新型コロナウイルス対策 専門家会議「3区分で対応」

新型コロナウイルス対策 専門家会議「3区分で対応」
新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が14日、新たな提言を出し、多くの地域で感染拡大が始まった3月下旬より前の状況にまで感染者数の減少が確認されたとした一方、今後も当分の間は再流行のリスクがあるとして、感染状況に応じて都道府県を3つの区分に分けて対応する感染対策の考え方を示しました。
専門家会議は14日、新たな提言を出し、緊急事態宣言を解除する際の考え方として「直近1週間の新規感染者数の合計が10万人当たり0.5人未満程度」などの目安を示しました。

また、今後も当分の間は再流行のリスクがあるとして、再び感染が拡大したときに緊急事態宣言の対象地域への再指定も含めて、すぐに対策をとれるよう、感染の状況によって「特定(警戒)都道府県」、「感染拡大注意都道府県」「感染観察都道府県」の3つに分けて、それぞれの対応の考え方を示しています。

感染の状況が最も厳しい「特定警戒都道府県」では、緊急事態宣言に基づく徹底した行動変容の要請によって接触の8割減や都道府県をまたぐ移動の自粛などを求めるとし、指定するときには、先月7日に東京都や大阪府など7つの都府県に緊急事態宣言を出したときの感染の状況や水準を踏まえるとしています。

「感染拡大注意都道府県」は、「特定警戒都道府県」には指定されていなくても、感染対策を一段階強化する地域で、新たな感染者数が「特定警戒都道府県」の基準の半分程度など、あらかじめ判断基準を設けておくべきだとしました。そのうえで、集団感染のリスクのあるイベントや不要不急の外出を自粛するよう知事が協力要請を行うなどとしています。

また、新規の感染者数が一定程度確認されるものの、さらに少ない地域については「感染観察都道府県」として、感染状況を注視しながら、人との間の距離を取ったり、いわゆる「3つの密」を徹底して避けたりするといった対策を継続して行うなどとしています。

さらに、専門家会議は、緊急事態宣言が解除されても、対応は長丁場になることが見込まれるとして、すべての都道府県でこれまでに感染者の集団「クラスター」が発生した場所や、「3つの密」を徹底して避けること、買い物や食事のしかたなどを工夫する「新しい生活様式」を実践し、手洗いなどの基本的な感染対策は続けていく必要があると強調しました。

そのうえで、国と都道府県に対して、業務がひっ迫している保健所の人員を確保するなど体制を強化しておくこと、PCRなどの検査体制を整備すること、患者数の増加に対応できる医療体制を確保することなどを強く求めています。

経済活動と対策の両立を

専門家会議の提言では、緊急事態宣言が解除されたあと、社会や経済の活動と感染拡大を防ぐ対策を両立させる考え方も示されました。

社会や経済の活動レベルを段階的に引き上げる一方で、これまで感染者の集団「クラスター」が発生したような感染リスクの高い場所を徹底して避けるといった、メリハリのある対策が重要だとしています。

そして、宣言が解除されたあとでも、すべての都道府県で人との距離の確保、マスクの着用、こまめな手洗いなど基本的な感染対策を続け、今月4日に示された買い物や食事のしかたなどを工夫する「新しい生活様式」を実践することを求めています。

さらに、不要不急の帰省や旅行を避けるとともに、これまでにクラスターが発生したような感染リスクの高い場や「3つの密」も避ける行動を徹底するよう求めました。

このほか、飲食店や商業施設などの事業者の活動については、改めて業種ごとに感染拡大を防ぐためのガイドラインの作成が必要だとしたうえで、感染を防ぐための対策の例を示しました。

具体的には、美容院や飲食店の従業員は、マスクや目や顔を覆う防護具をつけることで感染リスクを下げることや、飲食店では間仕切りを活用したり、座席の間隔を空けたりするほか、個室などでは利用する人数を定員の半分にすることなどをあげています。

イベントの開催については、感染者が会場にいた場合に爆発的な感染拡大のリスクを高めることにつながりかねないとして、こうしたリスクへの対応ができない場合には、引き続き中止や延期が必要だとしました。

宣言解除の考え方

専門家会議が出した提言では、緊急事態宣言を解除する際の考え方について、感染の状況と医療提供体制、そして検査体制を踏まえて総合的に判断するとしています。

このうち、感染の状況については「直近1週間の新規感染者の報告数がその前の1週間の数を下回っていて減少傾向が確認できること」に加えて、目安として「直近1週間の新規感染者数の合計が、10万人当たり0.5人未満程度となっていること」を示しています。

この目安は、感染拡大が起きる前の感染者の集団「クラスター」を見つけて追跡する調査ができていたころの水準だとしています。

また、医療提供体制については新型コロナウイルスの重症患者の数が減少傾向で、ひっ迫していないこと、患者のための病床や宿泊療養の施設が確保されるなど、患者が急増した場合にも対応できる体制が整えられていることを挙げています。

そして、検査体制の構築については新たな感染者の数を適切に把握するため、PCR検査などが一定数以上できることや陽性の検体の割合が著しく高くないことを考慮する項目としています。

再指定の考え方

一方、提言では、再び緊急事態宣言の対象地域に指定する際にも、感染の状況や医療の状況を考慮することとしました。

感染の状況については、先月7日に東京都や大阪府など7つの都府県に緊急事態宣言が出されたときの感染の状況などを踏まえて、直近1週間の10万人当たりの新たな感染者数の合計、感染者数の合計が2倍になるまでの時間、感染経路がわからない患者の割合を指標として挙げています。ただ、具体的な数値は示していません。

また、医療提供体制の整備状況を踏まえ、重症患者や入院中の患者の数が対応可能な状況にあるかなどにも注意が必要だとしています。

尾身副座長「再指定は厳しい水準で」

再び感染の拡大が起きて緊急事態宣言の対象に指定する場合の基準について、14日夜行われた専門家会議の記者会見で尾身茂副座長は「感染の大きな拡大を防ぐため、先月7日に7つの都府県を対象に緊急事態宣言を出したときよりも、感染状況が低い水準で行う必要があると考えている」と述べ、感染が厳しい状態になる前に、判断する必要があるとする考えを示しました。

ただ、その際の基準となる数値は具体的には示しておらず、尾身副座長は、その理由について、「今後、抗原検査が拡充されて検査の体制が大きく変わり、治療の状況も変わるため、今の状況を前提に具体的な数値を示すことはできない」と説明しました。