介護施設の風評「耐えるしか…」相談窓口を設置 新型コロナ

介護施設の風評「耐えるしか…」相談窓口を設置 新型コロナ
新型コロナウイルスの感染者が出た介護施設やその関係者が、ひぼう中傷や不当な扱いを受けるケースが相次いでいることから、介護施設の全国団体が14日から風評被害の電話相談窓口を設置します。

熊本県の介護施設 「耐えるしかなかった」

熊本県玉名市の介護老人保健施設「樹心台」は、ことし3月、女性職員1人の感染が確認されたため、感染の事実や施設名を公表したうえで、利用者の受け入れやサービス提供を中止しました。

県の調査では濃厚接触者はいないとされ、発熱などの症状を訴える人もいませんでしたが、公表後、ほかの職員や利用者、さらにその家族まで、「本当は感染しているのではないか」と疑われ、幼稚園や保育園、それに会社から自宅待機を求められたり、別の介護サービスの利用を断られたりするケースが相次いだということです。
そこでこの施設では、職員と利用者、それに委託業者などの関係者、合わせておよそ180人全員のPCR検査を行い陰性を確認しましたが、その後も医療機関で受診を断られたり、受付に「感染者が出た介護施設の関係者は申し出てください」という紙が貼られていて、嫌な思いをしたりするなど、およそ1か月にわたって地域内での不当な扱いや風評被害に悩まされたということです。

中尾清志事務長は「風評被害が出ることは想定していましたが、考えていた以上の被害でした。風評被害をなくして早く介護サービスの利用を再開してもらえるように、検査を行って全員の陰性を確認しましたが、それでも被害はなくならず、耐えるしかありませんでした。不安が広がる中でやむをえないのかもしれませんが、そうしたことは人権侵害であり、差別にもなるということを十分に自覚してもらいたい」と話していました。

全国老人福祉施設協議会 相談が相次いでいる

窓口を設置するのは全国の介護施設などで作る「全国老人福祉施設協議会」です。

協議会によりますと、介護施設の利用者や職員に新型コロナウイルスの感染者が出たあと、ほかにも感染が広がっているのではないかと疑われて、関係者がひぼう中傷を受けたり、地域で不当な扱いを受けたりしたといった相談が相次いでいるということです。

相談窓口では毎週木曜日の午前10時から午後5時まで、感染者が出た場合の情報公開の方法や風評被害への法的対応などについて、危機管理の専門家から無料でアドバイスを受けることができます。
全国老人福祉施設協議会の平石朗会長は「介護に従事する人が風評被害で傷付き、介護の現場から去ってしまうようなことは避けなければいけない。施設の利用者の感染防止やサポートに集中してもらうためにも、ほかのことで悩むようなことがないよう支援していきたい」と話しています。