難病患者 物資入手や介護人材確保が困難に 新型コロナ影響で

難病患者 物資入手や介護人材確保が困難に 新型コロナ影響で
自宅で人工呼吸器などを使って生活している難病の患者が、新型コロナウイルスの影響で、消毒液などの物資を手に入れたり、介護する人材を確保したりするのが難しくなっているとの相談が、難病患者などの団体に相次いで寄せられています。
難病患者やその家族の団体などで構成される「日本難病・疾病団体協議会」によりますと、自宅で人工呼吸器を使ったり、注射を打ったりする必要がある難病患者から、消毒液や脱脂綿などが薬局やドラッグストアで手に入らなくなっているという相談が相次いでいるということです。

協議会では3月に厚生労働省に対し、こうした物資が必要な分、患者に配布されることなどを求める要望書を提出しましたが、その後も状況が改善されていないところがあるとして、再度、要望することにしています。

また、協議会に加盟する団体の1つで、ALS=筋萎縮性側索硬化症の患者などでつくる「日本ALS協会」によりますと、患者の中には長時間にわたって自宅で介護を必要とする人も多くいますが、外出自粛の影響などで、介護ヘルパーや看護師といった人材を確保するのが難しいという相談が寄せられているということです。

日本ALS協会の大山孝二常務理事は、「患者の中には24時間、複数の介護ヘルパーに来てもらっている人も多い。介護をする人材と衛生用品の確保は生活と命に直結するので、なんとか確保してほしい」と話しています。

ALS患者の家族「支援なくすごく心配」

東京・江戸川区に住む春山豊さん(68)は寝たきりの状態の妻の雅子さん(65)を自宅で看病しています。

雅子さんは全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALS=筋萎縮性側索硬化症を10年ほど前に発症しました。5年前からは自発的に呼吸ができなくなり、人工呼吸器をつけています。

1時間半から2時間に1度、たんや唾液の吸引を行う必要があり、このとき、鼻の奥や気管に取り付けた器具にカテーテルを入れるため、毎回、手の消毒と脱脂綿に消毒用のアルコールを含ませてカテーテルを拭いています。

消毒用のアルコールは主治医から配布されたものに加え、足りない分を近所のドラッグストアで買っていましたが、配布が月に3本から2本に減り、店では売り切れの状態が続いているといいます。

今は、脱脂綿に含ませる消毒液の量を最低限にしたり、アルコールを含むウエットティッシュを半分に切って代用するなど、節約しています。

また作業する際に使う医療用の手袋やガーゼも残りわずかとなっていますが、手に入らないといいます。

春山さんは「消毒用のアルコールが手に入らなくなるということは想像もできませんでした。人工呼吸器の管理や消毒などをすべて自宅でやっていますが、必要な物がなくなったとき、自分たちで調達しなければなりません。支援がないので、実際になくなったときのことを考えるとすごく心配です」と話していました。

難病患者の介護現場では

介助する側とされる側が直接接触する機会の多い難病患者の介助現場では、新型コロナウイルスの感染拡大によりヘルパーの人手不足が深刻になっています。

都内で一人暮らしをしている貝谷嘉洋さん(49)は、全身の筋肉が次第に衰えていく難病の「筋ジストロフィー」を患っています。貝谷さんはほとんど体を動かせないため、毎日の食事やトイレ、睡眠中の床ずれ予防など、身の回りの世話を7人のヘルパーがシフトを組み、24時間体制で介助しています。

ところが先月上旬、通勤などによる新型コロナウイルスの感染リスクを理由に1人が休職。さらにもう1人のヘルパーも発熱による経過観察で休んでいます。

新型コロナウイルスの感染拡大で、7人いたヘルパーが5人に減ってしまいましたが、これまでの生活を維持するため、週1回の勤務だったヘルパーが3回に増やすなど、残った5人のヘルパーでシフト勤務をやりくりしています。

今後、さらにヘルパーが減れば、日々の食事やトイレに行くことにも支障が出ると貝谷さんは懸念しています。

貝谷さんは「もう一人でも少なくなると(ヘルパーさんの)ローテーションが組めなくなります」と話していました。

ヘルパーを管理する事業所も営む貝谷さんは、新しい人材を確保しようと採用の検討を始めていますが、人手不足の状況を改善できる見通しは立っていません。

「この状況が重なると、条件的にはかなり厳しくなる」と新規採用の難しさをにじませていました。

また「僕らは重症化しやすいとか感染しやすいとかあるので、早く終息して普通の生活に戻ってほしいです」と話していました。