“巣ごもり騒音”の苦情 都内で多発 外出自粛続き 新型コロナ

“巣ごもり騒音”の苦情 都内で多発 外出自粛続き 新型コロナ
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新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が長くなる中、騒音に関する通報が先月、都内で1万7000件に上り、過去5年間で最も多くなったことが警視庁への取材でわかりました。いわば“巣ごもり騒音”の苦情が多発している状況で、専門家は「今は家にじっとしているので音から逃げられないが、住民間で関係性を作って乗り越えてほしい」としています。
警視庁によりますと、緊急事態宣言が出され外出の自粛が求められた先月の110番通報の件数は、都内は10万7483件で、去年の同じ時期より4万7556件、率にして31%減少しました。

このうち人の声やペットの鳴き声など、騒音に関する苦情の通報は1万7287件と、去年の同じ時期より4773件、38%増加しました。

1か月当たりの騒音に関する通報は過去5年間で最も多くなったということです。

新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が長くなる中で起きる、いわば“巣ごもり騒音”の苦情が多発している状況で、「テレワークの会議の音がうるさい」「休校中の子どもが日中家で遊び回り、騒がしい」といった声が、各地のマンションの管理会社に寄せられているということです。

今月には東京 足立区のアパートで、60歳の男が「物音がうるさい」として隣人の部屋に押しかけ、刃物で切りつけて死亡させる事件も起きています。

騒音問題に詳しい山梨大学の山田伸志名誉教授は「今はテレワークなどで家にじっとしているので音から逃げられない。こうしたストレスがかかった状態は音に対して敏感になる傾向が強い」と指摘します。

そのうえで「マンションでは顔を合わさずバラバラに生活しているが、困難を乗り切るには周囲との助け合いが必要だ。住民間の関係性、コミュニケーションがとれる状況を作って乗り越えてほしい」としています。

「子どもの声うるさかった」刺殺事件も

騒音トラブルが原因とみられる事件は、大型連休中の今月4日に起きました。

東京 足立区入谷のアパートで、60歳の男が隣人の部屋に押しかけ、刃物で切りつけました。隣の部屋には60代の男性が住んでいて、当時息子夫婦と孫娘が連休で遊びに来ていました。

男は、60代男性の頭をハンマーで殴ってけがをさせたうえ、息子の腹部を刃物で刺して死亡させ、殺人未遂の疑いで警視庁に逮捕されました。

調べに対し、男は「子どもの声や物音がうるさかった。我慢の限界だった」と供述しているということです。

どう向き合えばいい? “巣ごもり騒音”

新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が長くなる中で起きる、いわば“巣ごもり騒音”にどう向き合えばいいのか。

今月10日、建物の構造に詳しい一級建築士やマンション管理士などの専門家が開いたウェブ討論会で、各地のマンションの実情が報告されました。

「学校が休校になっていて、遊び場での子どもの声がうるさいという苦情があった」
「マンションの前にある公園で遊んでいた人が卵を投げつけられた」
「朝から晩まで、走り回ったり飛び跳ねたりする音が聞こえ、マンションに生活音に注意するよう求める貼り紙が出された」

ウェブ討論会では、大人も子どもも日中家にいるという、ふだんとは違う状況だということを改めて周知し理解を求めるべきだとか、定期的にイベントを開き、お互いの顔がわかる関係を築くことが重要だといった意見が出されました。

ウェブ討論会を開いた「みんなの管理組合」の須藤桂一さんは、「外出自粛の今は運動不足になりがちなので、家の中でユーチューブを見ながら飛んだり跳ねたりということが多くの家庭であると思います。例えばこの時間帯は静かにするとルールを周知されると、受け止め方も違ってくると思います。マンションは隣の人が今いるのかどうかもわからず、上下の階では顔も知らないことが一般的ですが、顔が見える関係になれば互いに思いやる気持ちになれるのではないでしょうか」と話していました。

専門家「住民間のコミュニケーション取れる状況を」

新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が長くなる中、騒音に関する苦情の通報が相次いでいることについて、騒音問題に詳しい山梨大学の山田伸志名誉教授は次のように話しています。

「ストレスがかかった状態は音に対して敏感になるという現象がある。外に出ることができれば、その間は音から逃れて楽になるが、今はテレワークなどで家にじっとしているので、音から逃げられない。加えて、自粛生活がいつ終わるかなかなか見えないことが状況をさらに厳しくしている」

物音を“うるさい”と感じる背景には、音の大きさのほかに、音を出している側と聞く側の日頃からの関係性による影響が大きいということです。

「マンションなどの集合住宅では、住民の間でコミュニケーションをとる機会が少なく、バラバラに生活している。そのため、騒音トラブルを解決に向かわせるための人間関係がうまく作られていない」

「人間が困難を乗り切っていくときは、周囲との助け合いの中で乗り切っていくことが必要だ。集合住宅の管理組合を中心に趣味の会などを通じて住民間の関係性、コミュニケーションがとれる状況を作って乗り越えてほしい」