新型コロナ 制限緩和に向けた世界各国の基準は

新型コロナ 制限緩和に向けた世界各国の基準は
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、世界各国の中には、これまで続けてきた制限措置を緩和する動きが出ています。この中には、入院患者数やベッドの空き状況など、詳細な基準を示したり、いわゆる“第2波”に備えて緩和措置を停止する基準をあらかじめ設けたりするところもあります。

アメリカでは

全米で最も被害が深刻なニューヨーク州のクオモ知事は、外出や経済活動の制限を緩和する際の「7つの基準」を示しました。

基準には、
▽新たな入院患者が、2週間連続で減少または1日当たり15人未満、
▽亡くなる人の数が、2週間連続で減少または1日当たり5人未満、
▽病院や集中治療室のベッドの空きが30%以上、
▽濃厚接触者を追跡する調査員を住民10万人当たり30人確保できている、
などがあり、州内の10の地域ごとに、基準を満たしたところから段階的に緩和する方針です。

一方で、対照的に人口密度が低く、感染者数も少ない南部オクラホマ州では、具体的な数値目標は示さず、感染の拡大が十分抑え込まれている状況が2週間続くことなどを条件に、段階的に制限を緩和するとしています。

ニューヨーク州 「7つの基準」

ニューヨーク州では、今月15日に外出や経済活動の制限の期限を迎えます。

それ以降は、1人の感染者が直接感染させる人数を示すいわゆる「実効再生産数」が1.1以下であることを前提に「7つの基準」を満たした地域から段階的に経済活動を再開させる計画です。

7つの基準は入院患者や死者数、病院の受け入れ態勢や検査態勢などの分野にわたっていて、細かく数値目標が設けられているのが特徴です。

具体的には入院患者と死者数をめぐっては3日間の平均の値として新たな入院患者の数が2週間減少している、または1日あたり15人未満であること、そして入院患者の中での死者数が、2週間減少している、または1日あたり5人未満であることが求められています。

そして、1日の新規の入院患者の数が10万人あたり2人未満であることも盛り込まれています。

続いて、病院の受け入れ態勢では、再び感染者が急増した場合に備えるため、地域内の病院や集中治療室の病床の空きがそれぞれ30%以上確保されていることが必要となります。

検査態勢をめぐっては市民1000人あたり月30件の検査を行う態勢が整っていることとしています。

さらに感染者が誰と接触したかなどを調査するため、住民10万人あたり30人の調査員の確保が求められ、濃厚接触者の追跡調査の態勢が整っていることも条件とされています。

州政府は州内を10の地域に分けたうえでこれらの7つの基準を満たした地域から業種別に段階的に経済活動の再開を認めることにしています。

再開が認められる業種も4段階に分けられ、第1段階の対象は建設業や製造業、第2段階は小売業、金融、保険、不動産業、第3段階が飲食店や宿泊業、最後の第4段階が学校などの教育機関や芸術、娯楽などとなっています。

ニューヨーク州では地域ごとのそれぞれの基準の達成状況をホームページで公表しています。

一方、再び感染が拡大するのを防ぐための予防措置として「実効再生産数」が1.1を超えた場合には外出制限の緩和や経済活動の再開を直ちに停止させるということです。

ニューヨーク州のクオモ知事は、先月下旬、検査態勢を強化するため、薬剤師にもウイルス検査の実施を許可しました。

これにより、州内5000か所の薬局で検査を受けることができるようになり、州政府は1日に可能な検査数がPCR検査と抗体検査などを合わせておよそ2万件から4万件へと倍増したとしています。

感染少ないオクラホマ州は

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズの集計で、今月10日の時点で人口100万人あたりの感染者数が全米で8番目に少ない南部・オクラホマ州では、4月から段階的に経済活動を再開させています。

再開はあらかじめ日程の見通しを設定したうえで3つの段階に分けて行われます。

第1段階は4月24日から始まり、まずはじめに予約制に限って理容店や美容室、ネイルサロンなどが、そして州立公園も再開しました。

また、感染者数が抑えられていると判断されたことから、5月1日からはレストランや映画館などの娯楽施設、スポーツジムが再開し、それに宗教施設での礼拝なども許可されています。

