在宅勤務や休校で 家事や育児の負担と分担は 京都大など調査

在宅勤務や休校で 家事や育児の負担と分担は 京都大など調査
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために行われている在宅勤務や学校の休校といった措置が、家庭にどのような変化を与えているか、京都大学などの研究グループが調べました。

その結果、家事や育児の負担が増えたと感じる人が、特に子どものいる女性で多いことが分かり、研究グループは「長期化する中で、家庭内での役割分担が大切になってきている」と指摘しています。
京都大学の落合恵美子教授らの研究グループは、自分や家族が在宅勤務になった男女合わせて300人余りを対象に、先月、インターネットでアンケートを行い、家事や育児の量とその分担、在宅勤務になってよかったことなどについて、自由記述で答えてもらいました。

その結果、家事や育児の量が増えたと答えたのは、男性がおよそ20%だったのに対して、女性はおよそ35%でした。

このうち、子どものいる女性では40%余りに上っていて、「夫に加え、子ども2人がずっといるので、食事、間食、片づけと心が休まらない」といった声が寄せられたということです。

一方、在宅勤務になってよかった点については、通勤時間がなくなったことが全体のおよそ30%で最も多くなりましたが、子どもがいる人では家族関係の改善が40%余りと最も多くなっています。

そして男性ではその割合が50%近くに達し、「家族と過ごす時間が増えた」とか「平日一緒にゆっくり夕食をとれる」という回答がありました。

落合教授は「家事の負担が増えたことを負担に思う人たちとそうでない人を分けるのは、家の中での分担だ。男性の中では『妻の家事の状況がわかった』とか『自分も料理をするようになったが、新鮮で楽しい』という回答が見られる。在宅勤務などが長期化する中で、家庭の中での役割分担を見直すことが大切だ」と指摘しています。

負担増でストレス 体調不良訴える女性

在宅勤務や子どもの休校などで家事や育児の負担が増えたことがストレスとなり、体調不良を訴える女性も出ています。

東京 目黒区の内科クリニック「めぐみクリニック目黒」の小野直美院長によりますと、ことし3月以降、原因がはっきりしない頭痛や胸の痛みなどを訴える患者の中に、家事や育児の負担が増えたことをストレスに感じているケースが出てきたといいます。

このうち、ひどい肩こりや頭痛、眠れないことを訴えた女性は、最初は原因がはっきりしませんでしたが、子どもが休校のため、つきっきりで勉強をみたり、在宅勤務となった夫が家で仕事をできるように気を遣ったりしていることが、負担になっていることがわかったということです。

小野さんは「家庭内のことは女性として母としてしっかりやるのが当然という自分の中での思い込みがあって、頑張りすぎている。また、そのことを夫から理解されていないことに原因がある」と指摘しています。

そのうえで、緊急事態宣言が今月31日まで延長されたことで、「あまり大きくなくても、ストレス状態が2か月、3か月と続くと、身体症状になってあらわれることが多い。そういった患者が増えることを懸念している」と話していました。

働き方や家族との関わりを変える機会に

一方、在宅勤務などによって自宅にいる時間が増えたことで、家事や育児にこれまでより参加するようになったという男性がいます。

川崎市の漆間隆介さん(36)は、育児休職中の妻(38)と5歳の長女、それに2歳の長男の4人家族です。

漆間さんは、これまで毎朝6時半には自宅を出て、1時間かけて横浜市内の会社に通勤し、夜は8時ごろに帰宅するため、平日は子どもたちと接する時間がほとんどありませんでした。

しかし、先月10日から在宅勤務が始まったことで、家族全員で食事をとれるようになり、妻が料理を作り、漆間さんが子どもたちに食べさせるという役割分担ができたと言います。

さらに子どもたちと過ごす時間が増え、長男の健太朗くんが漆間さんにもなつくようになったほか、健太朗君が話すことばの意味がわかるようになってきたと言います。

漆間さんは「父親としてより認識してくれるようになった感じがします。何でも困ったときには『壊れたって』と言うことがわかり、これがどう変化していくのか楽しみです」と話していました。

また、これまでは隆介さんが帰宅すると、妻の有子さんは家事と育児に疲れて子どもたちと一緒に寝てしまっていることが多かったといいますが、家事や育児を分担することで、夫婦で会話をする時間もとれるようになったといいます。

有子さんは「朝の支度も大人が1人プラスされたら、だいぶ楽になります。ふだんは夫婦で話す時間がなかったのですが、今は夜ご飯も一緒に食べられるし、一緒に片づけられるので楽になりました」と話していました。

また漆間さんも「困ったことや考えていることを少し意見交換できるようになりました。これからも平日の中で、1日を在宅勤務にするなど働き方を変えることを考えていこうかなと思ってます」と話し、これまでの働き方や家族との関わりを変える機会になっていると話していました。