安倍首相「可能な場合 今月31日待たずに宣言解除」 新型コロナ

安倍首相「可能な場合 今月31日待たずに宣言解除」 新型コロナ
緊急事態宣言の延長決定を受け、安倍総理大臣は4日夜、記者会見しました。今月14日をめどに専門家から意見を聴き、可能な場合は、今月31日の期限を待たずに、宣言を解除する考えを示しました。また、「コロナの時代の『新たな日常』を作り上げなければならない」と述べ、感染防止策を講じた新たな生活様式に取り組むよう呼びかけました。
この中で、安倍総理大臣は、先月7日に緊急事態宣言を出して以降、ピーク時と比べ全国の感染者数が3分の1まで減少したとして、「収束に向けた道を着実に前進している」と述べました。

一方で、感染者の減少が十分なレベルと言えず、医療現場が過酷な状況にあるとして、「もうしばらく努力を続けていかなければならないと率直に伝えたい」と述べました。

そして、重症者治療をさらに強化するとともに、1日当たり100人を超える回復者数を下回るレベルまで新規感染者を減らし、地方への人の流れを抑制するための対策を講じる必要があることから、対象地域を全国としたまま、宣言を延長する決定を行ったと説明しました。

また、期限を今月31日までとした理由について、患者の平均的な在院期間が2週間から3週間とされており、新規感染者数を低い水準におさえながら、退院を進め、医療現場のひっ迫した状況を改善するために、1か月程度の期間が必要と判断したと述べました。

さらに、安倍総理大臣は、今月14日をめどに、改めて専門家から、地域ごとの感染者数の動向や医療提供体制のひっ迫状況などの分析を聴き、可能な場合は、今月31日の期限を待たずに、宣言を解除する考えを示しました。

そして、「当初予定していた1か月で、宣言を終えることができず、おわびを申し上げる。中小・小規模事業者がこれまでになく厳しい経営環境に置かれている苦しみは、痛いほど分かっている。さらに1か月続ける判断をしなければならなかったことは断腸の思いだ」と陳謝しました。

そのうえで、経済対策を盛り込んだ補正予算の成立を受けて、給付金の支給を急ぐとともに、賃料の支払いが困難な事業者の負担軽減や、雇用調整助成金のさらなる拡充、それに、生活が厳しい学生への支援について、与党内での検討を踏まえて、追加的な対策を講じる考えを明らかにしました。

一方で、経済や社会活動の本格的な再開について、「この1か月で、現在の流行を収束させなければならない。5月は収束のための1か月で、次なるステップに向けた準備期間だ」と述べました。

また、「ある程度の長期戦を覚悟する必要があり、経済社会活動の厳しい制限を続けていけば、暮らし自体が立ち行かなくなりコロナの時代の『新たな日常』を1日も早く作り上げなければならない」と指摘しました。

そして、専門家会議が策定した「新しい生活様式」を指針として学校生活の段階的な再開をはじめ商店やレストランの営業、小規模イベントの開催などは、感染防止策を十分に講じたうえで実施するよう呼びかけました。

また、医療提供体制について、PCR検査の体制拡充や、感染者の病状に応じた医療機関や宿泊施設への受け入れ支援、それに、医療用のガウンやマスクの生産や輸入の強化を図る考えを改めて示しました。

さらに、治療薬の開発については、アメリカ政府が使用を認めた「レムデシビル」の承認手続きを急ぐとともに、インフルエンザ治療薬の「アビガン」についても、臨床研究で有効性が確認されれば今月中の承認を目指す考えを示しました。

そして、安倍総理大臣は、感染者や医療従事者への差別や偏見が問題となっていることについて、「ウイルスよりも、もっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねない。誰にでも感染リスクはあり、支えあいの気持ちを持ってほしい。強い使命感で頑張っている医療従事者や家族への差別など決してあってはならない」と訴えました。

そのうえで、大型連休中の外出や帰省の自粛に改めて協力を求めたうえで、「国立感染症研究所によれば、中国経由の第一波の流行は抑え込むことに成功したと推測される。欧米経由の第二波も、感染者の増加はピークアウトし収束への道を進んでいる。みんなで前を向いて頑張れば、きっと困難も乗り越えられる」と呼びかけました。

首相 宣言延長に「責任を痛感」

安倍総理大臣は記者会見で、「残念ながら1か月延長するに至ったことに内閣総理大臣として責任を痛感している。実現できなかったことに改めておわび申し上げたい」と述べました。そのうえで、「この5月は現在の流行を収束させること、そして、次なる流行に備える1か月であり、その備えを万全に固めるための1か月であると考えている。その目標に向かって先頭に立って努力をしていく考えだ」と述べました。
また、現金10万円の一律給付をめぐり追加の給付を行うかどうかについて、「すでに800を超える自治体がオンラインでの申請受付を開始した。自治体と協力して一日も早くこの現金を手元に届けたい。その先については、事態の推移や状況などを十分に見極めながら判断したい」と述べました。
さらに、都道府県知事による、より強い措置を可能とする法改正について、「どうしても必要な事態が生じる場合については、当然検討されるべきと考えているが、いまは緊急事態のさなかであり引き続き、国民の協力をいただきながら、都道府県としっかりと協力をして進めていきたい」と述べました。
PCR検査については、「専門家会議の分析・提言では、検査件数がなかなか増加しなかった要因として、各自治体の保健所の業務過多などが挙げられている。現在はこうした状況を踏まえて地域の医師会にも協力をいただきながら、PCR検査体制の強化が図られてきた。東京などの大都市圏を中心に対策を徹底していきたい」と述べました。
また安倍総理大臣は、憲法改正をめぐって3日、緊急事態への対応を憲法にどう位置づけるか、国会で議論すべきだという考えを示したことについて、「自民党は4項目のイメージ案を提案し、その中に緊急事態条項がある。今の事態だから申し上げているのではなく、ずっと申し上げている」と述べました。
休校の長期化に伴う学習機会の確保について、「1人1台のIT端末の実現に向けて予算を確保するなど、さまざまな対策をしているが、感染予防に最大限配慮したうえで、分散登校を受け入れるなどの段階的な学校再開に向けた工夫も提示している。子どもたちの学習機会の確保に向けて、地方自治体や学校現場と一体となって全力を尽くしていきたい。さまざまなアイデアを取り入れていきたい」と述べました。
抗体検査について、「感染状況の全体像を把握するには、PCR検査だけでは困難で、抗体検査を用いた疫学調査も有意義な方法だ。現在、抗体検査キットの性能評価などを行っており、速やかに疫学調査の実施に移していきたい」と述べました。

一方で、「欧米に比べて日本の死者数が少ないのは、別の肺炎で亡くなった人に新型コロナウイルスによる死者が混じっているからではないかという指摘があるが、日本は肺炎で亡くなった人には大体CT検査を行っていて、直ちに判断がつくので、そういうことはない」と述べました。