“みずからが一歩前へ” NTT 澤田純社長

“みずからが一歩前へ” NTT 澤田純社長
新型コロナウイルスで日本の経済界は今、緊急事態ということばでは言い表せないほどの大きな危機に直面している。一方で、オンラインを活用した仕事の進め方や人々の交流は、新しい時代の潮流を生み出し始めている。

経済界は今回の危機をどう乗り越えようとしているのか。そして新しい時代にどう立ち向かうのか、各企業のトップに聞く。

4回目は、NTTの澤田純社長。通信インフラを担う企業として、新型コロナウイルスがもたらした影響を見つめる視点は冷静だ。コロナ収束後も見据えたその考えとは。(聞き手 経済部記者 茂木里美)

通信事業者の影響は

新型コロナウイルスの影響で、WEB会議やオンライン飲み会、オンライン診療などさまざまなものを遠隔で行うことに抵抗がなくなってきた日本社会。

あらゆる遠隔を可能にしているのが通信だ。通信業界はコロナ危機のなかでも勝ち組なのでは、という声が聞こえるが、実際はどうなのか、澤田社長に聞いた。
NTT 澤田純社長
「トラフィック(通信回線やネットで送受信されるデータや信号)の量は増えていますので、収入が増えているのではないかとよく言われるのですが、現実には、定額制で契約いただいているサービスが多いので、収入としてはそう増えていません。逆にドコモの端末等の販売にブレーキがかかっていますので、大きな影響ではないですが、マイナス側にいるという状況です」
今や海外での売り上げが2割を占めるNTT。外出規制が行われている欧州や北米では、新たなビジネスが止まり、その影響に直面している。
澤田社長
「グローバルでは、企業向けのシステムインテグレーションなどを提供していますが、全世界がソーシャルディスタンスの中ですので、新しい案件が出にくい状況になっています。いつまでこのような状況が続くかによりますが、さらに長く続くと大きなインパクトが事業に来ると思っています」
澤田社長は、国内のビジネスでは、企業の投資意欲の低下に危機感を抱いている。
澤田社長
「企業向けの事業では、投資意欲で新しい案件が出にくいというのが1つ。足元で各企業とも厳しくなりますと、コストダウンのために、提供しているサービスの料金を下げてくれという要請が2つ目」

「コンシューマー(消費者)向けですと、買い控え等が出てきますので、その結果、なかなか需要が増えない、その影響で私ども自身もインパクトを受けると、国内のほうが大きく影響を受けてくる可能性が高い。これから消費が冷えると思うんですね。そういう意味では国内のほうが全体の規模が大きいものですから、影響が大きく出てくる可能性が高いと思っています」

仕事はどう変わる

NTTは2月の時点でグループで働く20万人の従業員を対象に、テレワークを導入することを決定。大手企業の中では、早い判断だった。
澤田社長
「オリンピックに向けてテレワークの準備がある程度できていましたので、率先してテレワークを進めたいし、進めるべきだと。中国の事例などを見ても、やはり人との接触をやめないといけないというのは必然として出てくる。感染症の場合、そういう対応が必要となってきますので、積極的に取り組もうとしてきたわけです」
澤田社長
「最初はなかなか動きがゆっくりしていたんですね。従業員のマインドセット上の“職場に出てこなくちゃ”という意識が強かったようですが、現状ではそうではありません。皆さんテレワークをベースにしながら仕事・業務を展開していこうというのがベースになりつつあります」
一方、通信インフラを支えるという点では、出勤が必要な従業員も少なくない。
澤田社長
「(通信は)いちばん大事なインフラですので、支えていかないといけない、そのためにも社員も安全に対応しないといけない」

「工事や保守、コールセンターや、あるいはお客様のところに行くメンバーだとなかなか(在宅勤務の)比率はあがらない。これは業務そのものがそういう設計になっている。そこを直していかないといけないというのが次のチャレンジになります。そういった業務もロボットとかリモートでできるような取り組みに変えていかないといけない」

コロナがもたらす“変革”とは

世の中で在宅勤務やオンライン学習が増えていることで、通信量の増加にもつながっている。NTTは、今のところ通信への影響は出ていないとしているが、感染拡大前と比べて、通信量が4割増えている時間帯もあるという。
遠隔でさまざまな物事を進めることが増えたが、澤田社長は、この流れは今後も加速していくと指摘し、NTTとしても、通信インフラを支えるための技術開発に力を入れたいと強調する。
澤田社長
「オンラインやリモートで業務を行うことが普通になり、いろんなものが便利になったり、早く迅速に正確に行われたり、かつ満員電車に乗って通勤する必要もなかったり、あるいは電子政府もいろいろ進んだり、働き方そのものの構造が変わっていくと思います」
澤田社長
「NTTグループは5Gのサービスを2020年3月から実施していますが、これを加速する。あるいは5Gの向こうにある6Gや新しいシステム、特に低消費電力とか環境に優しいインフラというものを用意していく必要があります。そのインフラは当然リモート、オンラインで使える、保守ができる、それによって少子化にも対応していく、そういうような変革が求められている、そこに対応していくべきだと考えています」

みずからが一歩前に

生活も働き方も経験したことがないほどの変化に直面している日本社会。今を生きるビジネスパーソンは、この変化をどう受け止めていくべきか、聞いてみた。
澤田社長
「“アフターコロナ”は、まだ誰も経験していないんですね、教科書なり教えてもらえる答えがあるわけではありません。ビジネスパーソンだけではなく、一人一人が考えてよりよい社会を作っていけるように、自分が自立して考えることが大事です。足元はいろんなストレスがあって大変だと思いますが、この辛抱が将来のよい社会を作ると思いますので、今は我慢が必要だと思います」
澤田社長
「企業としては、消費が停滞したり、対面での業務がなくなって変質したりと変化が大きいですから、そういう意味では今までやってきたことではなく、新しい世界を構想し、そこにフィットする仕事を行い、付加価値のある商品、サービスを出していく必要があると思います、変えていくということでしょうね」

「受け身ではなく、みずからが一歩前に出て行く必要があると思います」
通信会社として、今、やるべきことを着実に行いながら、コロナ収束後を見据えるべきだと語る澤田社長。オンラインがこれまでよりもずっと身近になった社会が、さらに新たな技術革新を生むことになるのかもしれない。
経済部記者
茂木里美
フリーペーパーの編集者を経てNHKに入局。
さいたま局、盛岡局を経て平成29年から経済部