PCR検査相談の新しい目安 今夜にも公表

PCR検査相談の新しい目安 今夜にも公表
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「37度5分以上の発熱が4日以上」などとしてきた新型コロナウイルスのPCR検査に向けた相談の目安について、厚生労働省は8日にも見直すことにしています。新たな目安では具体的な体温は示さず、息苦しさや高熱などの症状があればすぐに相談するよう呼びかける方針です。
新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合はまず、保健所に設けられている「帰国者・接触者相談センター」などに相談し、医師が必要と判断すればPCR検査を受けることになります。

厚生労働省はことし2月、「37度5分以上の発熱が4日以上」などと具体的な体温を盛り込んだ相談の目安を示しましたが、専門家からはこれが必要な条件のようにとらえられ、受診の抑制につながりかねないなどといった声が上がっていました。

このため、厚生労働省は相談の目安を見直すこととし、新たな案では「37度5分」という具体的な体温は示さず、「息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状がある場合はすぐに相談してほしい」としています。

厚生労働省ではこの案をもとに専門家から意見を聴いていて今夜にも新たな目安を公表することにしています。

加藤厚労相「早ければきょう中に」

加藤厚生労働大臣は記者会見で、「目安を示した2月の段階では、かぜやインフルエンザのまん延期で、こうした病気の症状との違いを念頭におく必要があったが、今はその必要がなくなってきた。先日の専門家会議で行われた見直し案の議論を踏まえて、医療関係者などと調整を進めていて、早ければきょう中にも公表したい」と述べました。

また、記者団がこれまでの目安に問題があったのではないかと指摘したのに対し、「目安は、『このような症状の場合は必ず相談に行っていただきたい』という意味で出したが、相談を受ける側の1つの基準として使われてきた。厚生労働省として、誤解を解くために、弾力的な対応を求める通知を何度も出してきた」と反論しました。

新たな目安の案 変更点は

これまでの相談の目安と現在、検討されている新たな目安の案では「37度5分以上」という具体的な体温が例示されているかどうかに大きな違いがあります。

これまでの目安では「かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」、それに「強いだるさや息苦しさがある場合」には相談をしてほしいと呼びかけていました。

新たな目安の案では「37度5分以上」という表記をやめ、「息苦しさや強いだるさ、高熱などの症状がある場合」や「発熱やせきなど比較的軽いかぜの症状が4日以上続く場合」とし、「症状には個人差があるため、強い症状だと思う場合」にはすぐに相談するよう呼びかけています。

また、感染すると重症化しやすい高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある人については、これまでは「かぜの症状や37度5分以上の発熱が2日程度続く場合」とされていましたが、新たな目安の案では「発熱やせきなどの比較的軽いかぜの症状がある場合」はすぐに相談するよう呼びかけています。

PCR検査の現状は

厚生労働省は国内のPCR検査の能力は1日当たり1万7000件余りあるとしていますが、実際に検査が行われた件数は、最大で9000件余りにとどまっています。

政府の専門家会議は「帰国者・接触者相談センターの機能を担う保健所の業務過多」や「検査の際に使うマスクや防護服などの圧倒的な不足」を検査件数が増加しない理由にあげていて、保健所の体制強化や、感染防護具を確実に調達するよう政府に求めています。

街の人たちは…

PCR検査に向けた相談の目安が見直されることについて、東京都内ではさまざまな意見や今後の検査態勢への不安などが聞かれました。

このうち新宿区に住む80代の女性は「現在の目安では37度5分の熱がない人は相談を遠慮して、我慢していたこともあると思うので目安が変わることはいいことだと思います」と話していました。

一方、板橋区の70代の男性は「目安がころころと変わってしまうと何を信じればいいのか分からなくなって不安です。37度5分という目安に従い、毎朝体温を測っていましたがいったい何だったのかという思いもあります。なぜ新しい目安になるのか明確な理由とともに示してほしい」と話していました。

また、渋谷区に住む49歳の男性は「見直しはいいですが、検査態勢が整っていなければ相談しにくい状態が続くのではないでしょうか。見直し後に本当に対応してもらえるのか、不安です」と話していました。

専門家「見直し評価も 見極め必要に」

PCR検査に向けた相談の目安の見直しについて、ウイルスの研究が専門で実際に検査を行ってきた国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長は「発熱やせきなどの症状がなくても、重症化する可能性のある肺炎の患者を見逃さずに治療するという意味では、見直しは評価できる」と話しています。

その一方で検査件数が増えると予想されることから、西村センター長は「検査を行う現場がひっ迫して、重症化のリスクがある患者に対するものなど、本当に必要な検査ができなくなるおそれがある。特に東京など感染者数が多い都市部などでは需要がさらに高まる可能性があり、これまで以上に検査の必要性を見極めないといけなくなる」と指摘しています。

また、求められる検査の在り方について「大学や研究機関でもPCR検査を行って拡充すべきだという指摘もあるが、感染の有無を確かめるPCR検査は、研究用とは異なる高い精度やスピードが求められるため簡単には拡充できない。さらに、世界的に検査用の試薬や資材が不足している。重要なのは限りある資源を活用して賢く検査を行うことと、次の流行を見越した検査体制の整備と検査の優先順位の考え方などを整理しておくことだ」と指摘しています。