新型コロナ問題 LGBTの人たちが抱える不安や悩み 広がる

新型コロナ問題 LGBTの人たちが抱える不安や悩み 広がる
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新型コロナウイルスの感染拡大によって「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティーの人たちが感じている不安や悩みを共有し、解決の糸口を考えようという会議が、17日午後、オンラインで開かれました。
この会議には、性的マイノリティーの支援団体のメンバーと団体を支援する全国の医療関係者が参加し、その様子がインターネットでライブ配信されました。

会議ではまず、団体が先月性的マイノリティーの人たちやその関係者に感染拡大でどのような不安や悩みがあるか尋ねたアンケート調査の結果が報告されました。

この中で、およそ4割が、パートナーがPCR検査を受けた時や入院することになった時に家族と同様に扱われないおそれがあると回答したことが伝えられると、参加した医療関係者が感染者本人が意思を示せば同性のパートナーも家族と同様に扱われる場合があることや、意識を失った場合でも意思確認ができるよう、カードなどを準備しておく必要があることなどをアドバイスしていました。

また、次に多かった、感染をきっかけにこれまで公表していなかった性的指向やパートナーの存在が家族や職場などに知られるのではないかという不安については、参加した弁護士が「現状では感染者の調査や情報の公表における、人権やプライバシーの保護が十分ではない」と指摘し、性的マイノリティーへの差別や偏見を助長しないような配慮を国に求めていく考えを示しました。

会議を企画した「マリッジフォーオールジャパン」の寺原真希子代表理事は、「緊急時にはマイノリティーや弱者は、よりつらい立場に追いやられてしまう。人権の問題は後回しにできないものなので、放置されることがないよう声をあげていきたい」と話していました。

感染経路など調査情報 発表で個人特定のおそれも

新型コロナウイルスの感染者が確認されると、保健所は、感染経路や濃厚接触者の有無などを把握するため、発症前後の行動歴や接触した人の名前、それに接触した場所や当時の状況などを調査します。

こうした情報は、感染症法の規定で、個人情報の保護に留意したうえで、感染予防や治療に必要なものについては、新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならないと定められていて、自治体の判断で記者会見などで発表されています。

しかし、それによって感染者を特定しようという動きや、インターネット上での中傷が広がったケースもあります。

また、今月5日には、新型コロナウイルスの感染状況などを載せている愛知県のホームページに、県内の感染者延べ495人全員の入院先などの個人情報が誤って掲載されるトラブルも発生しました。

このケースでは、感染者の氏名や入院先の病院の情報のほか、職場など感染者どうしの関係性を示す情報も流出したことが明らかになっていて、感染者や関係者などからの苦情が相次ぎました。

“秘密” 職場や家族に伝わるのではと不安も

「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティーの人たちは、感染をきっかけにこれまで明らかにしていなかった自身の性的指向や、パートナーの存在などが周囲に知られてしまうのではないかと危機感を強めています。

福岡県の三浦暢久さんは、同性愛者であることを公表していますが、一緒に生活しているパートナーは自分の性的指向を家族や職場に明かしていません。

三浦さんは「感染すると、今まで隠していたことを全部伝えなければならないという状況が起きるので、大きなストレスがかかるし、その情報が職場や家族などに伝わってしまうのではないか、そのあとに職場における偏見や差別が起きるのではないかという不安が出てくると思う」と話しました。

そのうえで、「愛知県のケースのようなことを聞くと、特に不安に思います。決してひと事ではなく、感染経路をどのように伝えないといけないのかや、それが誰に伝わっていくのかがわからず、情報が漏れてしまった時にそれがネット上に出てしまうおそれがある中では、とても本当のことは言えないというのが正直なところです。でも、カミングアウトせず、自分のことを伝えないとなると、保身はできるけど、今度は私自身が濃厚接触者のリストから外れてしまうことになるのでパートナーを守れない。どちらにしても苦しい選択をしなければならない」と話しました。

そして、「現実問題として、LGBTに対する差別や偏見がたくさん残っているので、新型コロナウイルスの感染経路を把握する際にプライバシーを守ることや情報が絶対に外に漏れないということを明文化して担保してもらうことが、とても重要になってくると思います」と話しました。