“ねずみ”が日中住宅街に 飲食店の営業自粛などで行動変化?

“ねずみ”が日中住宅街に 飲食店の営業自粛などで行動変化?
緊急事態宣言が出された先月以降、SNSでは住宅街で日中にねずみを目撃したという映像などが投稿されていて、専門家は飲食店の営業自粛や外出自粛でねずみの行動が変化している可能性があるとしています。
このうちツイッターに投稿された映像には、ねずみが日中に草を食べている様子が写っています。

撮影した40代の男性によりますと、ねずみを目撃したのは先月19日の午前11時ごろ、東京 練馬区の住宅街で、夢中で植え込みの草を食べていて撮影のために近寄っても逃げようとしなかったということです。

男性は「繁華街でねずみを見かけたことはあるが、このあたりで見たことはないので珍しいなと思った。人間が活動しなくなるとネズミはこんなに活発に動くようになるんだなと感じた」と話していました。

ほかにも、先月26日の午後5時ごろに東京 町田市の駅の近くの交差点で撮影したとされるねずみや、今月3日、夕方に群馬県の住宅街の歩道や富山市の用水路にいたというねずみの写真などが投稿されています。

駆除を行う全国の業者でつくる「ねずみ駆除協議会」の委員長、谷川力さんは「飲食店の営業自粛で繁華街で生ゴミが少なくなるなか、餌を求めて住宅街に移動していることが考えられる。ねずみが感染症を媒介するおそれもあるので、対策を考えなければいけない」と話していました。

繁華街でごみをあさる姿 ねずみの行動調査

ねずみの行動の変化について専門家は都心の繁華街で調査を始めています。

今月1日、駆除業者でつくる「ねずみ駆除協議会」と、ねずみの行動を研究をしている東京大学の清川泰志准教授は都内の繁華街を歩き、ねずみの動きを観察しました。

清川准教授などによりますと、ねずみは夜行性で、通常、暗くなってから動きが活発になるということですが、この日の調査では午後5時半からの30分間だけで道に出てきたりごみをあさったりしているねずみ、少なくとも5匹を確認しました。

清川准教授は「ふだん食べないようなものを食べて、ふだん見ないような時間に動いているので、おなかがすいて困っているのではないか。餌を求めてねずみが移動しているのか、あるいは飢えて死んでいるのかを調べていきたい」と話していました。

ねずみ駆除協議会と清川准教授は、今後、全国の駆除業者にアンケートを行うとともに、海外の研究者などと協力してねずみの行動の変化を調べることにしています。

ねずみの行動変化 休業の大型商業施設でも

ねずみの行動の変化は臨時休業している大型商業施設でも見られるということです。

主に首都圏でねずみの駆除を行っている会社によりますと、臨時休業中に駆除を進めるため都内のある大型商業施設の中の42店舗に捕獲装置を8日間置いたところ、合わせて61匹の「クマネズミ」が捕獲されたということです。

臨時休業する前の3月は夜間に1度、6時間ほどの駆除で6匹捕獲したということですが、人が出入りしないことでねずみの警戒心が緩んで行動が活発になっている可能性もあるとこの会社では見ています。

また別の商業施設では、建物の中にはあまり入ってこないとされる「ドブネズミ」も捕獲されているということです。

駆除会社の横山光紀技術本部長は「餌を求めてあらゆるところをはいかいし始めていると思う。一般の家庭に入り込まないように今のうちにできるだけ多く捕獲しておきたい」と話していました。

野生動物の行動変化 海外でも都市部に出没

野生動物の行動の変化は海外でも確認されていて、食べ物などを求めてふだんは近寄ることのない都市部などに出没しています。

このうちイギリスではロンドンから20キロ余り離れた近郊にシカの群れが現れ、住宅地の芝生に座り込んでいたり、中東のイスラエルでは町にイノシシの群れが現れ、ゴミ箱や花壇を荒らしたりしている姿が確認されています。

また南米のチリでは、ことし3月に外出制限が出されて以降、人の姿が少なくなった首都サンティアゴで山間部に生息するピューマが少なくとも4頭姿を現し、そのうち2頭が住宅に入りこんだところを捕獲されました。

捕獲した地元当局は「非常に珍しい現象だ。外出制限で人の姿のない町へ食べ物を探しに来て迷ったのだろう」と話していました。

世界でも日本と同様、野生動物が食べ物を求めて人間の生活圏に入り込み、ゴミ箱や農作物を荒らす被害が出るなど問題となっています。

今回の外出制限では長期にわたって人間の生活圏で人が姿を見せず、駆除も十分に行えない状況となっていることから、新型コロナウイルスの感染の拡大が収まり、外出制限が解除された後も野生動物は出没を繰り返す可能性があるとして、人間と野生動物の共存が今後より難しくなることが懸念されています。

専門家「野生動物 外出制限で町中の目撃回数が増加」

長年、ヨーロッパ各地の野生動物の生態を研究し、生息範囲などのモニタリングを行っているイタリアのサッサリ大学のマルコ・アポロニオ教授は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出が制限されるようになってから野生動物が町中で目撃されるケースが増えていると指摘しています。

新型コロナウイルスの影響について、アポロニオ教授は「外出制限で人々の外出が禁止され、町中に人がいなくなり、動物にとって邪魔するものが何もない。これは野生動物にすぐに認識され、そして、ふるまいを順応させている。明らかに、町中で目撃される回数が増えている」と指摘しています。

今後、外出制限が解除されて町に人が戻ってきた場合の野生動物の行動について、アポロニオ教授は「動物は一度学習してしまうと、気にせず町中に出てくるようになり、違う行動をとるようしむけるのは難しい。新型コロナウイルスが人と野生動物の共存の難しさを顕在化させている」と話し、外出制限の期間中に町で簡単に食べ物が手に入ると学習してしまうと、その後も継続して出没する可能性があるとの見方を示しました。