次の段階に進む条件は、入院患者数や感染の状況が十分抑え込まれていること、すべての患者が適切な場所で処置を受けていること、感染者が急増した場合にも対応できるだけの十分な防護服や医療設備が整っていることなどの条件を満たした場合とされていますが、具体的な数値目標は示されていません。

こうした条件下で感染者数が十分抑え込まれている状況が14日間続けば、早ければ5月15日から第2段階に進むとしています。

第2段階では、スポーツ関連のイベントや店内での人と人との距離を保つことを条件にバーも再開できるほか、葬式や結婚式といった冠婚葬祭のセレモニーも許可されます。

州はこの状態で感染者数の増加ペースが抑え込めていれば、さらに14日間以上続いた場合に第3段階に進むとしていますが、どういった施設や店舗の営業が許可されるかなどの詳細は第2段階に入ってから公表するとしています。

オクラホマ州では人口あたりの感染者数が比較的少ないため経済活動の早期再開を求める抗議活動も行われていて、地元紙によりますと市民からは「オクラホマ州はニューヨーク州とは違う。同じような厳しい措置は必要ない」といった不満の声があがっていました。

また、検査態勢の強化も進んでいて、オクラホマ州では、大学や研究機関と連携し、スーパーの駐車場などに設置されたドライブスルー形式の検査を導入し、1日に平均およそ3000件の検査を行っているというデータもあります。

フランスでは

1週間に最大で30万件のPCR検査を行っているフランスでは、
▽救急外来の患者のうち、新型コロナウイルスの感染が疑われる人の割合が10%以上か、
▽集中治療室のベッドの80%以上が新型コロナウイルスの感染者か、
▽そして検査態勢が整っているか、
の3つを基準に、国内の18の地域を「緑」と「赤」に色分けし、「緑」の地域はより対象を広げて制限を緩和しています。

「赤」のパリを中心とした地域では、当局が公共交通機関の乗車率を15%に抑えることを目指し、正当な理由がなければ通勤時間帯の利用を原則、禁止していて、混雑すれば駅を閉鎖するなどの措置を取っています。

ドイツでは

ドイツでは、6日、メルケル首相が、
▽1日当たりの新たな感染者数が数日にわたって1000人を下回ったことや、
▽1人の感染者が何人に感染を広げているのかを示す「実効再生産数」も、継続的に「1」を下回ったことなどを理由にすべての店舗の営業の再開を認めました。

ただし、1週間に人口10万人当たりで新たな感染者が50人を超えた自治体では、直ちに制限措置を再開する「非常ブレーキ」と呼ばれる対応をとることにしており、再び感染の拡大が続く、いわゆる“第2波”を防ごうとしています。

イギリスでは

イギリスは、
▽医療態勢が十分確保されていること、
▽死者の数が減少し続けること、
▽「実効再生産数」が、流行の収束に向かう目安とされる「1」を下回ることなど、
緩和に向けた5つの基準を設けています。

イギリスは、当初、PCRの検査数が少ないことが指摘されてきたため、政府は、ドライブスルー方式の検査場所を各地に設けるなど、現在は1日におよそ10万件のPCR検査を行い、感染状況の把握に力を入れています。

イスラエルでは

中東のイスラエルは、解除の根拠となる基準は示していませんが、一度緩和したあとに、
▽1日当たりの感染者が100人を超えたり、
▽感染者数が10日間で2倍に増えたりした場合、または
▽重症者が250人を超えた場合には、緩和措置を停止するとしています。

エルサレムの市場は

エルサレムにあるマハネ・ヤフダ市場は今月7日から営業の再開が認められ、客足が戻りつつあります。

市場の入り口には検問所が設けられエルサレム市の担当者が来場者一人一人に新たに義務づけられた検温を行うとともに人数制限を守るために来場者の人数を数えていました。

友人どうし3人で連れだって市場を訪れたという若い女性たちは「ウイルス対策で検温など、さまざまな新しい制限が導入されたが、しかたがないことだと思う」とか「イスラエルは政府がスピーディーに対策を取ったおかげでイタリアなどのように感染状況は深刻にならずに済んだが、これからも油断してはいけないと思う」と話していました。

またパン屋の男性は「1か月以上、店が開けず、大変でしたがようやく仕事が再開できてうれしい。この市場で新たに人数制限が導入されたため以前のようにたくさんの来客は期待できないが、感染防止が大切なことは理解しているので、気持ちは複雑だが、割り切るしか無いと思っている」と話していました。