新型コロナ感染男性 医療ミス可能性も司法解剖できず

新型コロナ感染男性 医療ミス可能性も司法解剖できず
先月、新型コロナウイルスに感染して兵庫県内の病院に入院し、その後死亡した男性について、医療機器を使う際にミスがあった可能性も否定できないとして警察が司法解剖を検討したところ、少なくとも4つの大学が感染対策が不十分で受け入れが困難などと答え、解剖が行われなかったことが分かりました。警察は「事実関係の解明に影響はない」としていますが、専門家は「今後、同様のケースで捜査に支障が出るおそれもあり、遺体の解剖体制の改善が必要だ」と指摘しています。
関係者によりますと、先月下旬、新型コロナウイルスに感染して兵庫県内の病院に入院していた50代男性が治療で医療機器を使った際に容体が悪化して、その後死亡しました。

届け出を受けた警察は、血管を傷つけるなど医療ミスがあった可能性も否定できないとして、病院関係者から話を聞くとともに、遺体を詳しく調べる必要があるとして司法解剖を検討し、兵庫県内など少なくとも4つの大学の法医学教室に問い合わせをしました。

しかし大学側は、解剖の際の感染防止対策が不十分で対応できないなどとして、いずれも「受け入れは困難だ」という回答だったということで、最終的に解剖は行われませんでした。

警察は「治療の際に撮影した写真もあり、事実関係の解明に影響はない」としています。

解剖行う「法医学教室」など 感染対策は不十分

全国のおよそ80の大学の法医学教室などでは、病院や警察から依頼され死因を調べるために年間およそ2万件の解剖を行っていますが、新型コロナウイルスの感染対策は不十分なのが実態です。

法医学関係者によりますと、感染を防ぐための特別な解剖台や空調装置など最新の設備が整っている大学はごく一部で、解剖に使用する医療用のマスクや防護服なども不足しているということです。

近畿地方の大学で解剖を担当している医師は「新型コロナウイルスについては危険性がまだはっきりしない部分もあり、学内などに感染が広がるリスクを考えるとどこの大学でも積極的に受け入れるのは難しいのが現状だ」と話しています。

一方、捜査の現場でも影響を心配する声が出ています。

当初は事件性がわからなくても、解剖をして初めて手がかりが見つかる場合もあり、捜査関係者の1人は「新型コロナウイルスの影響で解剖をためらうことになれば犯罪を見逃すことにもつながりかねない」と話しています。

専門家「解剖できないと 真相解明進まない」

解剖の実態に詳しい福岡大学法医学教室の久保真一教授は「新型コロナウイルスに感染した遺体を解剖する体制が整っている大学は全国的に少なく、地域によっては司法解剖ができないケースも出てくる可能性がある。感染した人が事件や事故に巻き込まれた時に解剖ができないと真相解明が進まず、捜査に支障をきたすおそれがある」と指摘しています。

そのうえで「将来的には完全な感染防止対策をとった解剖施設を整備することが重要だが、いまは大学どうしが連携を図るなどして必要な司法解剖ができる体制作りが必要だ」と話しています。