろうの人たちがいるとみられ、本人やその家族などから相談が寄せられています。
なかでも目立つのは、情報の入手に関するものです。盲ろうの人たちは障害の程度にもよりますが、相手の手に直接、触れてコミュニケーションをとることが多いため、密接な状況を避けるよう求められている今、同居する家族以外と意思疎通を図るのが非常に困難な状況になっているということです。
そして、
「人に直接、触れたり、近くに人がいないと会話ができないので、自由に外出できず大変つらい」
「通訳や介助をする人たちの派遣を断られ、生活に必要なサポートを受けられない」
といった深刻な声も寄せられているということです。
協会の山下正知事務局長は「『3つの密を避けて生活しよう』ということですら、盲ろう者には十分、伝わっていません。不可欠な情報が伝わるようにしてほしい。また、通訳や介助をする人たちが家に来てくれないと、1人暮らしで外に出られない場合は何もできないのが実態です。サポートを利用できるよう、行政が何らかの形で通訳や介助をする人たちに報いていくことも考えるべきだ」と支援を訴えています。
なかでも目立つのは、情報の入手に関するものです。盲ろうの人たちは障害の程度にもよりますが、相手の手に直接、触れてコミュニケーションをとることが多いため、密接な状況を避けるよう求められている今、同居する家族以外と意思疎通を図るのが非常に困難な状況になっているということです。
そして、
「人に直接、触れたり、近くに人がいないと会話ができないので、自由に外出できず大変つらい」
「通訳や介助をする人たちの派遣を断られ、生活に必要なサポートを受けられない」
といった深刻な声も寄せられているということです。
協会の山下正知事務局長は「『3つの密を避けて生活しよう』ということですら、盲ろう者には十分、伝わっていません。不可欠な情報が伝わるようにしてほしい。また、通訳や介助をする人たちが家に来てくれないと、1人暮らしで外に出られない場合は何もできないのが実態です。サポートを利用できるよう、行政が何らかの形で通訳や介助をする人たちに報いていくことも考えるべきだ」と支援を訴えています。
「『触覚』奪われていく…」
自身も目が見えず、耳も聞こえない盲ろうの立場から、社会のバリアフリーの在り方を研究している東京大学の福島智教授に話を聞きました。
福島教授は「マスクをすると匂いもあまりしなくなり、最後に残された大切な感覚は『触覚=触ること』だが、人と触れ合うことを避けるよう言われ、どんどん感覚が奪われていく。盲ろう者にとって、新型コロナウイルスは非常に過酷だ」と指摘しています。
そのうえで、「誰よりも触れることで生活している盲ろう者に消毒液を優先的に配布してほしいし、いろいろなつらさを抱えている本人だけでなく、家族へのサポートもきちんとすべきだ。一人一人の支援者や通訳者を支えることはもちろんだが、その核となるNPOなどの支援団体を財政的に後押ししていくことも大事だ」と訴えています。
福島教授は「マスクをすると匂いもあまりしなくなり、最後に残された大切な感覚は『触覚=触ること』だが、人と触れ合うことを避けるよう言われ、どんどん感覚が奪われていく。盲ろう者にとって、新型コロナウイルスは非常に過酷だ」と指摘しています。
そのうえで、「誰よりも触れることで生活している盲ろう者に消毒液を優先的に配布してほしいし、いろいろなつらさを抱えている本人だけでなく、家族へのサポートもきちんとすべきだ。一人一人の支援者や通訳者を支えることはもちろんだが、その核となるNPOなどの支援団体を財政的に後押ししていくことも大事だ」と訴えています。