PCR検査相談目安見直し「37度5分以上」表記なくす 厚労省

PCR検査相談目安見直し「37度5分以上」表記なくす 厚労省
新型コロナウイルスのPCR検査について厚生労働省は8日夜、新たな相談の目安を公表し、「37度5分以上の発熱が4日以上」とした表記を取りやめました。具体的な体温は示さず、息苦しさや高熱などの症状があればすぐに相談するよう呼びかけています。
厚生労働省はことし2月、感染が疑われる人が相談や受診をする目安として「37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」などと具体的な体温を示していましたが、専門家からは必要な条件のようにとらえられ、受診の抑制につながりかねないなどといった声が上がっていました。

このため、厚生労働省はこうした表現を見直した新たな目安を8日夜公表しました。

新たな目安では「37度5分以上」という表記を取りやめ、「息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状がある場合」や「高齢者など重症化しやすい人で発熱やせきなど比較的軽いかぜの症状がある場合」はすぐに相談するよう呼びかけています。

また、重症化しやすい人でなくても「発熱やせきなど比較的軽いかぜの症状が続く場合」には相談してほしいとしていて、「症状が4日以上続く場合」は必ず相談するよう求めています。

厚生労働省は感染の疑いがある場合には、まずは保健所の「帰国者・接触者相談センター」などに相談してほしいとしています。

新たな目安での変更点

今回、公表された新たな相談の目安とこれまでの目安では、「37度5分以上」という具体的な体温が例示されているかどうかに大きな違いがあります。

これまでの目安では「かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」や「強いだるさや息苦しさがある場合」に相談をしてほしいと呼びかけていました。

新たな目安では「37度5分以上」という表記を取りやめ、「息苦しさや強いだるさ、高熱など強い症状のいずれかがある場合」はすぐに相談するよう呼びかけています。

また、重症化しやすい高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある人については、「かぜの症状や37度5分以上の発熱が2日程度続く場合」との表現を変え、「発熱やせきなどの比較的軽いかぜの症状がある場合」としています。

さらに、重症化しやすい人でなくても「かぜの症状が続く場合」には相談するよう求めています。

厚生労働省は「『高熱』かどうかは自分の平熱を踏まえたうえで判断してほしい。症状には個人差があり、強い症状だと思う場合はすぐに相談してほしい」としています。

一方、症状の1つとして報告が相次いでいる「味覚や嗅覚の異常」については専門家の間で意見が分かれたため記載は見送られましたが、厚生労働省は異常を感じた場合には相談するよう呼びかけています。

医師「早く見直すべきだった」

「37度5分以上の発熱が4日以上」などとしてきた、新型コロナウイルスのPCR検査に向けた相談の目安が見直されることについて、患者の対応に当たってきた東京 国立市にある「新田クリニック」の新田國夫医師は、「来院する人の中には、37度5分より低い微熱の状態が1週間以上続く人がたくさんいる。これまでの基準は検査の障壁になっていた側面もあるので、もっと早く撤廃すべきだったと思う」と述べました。

そのうえで「PCR検査を受けて陰性か陽性かきちんと判断が示されることは患者さんの不安を取り除くという意味もある。地域のかかりつけ医はこの3か月間、それぞれが考えながら診察に当たり、経験を蓄積してきたのでその力量を信じてほしい」と話しました。

また、千葉市稲毛区にある「稲毛サティクリニック」の河内文雄医師は、「根拠のないむだな4日だと思っていたので基準がなくなることを歓迎している。新型コロナウイルス感染症は、急速に死に至る激烈なケースもあれば、全く症状がないケースもあって非常に幅が広い。一律の基準に頼るのではなく臨床の現場でかかりつけ医の判断で臨機応変に対応するのが本来の在り方だと思う」と話しました。

保健所からは懸念も

今回の見直しについて、住民から相談を受けている保健所からは、その必要性を認める一方、懸念する声もあります。

東京 北区保健所の前田秀雄所長は「急激に症状が悪化してしまう患者がいると分かってきたので、相談の間口を広げて早期の検査や診断につなげることは必要だと思います。一方で、PCR検査センターが設置されている自治体では、検査依頼が多くても耐えられるかもしれないが、準備が整っていない自治体では十分対応できない懸念があります。受け入れ先の体制整備も十分でない中で、相談の基準が緩和されると、かえって混乱が生じるので、検査の体制と患者の受け皿を拡充していくことが、より必要になると思います」と指摘しました。

そのうえで、「住民の最初の相談の段階から検査依頼や入院調整、疫学調査、健康観察などすべてを保健所が担っている状態なので、これから相談が増えると、現場はさらに大変になり保健所機能が厳しくなってしまう。今回の見直しは、水を受け流す排水部分を広げないまま、水道の蛇口を全開にしてしまうようなもので混乱が予想されます。関係機関からの支援も始まっているが、より負担軽減や人員体制を考えてほしい」と話しました。

葛飾区「対応したい」

新型コロナウイルスのPCR検査に向けた相談の目安が変更されることについて、葛飾区地域保健課の橋口昌明課長は「これまで不安を抱えながらも検査を受けるのを我慢していた人たちが相談できるようになるのはよいことだと思う。相談の件数は増えると思うが、応援の職員の助けも借りて対応していきたい」と話していました。