世界規模の食糧危機 危険少も気候変動など途上国で食糧不足か

世界規模の食糧危機 危険少も気候変動など途上国で食糧不足か
新型コロナウイルスの感染拡大による食糧供給網への影響について、専門家は世界規模での食糧危機に陥る可能性は低いものの、気候変動の影響を受けるアフリカなどの途上国で、食糧不足が深刻化するおそれがあると指摘し、国際社会の対応を呼びかけています。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、自国内の供給を安定させるためなどとして、ロシアやウクライナが小麦の輸出量を制限するなど食糧の輸出規制に乗り出す国が出ていて、農林水産省によりますと今月1日の時点で、15か国が小麦やコメ、野菜などの輸出を制限しているということです。

また、各国で移動制限や国境封鎖が続き、食糧の輸送や農場で働く労働者の確保も難しくなっていて、国連は先月、食糧の安定供給が脅かされていると懸念を表明しています。

これについて食糧問題に詳しいイギリスの王立国際問題研究所のティム・ベントン調査部長は、現状では輸出制限は限定的で、小麦などの主要な作物は十分な収穫が見込まれ、世界規模での価格高騰や急激な食糧不足の危険は少ないと指摘しました。

ただ「アフリカなどでは、ことしは気候変動の影響やバッタの大量発生によって農作物に大きな被害が出るなど、すでに生産の状況はよくない。外出や移動の制限で耕作ができない農家も多く、食糧不安は現実になりうる」と指摘し、国際社会が協調して供給体制を守ることが重要だと訴えました。

一方、日本への影響について、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、日本が穀物の輸入を頼るアメリカやカナダが輸出規制を行う可能性は低く、今のところ影響はないとしたうえで「食糧問題は不安をあおりパニックを起こしやすい特質を持っている。情報を適切に消費者に届けることが重要だ」と指摘しています。