コロナ不安 ギャンブルで解消も 依存症浮き彫り 支援団体調査

コロナ不安 ギャンブルで解消も 依存症浮き彫り 支援団体調査
新型コロナウイルスの影響で多くの人が不安を抱える中、ギャンブル依存症の人は、不安をギャンブルで取り去ろうとする傾向が強いことが支援団体の調査で分かりました。休業要請に応じない一部のパチンコ店に客が集まったことについて、団体は、ふだん見えにくい依存症の問題が浮かび上がったと指摘しています。
公益社団法人の「ギャンブル依存症問題を考える会」は今月6日と7日の2日間、ギャンブル依存症の治療を受けている人を対象に、新型コロナウイルスの影響についてアンケート調査を行い、216人から回答を得ました。

治療を受ける前に今の状況になっていたら、どうしていたかという質問では、およそ7割が「ギャンブルで不安を取り去ろうとしていた」と答えました。

また、パチンコなどの依存症だった人に、地域の店が休業した場合、治療前ならどうしていたか尋ねたところ、6割が「県をまたいででも営業している店を探して出かけた」と回答しました。

自由記述では「収入面で不安になり、不安からまたギャンブルを始めてしまいそう」といった声も上がっています。

東京や大阪などでは、休業要請に応じず、いわゆる「3密」の状態で営業を続けた一部のパチンコ店に客が集まり非難の声も上がりましたが、調査を行った団体は、ふだん見えにくい依存症の問題が浮かび上がったと指摘しています。

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は、「こうした中でもギャンブルに行く人は依存症の可能性がある。だめだと分かっていても不安を払拭(ふっしょく)するために出かけてしまう人もいるということを理解してほしい」と話しています。

依存症治療中の人は…

こうした中でもギャンブルをやめられない人たちの心理について、現在は依存症の治療を受けている男性2人が証言しました。

このうち30代の男性は、みずからもかつてパチスロに熱中して借金を重ね、勤務先の会社の金にまで手を出すようになり、治療を受け始めました。

男性は「勝っているときの興奮が強く、頭ではだめだと思っていても止められない」と、ギャンブル依存症の人の心理を説明していました。

また、同じく長年にわたってギャンブルにのめり込み、依存症の治療を受けている50代の男性は「今後どうなるか分からないという不安が広がる中で、パチンコに行く人たちの気持ちは分からなくはない」と言います。

男性は「昔の自分が今の状況に置かれたら絶対に同じ行動を取っていた。どんな状況だろうと『自分は感染しない』とか、『自分は大丈夫』などギャンブルに行くための理由を考えてしまうはずだ」と話していました。

違法な賭博店にまで通ってしまう人たちも

ギャンブルにのめり込む人たちの中には、違法な賭博店にまで通ってしまう人たちもいます。

警察によりますと、緊急事態宣言の下で、こうした違法な賭博店は盛況となっているとみられていますが、多くが「3密」の状態で、感染リスクが高いということです。

このうち、東京では今月8日、千代田区のビルで違法なポーカー賭博店が警視庁に摘発されました。

警視庁によりますと、捜査員が店に踏み込んだ際、狭い店内に客や従業員などおよそ20人がひしめき合い、換気もされていない状態だったということです。

経営者は「緊急事態宣言が出された先月以降、客が後を絶たず、営業日を増やしていた」と話していて、客も調べに対して「ポーカーが好きで我慢できなかった」などと話しているということです。

また、名古屋市では繁華街のビルの一室でトランプを使ったバカラ賭博を開いていたとされる店が16日夜、摘発されました。

店内に窓は無く、入り口の扉も3重になるなど「3密」の状態で、捜査員は摘発の際、ゴーグルや手袋を着用して現場に踏み込んだということです。

客の1人は「仕事が休業してすることが無く、週に2~3回来ていた」と話しているということです。

“密集”おそれ回復プログラムへの参加 困難に

ギャンブル依存症から抜け出すため現在、回復プログラムに参加している人たちにも新型コロナウイルスによる影響が懸念されています。

依存症の患者は同じ境遇の人や支援者と定期的に話す場を持つことで、自身の病気を見つめ回復につなげていますが、大勢が集まることができなくなっているためです。

支援団体によりますと、孤独な状況で不安やストレスを抱えると、再びギャンブルにのめり込んでいくおそれが高まるということです。

また、自宅にいる時間が長くなることで、インターネットを使ったギャンブルなどに熱中しやすくなるおそれもあるということです。

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は、「新型コロナウイルスの感染が収束したあとに、依存症の人が増えているということもありえる」と懸念しています。

専門家「依存症を理解し治療につなげることが大切」

依存症治療が専門の昭和大学附属烏山病院の常岡俊昭医師は、東京などで休業要請に応じない一部のパチンコ店に集まった客の中には、ギャンブル依存症の人が少なくないと指摘します。

常岡医師は「新型コロナウイルスをめぐる将来への不安を抱えながら自粛の影響で誰にも相談できない状況が続き、発散方法がパチンコだけになってしまう人もいる。こうした人を単に批判するのではなく、依存症をきちんと理解し、手を差し伸べて治療につなげていくことが大切だ」と話しています。