韓国大統領 就任3年演説 新型コロナ対策を緩めないよう訴え

韓国大統領 就任3年演説 新型コロナ対策を緩めないよう訴え
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は、就任から3年となったのに合わせて演説し、韓国の新型コロナウイルス対策は世界から評価されていると強調しました。一方で、ソウル市内のナイトクラブで集団感染が発生したことについて、「私たちはウイルスの前に戻ったわけではない」と述べ、対策を緩めないよう国民に訴えました。
ムン・ジェイン大統領は10日、就任からちょうど3年となったのに合わせて、大統領府で演説を行いました。

ムン大統領は、韓国の新型コロナウイルス対策は世界から高く評価されていると強調し、「われわれはウイルス対策で世界をリードする国になった。今の危機を新しいチャンスと発展の原動力にしていく」と述べました。

一方で、ソウル市内のナイトクラブで集団感染が発生したことについて触れ、「私たちはウイルスの前に戻ったわけではない。安定してきた段階にあっても、人々が密集する密閉空間であれば、いつどこでも同様の状況は起こりうる」と指摘しました。

そのうえで、「ウイルスが完全に終息するまでには長い時間がかかるだろう。第2波にも備えなければならない」と述べ、対策を緩めないよう呼びかけました。

韓国では、新たに確認される感染者の数が減少傾向になっていましたが、今月に入ってナイトクラブで集団感染が発生するなど、国民の間で「緩み」が出ているという指摘もあり、ムン政権は再び感染が広がることに警戒を強めています。

感染者数減少が国民の「緩み」に

韓国では、2月末には、1日に確認される新たな感染者が900人を超えていましたが、徹底したPCR検査の実施などで封じ込めをはかってきました。

先月下旬から今月初めまでは1日に10人前後となり、新たな感染者の数は減少傾向になりました。

しかし、これに伴って、国民の間で警戒に緩みが出始めたといわれています。

韓国では、平日の1日をはさんで先月30日から今月5日までが連休で、国内屈指のリゾート地、南部のチェジュ島(済州島)には20万人近くが訪れるなど、各地の行楽地が家族連れなどでにぎわい、公共交通機関や道路も混雑しました。

さらに、今月6日からは、感染拡大を防ぐために設けていた制限が緩和されました。

韓国政府がいま、国民に求めているのは、日常生活を送りながら必要な感染対策をとることで、注意事項を細かくまとめた指針も発表しました。

ただ、最近では、街でマスクをしていない人も目立ち始め、夜の繁華街では、密集した状態で食事を楽しむ人が増えてきています。

韓国政府は、「最近の安定した状況にもかかわらず、ウイルスの危機は終わっていないという点を、肝に銘じてほしい」と強調していて、対策を徹底するよう呼びかけています。

感染防止と日常生活の両立を図るための指針を出す

韓国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための制限を今月6日から緩和したのに合わせて、感染防止と日常生活の両立を図っていくための指針を発表しました。

指針は「生活の中の距離確保」というタイトルがつけられていて、「職場」や「交通機関」「買い物」「レジャー」など、31の分野ごとの注意事項が63ページにわたって示されています。

このうち、列車やバスなどの交通機関については、利用者はマスクを着用し、座席が隣り合わない形にするよう呼びかけています。

また、デパートやショッピングモールでは、化粧品のサンプルを顔や唇に直接つけないようにし、速やかに支払いができる電子決済を利用するのが望ましいとしています。

さらに、結婚式場では、握手ではなく目礼であいさつを交わすことや、韓国で一般的なバイキング形式の食事の提供ではなく、引出物を渡すことを推奨しています。

このほか、キャンプ場でテントを設置する際は2メートル以上の距離をとることや、国立公園を訪れる場合、チケット売り場で並ばないように前売券を購入することなど、注意事項がきめ細かく示されています。

北朝鮮との関係「平和共同体へ進むことを希望」

ムン大統領は10日の演説で、北朝鮮との関係について、新型コロナウイルス対策などでの協力を念頭に、「1つの生命共同体となり、平和共同体へと進むことを希望している」と述べました。

さらにムン大統領は、演説のあとの質疑応答で、南北や米朝の間の意思疎通は円滑ではないものの続いており、互いの信頼と対話の意思は確認されているという認識を示しました。

そのうえで、「米朝対話を眺めているのではなく、南北間でできることを探すべきだ」と述べ、南北間の鉄道の連結や、韓国人の北朝鮮観光などの実現に向けて、主体的に取り組む姿勢を強調しました。

南北の間ではおととし3回にわたって首脳会談が行われ、緊張緩和や経済協力などで合意しましたが、去年、非核化をめぐるアメリカと北朝鮮の協議が行き詰まって以降は、南北関係も停滞したままです。

ムン大統領としては、残る2年の任期中に、政権の最優先課題として掲げてきた南北関係の改善を軌道に乗せたい考えですが、非核化に応じない北朝鮮に対する国際的な制裁が続く中で、先行きは不透明です。