「先を見通せず不安」重症化リスク高い子どもの親 新型コロナ

「先を見通せず不安」重症化リスク高い子どもの親 新型コロナ
政府は、今月末の期限を待たずに緊急事態宣言を解除する地域の調整を進めています。新型コロナウイルスに感染した場合に重症化のリスクがある子どもを育てる家族の中には、ほとんど外出をしない生活を続けているケースもあり、「先を見通せないのがいちばん不安」などと切実な声が上がっています。
横浜市の吉田桃さん(14)は、生まれつきの心臓の病気で24時間酸素吸入をしているほか、過去に受けた手術の合併症で気管を切開しているため、たんの吸引などのケアも必要となっています。

母の恵子さんは、桃さんが新型コロナウイルスに感染した場合、重症化するおそれがあると心配しています。

このため、3月下旬からは家族全員がほとんど外出をせず、家の中でもマスクを着けて生活するようになりました。

恵子さんによりますと、買い物は、ほぼすべてが宅配で郵便物も数日分をまとめてポストに取りに行っているということです。

また、桃さんはこれまで週2日、特別支援学校のあと、障害児の学童保育とも呼ばれる「放課後等デイサービス」に通っていましたが、これも3月25日を最後に行くことを見合わせています。

学校も休校が続く中、デイサービスの事業所がウェブ上で子どもたちをつないで近況を報告しあう、オンライン支援が唯一の楽しみになっています。

母の恵子さんは「先を見通せないのがいちばん不安。今後、学校が再開しても、感染した場合のリスクを考えると、私はもう少し待つという判断をしたいが、娘は学校が好きなので、行きたいと言うと思う。どちらが正解ということはないし、どういう選択をすればいいのか難しい」と話していました。

1か月半ぶりの再会も窓越しに

桃さんは、新型コロナウイルスの感染が拡大する前、「放課後等デイサービス」の施設に週2回通い、仲間や施設の職員との交流を楽しんでいました。

しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で3月25日を最後に施設を訪れることを見合わせています。

母親の恵子さんは今月9日、施設に所用があったため、車で訪れた際、桃さんを一緒に連れていきました。

このとき、桃さんはおよそ1か月半ぶりに施設の仲間に会うことができましたが、車から降りることはせず、窓越しでのやり取りとなりました。

仲間が桃さんに向けて書いた絵などを見せながら「早く遊ぼうね」とか、「桃ちゃん、大好きだよ」などとことばをかけると、桃さんも「ありがとう」と言いながら笑顔で手を振っていました。

医師「家族の精神的負担は大」

神奈川県立こども医療センター新生児科の星野陸夫医師は、医療的ケアが必要な子どものサポートも行っています。

桃さんのようなケースについて、星野医師は「医療的ケアが必要な子どもは、ふだんから安心して出かけられる場所があまりない。それに加えて今回、新型コロナウイルスという見えない敵からの精神的な圧迫で外に出かけられなくなっている。少しでも安全と思える策を取りながら過ごしているのが現状だと思う」と指摘しました。

また、こうした子どもの医療的ケアは、同居している家族など限られた人で行うことが多いため、「ふだんから例えば、『お母さんが倒れたら終わり』という状況を経験している中で、今回は感染のリスクが加わっている。家族の精神的な負担はかなり大きい。障害の程度や状況もさまざまで、支援のニーズは多様化している。可能な範囲で当事者が状況を発信できるといいのかもしれない」と話していました。