賭けマージャン問題 元検事「検察への信頼 大きく損なわれた」

賭けマージャン問題 元検事「検察への信頼 大きく損なわれた」
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、黒川検事長が賭けマージャンをした問題で辞表を提出したことについて「新型コロナウイルスで国民全体が自粛し、しかも自身の定年延長に関わる法案が審議されている状況で3密の極みと言えるマージャンをやっていたのは、検察のOBとして、国民の1人として極めて残念だ。今回の行為によって、検察組織や検察官に対する国民の信頼は大きく損なわれたと言わざるを得ず、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件に次ぐほどの衝撃だ」と話しています。
黒川検事長の人物像については「黒川氏が官邸寄りだと言われるのは、行政の世界に長くいることが出発点になっている。調整能力があり、非常に腰が低いところが議員や閣僚に重宝され、好かれた要因だと思う」と指摘しました。

そのうえで「検察から見ても有為な人材をこういう形で失わなければならなくなったことは非常に残念だ」と述べました。

また、賭けマージャンが刑法の賭博罪にあたるかどうかについては、「一般論として、例えばその場で消費するような飲み物や食べ物などを賭けただけでは、賭博罪は成立しないとされている。現金を賭けた場合には刑法の賭博罪が成立すると判例では解釈されているが、実際に立件する際には、金額の大きさなどが基準になる」と指摘しています。

そのうえで、「検察は、厳正かつ公平に調査や捜査を進めて事実関係を明らかにしたうえで、従来の基準に照らして処分を検討すべきだ。どのような結論でも国民が納得できるよう詳しく説明することが、検察が信頼を回復するために極めて重要だ」と話しています。

検察内部から批判の声相次ぐ

黒川検事長が賭けマージャンをした問題で辞表を提出したことについて検察内部からは批判の声が相次いでいます。

検察幹部の1人は「とにかく驚いた。脇が甘く、辞任は当然だ。刑罰権を行使する検察官は他の公務員よりも一層の高潔性が求められる。ましてや検事長は、多くの職員を指揮する立場で、報道が事実であれば、あまりにも軽率な行動で弁解の余地はなく国民の検察への信頼がさらに失われてしまう」と話しています。

また、中堅の検事の1人は「一線の同僚の検事はみんなショックを受けている。緊急事態宣言によって現場に外出自粛が呼びかけている中で、高検のトップが外を出歩き、賭けマージャンをするとは脇が甘すぎる。刑法に触れる賭けマージャンをしていたとなると、捜査の現場にも影響が出ないかと心配だ。検事長の定年延長や検察庁法の改正案についても組織からの説明は何もないままで、士気は下がるばかりだ」と話しています。

このほか別の幹部は、「法解釈の変更による定年延長や検察庁法改正案の審議を通じて国民の疑問や不満が高まる中で起きた問題で、検事長個人の不祥事として幕引きを図るべきではない。替えの効かない人材として、なぜ黒川検事長を特別視し定年延長したのか、任命権者の内閣が説明責任をしっかりと果たさなければ、検察組織がもたない」と話しています。

元検事総長「厳正公正 不偏不党の精神で信頼回復を」

今月15日に検察庁法改正案に反対する意見書を法務省に提出した松尾邦弘元検事総長は「週刊誌の報道には大変驚いた。緊急事態宣言の期間中で、検察庁法の改正案をどうするかという問題のさなか、深夜までマージャンをしていたということならば残念だし、辞任もうなずかざるをえない」と述べました。

そのうえで「現職の検察官には今後、検察の理念でもある厳正公正・不偏不党の精神で信頼回復に努めてほしい」と話していました。

今の国会での成立が見送られた検察庁法改正案については「黒川氏の問題とは別に検察権の行使が政権の意向で左右されない法案になるようにしてもらいたい」と話していました。

街頭では厳しい声 「危機感や自覚ない」「なまぬるい処分」

東京のJR新宿駅前では、黒川検事長が賭けマージャンをしていた問題について厳しい声が多く聞かれました。

医療関係の仕事をしている東京 中野区の女性は「偉い人なのだから問題だとわかっていたはずで、緩さや甘さが出たのではないか。辞めるべきだと思う」と話していました。

また、30代の個人事業主の男性は「国の重要な立場にいるのに危機感や自覚がない。法をつかさどるリーダーでありながら違法な行為をして、仕事と自身の在り方が一貫していない」と話していました。

さらに、会社員の24歳の男性は「責任ある行動をしてほしかった。こういう立場の人は問題があるとすぐに辞任しようとするが、辞めて終わりではないと思う」話していました。

このほか、今回訓告の処分となったことについて75歳の会社員の男性は「なまぬるい処分だ。法の番人なのだから、もっと厳しくあってしかるべきだ」と話していました。