「日本を変えるチャンスに」経済同友会 櫻田代表幹事

「日本を変えるチャンスに」経済同友会 櫻田代表幹事
新型コロナウイルスの感染の広がりで、かつてないほどの打撃を受けている日本経済。感染防止を最優先にせざるをえない事態に、私たちの暮らしや働き方も大きく変わってきています。こうした変化をどうとらえるのか、経営者が果たすべき役割とは何か。1400人を超える企業経営者が加盟する経済同友会のトップ、櫻田謙悟代表幹事に聞きました。(聞き手・経済部記者 林麻里代)

この危機は新たなチャンスに

まず、新型コロナウイルスの感染拡大が与えた日本経済への影響をどう見ているのか聞きました。
櫻田代表幹事
「ひと言で言うと、想定した以上に厳しくなってきたなと思います。日本はご存じのとおり、独立して貿易をしないでできる国ではありませんから、世界が長引くということは日本への影響も長引くという点で、当初想定したよりは厳しいと思っています」
ただ、この危機は日本を変えるための新たなチャンスにもなるとしています。
櫻田代表幹事
「これは危機でありますが、非常にチャンスでもあると思っています。ここにもっともっと経済人は注目して、日本が変わるための大きな契機に、チャンスにしていきたいというように思っています」
「例えば、テレワークのための機械への投資、あるいは人事制度を見直すことによって生産性をあげる。つまりインプット、働いた量ではなくて、出てきた成果・質によって賃金を払う、あるいは行き帰りの通勤時間というものをなくして、もっと生産性をあげる、もっとそれを有意義に使う」
櫻田代表幹事
「日本の仕事のしかたは、具体的な成果を求めて、部下に対して任務を与える、つまりジョブ型の仕事のしかたに全然慣れていない。というよりも戦後70年間やってきていない。本来であれば平成の30年間、世界が変わっているその際に、日本もぜひやるべきであったが、わかってはいたがやってこなかった」
「テレワークをする人は朝から晩まで机に座っていなくて全然いいわけです。仕事の最大の目的は価値を出すことですから。電車に乗って、会社に行って、机に座って、夜遅くまで働いて、で何を作ったのですか?どういったアウトプットをしたのですかと聞かれて、『いや、一生懸命働きました』…こういうのはもう終わりってことですよ」

みずからの意識にも変化

櫻田代表幹事は、今回の危機で、自分自身の意識も大きく変わったといいます。櫻田代表幹事は、損害保険大手「SOMPOホールディングス」の社長。グループの介護事業に携わる人たち一人一人に対する思いを語りました。
櫻田代表幹事
「介護の事業は、感染のリスクに大きくさらされています。それと同時に介護事業は、テレワークはありえない。医療関係者と同じように本当に感謝しているが、働いている人たちは、毎日毎日、自分の子どもさんを預けて、介護施設へ行って、お年寄りの世話をしなきゃいかんわけですよ。自分がもし感染していたら、免疫が弱っているお年寄りに感染させてしまうので、それはすごい緊張感を持って仕事をしている。その緊張感が、今度ストレスになる。そのストレスが免疫力を落とすということで、非常に悪循環を起こしている」
櫻田代表幹事
「保険事業についても、本社の事務をやる人には在宅を2割やれ、というのはかなり強めに言っているんです。むしろ在宅でできないことは何なのかを探してくれと言っている。ところが介護はそうはいかない。24時間365日居続けないといけない。この人たちの気持ちになった時に、同じグループの中で、片方はこういう、片方はこういう、この人たちにどういうメッセージを送ればいいか、どうやってモチベーションを高く保っていただけるか。毎日のように検査をしないといけない人が出て、毎日のようにそこの責任者は陽性でないことを祈るのだが、そういう状態が続いている」
櫻田代表幹事
「今回のパンデミックが起きて、コロナウイルスによる危機が起きて、本当に本当に『新しい普通』の中で、何が起きるか分からないという中で経営をしていかないといけないのだと。つまり『過去の延長線上に未来はない』というレベルではなくて、『創造的破壊』というきれいなことばではなくて、生き延びるだけではなくて、さらに日本を変えていくためには、みずから自分の会社のビジネスモデルや、あるいは企業文化を破壊するくらいの覚悟でやっていかなければいけないんだなと実感しています」

経営者は何をするべきか

今回の危機に直面して、経営者としてどうあるべきか。櫻田代表幹事は、みずからのことばで、今の状況をどうとらえて、事態が収束したあと事業をどう展開するのか、従業員に明確なメッセージを伝えることが重要だとしています。
櫻田代表幹事
「規模の大小問わず、企業のトップとして、自分のことばをこのコロナをどう捉えて、この後どのようにしていくかということをはっきりと語れる、少なくともそういう努力を毎日するということが経営者に求められていると思うんです」
櫻田代表幹事
「経営者の最大の役割は、経営することですから。経営することは、いちばんはお客様、そしてそれを支える社員の皆様に対して希望を与えることだと思うんですね。こんなに危ない、こんなに大変という分析をし、その原因を論理的に説明するのが経営者の仕事ではなくて、こうやってやれば乗り越えていける、それどころか、よりよい未来が待っているはずだと私は信じているということを社員たちに示し、そしてお客様に対しても、一生懸命に訴えていくことが大事だと思っています」

“日本がいなくては困る”という姿を世界に

また、政府に対しては、感染拡大の収束後を見据えた、思い切った対策を期待しているとしています。
櫻田代表幹事
「かつてない規模の財政出動があってもいいと思います。これを契機に日本は変わるのだと、働き方から、国民の意識から、経営者の意識から、みんなが変わるのだと、そのための投資をするのだと、こういう青写真、ビジョンを示して、本当に困っている人に早くキャッシュを届ける」
櫻田代表幹事
「そういった措置を含めて、もう一度何ができるのかということを、財政の制約をあえて外してでも議論する必要がある。足元対策ではなくて、今それをやることで将来大きく返ってくるはずだという確信を、政治も行政も企業も国民もみんなが持つことが大事だという、そういうリーダーシップをぜひ期待したい」
「今回はラストチャンスなんだというつもりで、新しい日本を作るんだと、世界から見て、日本がいなくては困るんだという姿を作るぞという意味で、意気込みをもってぜひ音頭を取っていただきたいと思います」
経済部記者
林麻里代
平成7年入局
流通業界や情報通信などの取材を経て
現在、経済団体の取材などを担当