デイサービス事業所 90%余 新型コロナが経営悪化

デイサービス事業所 90%余 新型コロナが経営悪化
介護事業者の全国団体が1800余りの介護サービス事業所に、新型コロナウイルスによる経営への影響を尋ねるアンケート調査を行ったところ、デイサービス事業所の90%余りが「影響を受けている」と回答しました。デイサービス事業所の中には、コロナショックによる経営悪化で撤退するところも出始めていて、専門家は「必要なサービスを受けられない事態にならないよう経営支援が必要だ」と指摘しています。
「全国介護事業者連盟」は今月12日までの1週間、新型コロナウイルスによる経営への影響を尋ねるアンケート調査を行い、727のデイサービス事業所を含む全国の1862の介護サービス事業所から回答を得ました。

この中で、
▽全体の55.7%が「影響を受けている」と回答したほか、
▽37.7%が「影響を受ける可能性がある」と回答し、
▽「影響はない」は6.6%にとどまりました。

「影響を受けている」と回答した割合を事業所の種類別に見ると、
▽デイサービスが91%、
▽ショートステイが76%だったのに対し、
▽訪問介護が47%、
▽有料老人ホームが37%、
▽特別養護老人ホームが17%、
▽グループホームが13%で、
デイサービスやショートステイを中心に広がった利用自粛や自主休業の動きの影響がうかがえます。

経営課題を尋ねる自由記述は、利用者の減少に伴う売り上げ減少や衛生用品などの価格高騰による経費の増加などを訴えるものが多く、デイサービス事業所からは「自己資金の枯渇」とか、「借り入れで赤字を補ったためさらに悪化する見込み」など資金繰りへの不安の声も寄せられました。

デイサービス事業所の中には、コロナショックによる経営悪化で撤退するところも出始めています。

事業撤退の業者も 志村けんさんの死で利用者減が加速

経営悪化が深刻化しているデイサービス事業者の中には、介護事業から撤退するところも出始めています。

東京 西東京市でリハビリ型のデイサービス事業所を運営していた会社は、介護事業からの撤退を決め、先月、市役所などに「廃止届」を提出しました。

およそ150人の利用者が登録していたこの事業所では、感染防止のため、ことし2月から利用自粛の動きが広がり始めました。

初めは3割程度の減少でしたが、感染拡大が進み、3月末にコメディアンの志村けんさんが亡くなったことが報道されると、利用者の減少が一気に加速しました。

5年前の介護報酬改定でデイサービスの報酬が引き下げられた影響で、利益が出にくい状態が続いていて、このまま運営を続ければ、ひとつきで120万円から150万円の赤字が予想されたため、運営会社の社長は6年間続けてきた介護事業からの撤退を決断しました。

4月になると利用者はさらに減って、かつての半分程度になり、1日の利用者がスタッフの数より少ない日もありました。

登録していた利用者については、これまでと同等のサービスを受けられるよう近隣の事業所に引き継ぎを行ったということです。

運営会社の社長は「デイサービスを休む利用者がいても事業所に登録している状況は変わらないので、安易に新しい利用者を受け入れることもできず、非常に難しい状況だと感じた。新型コロナウイルスの影響で大幅に減った売り上げを回復するためには相当の力を注がなければならないと感じたのが、撤退を決めたいちばんの理由だ。よほど大きな介護報酬のプラス改定がないかぎり、これ以上、この事業を続けていくことはできないと思った」と話しました。

専門家「さらに深刻な事態のおそれ 国が経営支援を」

今回の調査結果について、高齢者の介護に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は「感染防止のため休業したり、サービスを縮小したりしたことで、介護報酬が減り始め、経営上の問題がこれから拡大していく傾向にあることを示している。デイサービス事業所にとって厳しい介護報酬改定が行われてきた経緯があるので、ダメージが及んでいると考えられる」と指摘しました。

そして「緊急事態宣言の解除の有無にかかわらず、しばらくは事業を縮小しながら経営を続けていかなければならない。収支のバランスが崩れ赤字になったり経営が成り立たなくなったりする事業所が増える可能性が高く、介護サービス事業は利益が出にくい構造になっているので、事業継続に不安を抱く経営者がさらに増えるだろう」と述べました。

そのうえで「さらに深刻な事態になっていくおそれがあるので、高齢者が必要なサービスを受けられない事態にならないよう、国が経営支援していく必要がある」と話しました。