小児がん支援のNPO 新型コロナで寄付金減少 支援に影響

小児がん支援のNPO 新型コロナで寄付金減少 支援に影響
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新型コロナウイルスの影響で、小児がんの子どもや家族を支援するNPOは募金活動で寄付金を集めることができず、家族への支援が難しいケースが出ています。NPOは「子どもたちが必要な治療を受けられるように支援をお願いしたいです」と話しています。
東京 豊島区の「NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク」は12年前から小児がんの子どもや家族の支援に取り組んでいます。

しかし、新型コロナウイルスの影響でことし4月以降、街頭の募金活動やイベント中止で寄付金を集めることができず、年間およそ8000万円の寄付金の収入は、ことしは半分近くまで落ち込む見込みです。

このためNPOでは、自宅から遠く離れた病院で治療を受けるための交通費や宿泊費を年間50万円まで助成していましたが、20万円までに減らすことなどを余儀なくされ、家族への支援が難しいケースが出ています。

家族からは「医師からは感染を防ぐために公共交通機関の利用を禁止されタクシーなどを使っているため経済的な負担が大きい」などという声が聞かれ、ことし1月から4月までの助成の申請は53件と、去年の同じ時期に比べおよそ4倍に増えているということです。

NPOの松井秀文理事長は「本当に心苦しいです。子どもたちが必要な治療を受けられるように皆さんの支援をお願いしたいです」と話していました。

小児がんとは

「小児がん」は、15歳未満の子どもが発症するがんのことです。

国立がん研究センターによりますと、国内では1年間に2000人から2500人が新たに小児がんと診断され、その割合は子ども1万人におよそ1人だということです。

小児がんは白血病や脳腫瘍、リンパ腫、それに神経芽腫など種類が多く、大人のがんに比べて患者が少ないことから、治療経験が豊富な医師が十分にいないことが課題となってきました。

このため、国は7年前の平成25年から医療チームが集中的に治療を行い経験を積むことができるように、全国15か所の医療機関を「小児がん拠点病院」に指定しています。

国立がん研究センターによりますと、小児がんは発見が難しく、がんの進行も早い一方、成人のがんに比べて薬を使う治療法や放射線療法に対する効果が極めて高いのも特徴です。

医療の進歩によって、現在では7割から8割が治ると言われていますが、子どもが亡くなる病気で最も多くなっています。

小児がんの家族は

小児がんの3歳の娘がいる小田ゆりさん(40)は、夫と1歳の息子が住む長崎県を離れ、去年12月から名古屋大学医学部付属病院に入院している娘の付き添いを1人で続けています。
小田さんの夫は、緊急事態宣言が出されるまでの間、月に1回、航空機を利用して面会に来ていたため、小田さんは、その分の交通費の支援を「NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク」に申請しています。

小田さんは「NPOの助成金額の上限が50万円から20万円に減額されましたが、私たちみたいに長崎から家族が来るとなると、飛行機に乗ったりすれば、20万円はすぐにかかってしまいます。夫は娘に1日でも2日でもいいから交通費がかかってでも会いたいと言いますが、家計のことを考えると、それだけ交通費をかけて数日のために会いに来るのはどうなのかなと思ったりもします。また、変更された所得の条件では、私たちは申請できなくなるため、今後、経済的に厳しくなるのではないかと心配しています」と話していました。

専門家「寄付減少も支援対象に」

NPOなどの支援に取り組んでいる岡山県の大山知康弁護士は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少した中小企業などに支給される持続化給付金について、「NPOも支給対象だが、もともとは中小企業を念頭につくられた制度だ。このため支給を受けるために必要な売り上げの減少に寄付金は含まないとなっているが、NPOにとってみると寄付金の減少と売り上げの減少は何ら変わりはないと思う。新型コロナウイルスの影響は深刻化するなかでNPOなどが必要な支援を受けることができるよう制度を見直すべきだ」と指摘しています。

NPOを支援するため、政府がいわゆる「休眠預金」を活用して助成を行う制度を拡充する方針を決め、その内容や申請の受け付けを始める時期などについて調整を続けています。

これについて、大山弁護士は「非常にいいと思う。ただ、現在の制度はNPOの活動内容を分野ごとに審査し助成する団体を選ぶコンテスト方式で、事業費用の2割以上をNPOが自力で確保する必要があるといった規定などもあるため、苦境に陥っているNPOに支援が届かない可能性がある。今は緊急の事態なので、広く支援が行き渡るようにすべきだ」と話しています。