大相撲 夏場所は中止 7月の名古屋場所は国技館開催へ

大相撲 夏場所は中止 7月の名古屋場所は国技館開催へ
日本相撲協会は、緊急事態宣言の延長が決定したことを受けて、今月24日に初日を迎える予定だった、大相撲夏場所の中止を決めました。本場所の中止は、一連の八百長問題に揺れた平成23年春場所以来です。
日本相撲協会は4日、緊急事態宣言の5月31日までの延長が決定したことを受けて、夏場所の扱いについて協議しました。

そして持ち回りの理事会を開いた結果、ファンや関係者の健康と安全を確保するためなどとして5月24日から東京 両国の国技館で予定されていた夏場所の中止を決めました。大相撲の本場所の中止は、一連の八百長問題に揺れた平成23年春場所以来、3回目です。

また相撲協会は、毎年7月に名古屋市で開催され、ことしは7月19 日を初日としていた名古屋場所については日程は変更せず、大人数での移動と長期滞在を避けるため会場を愛知県体育館から国技館に変更することを決めたうえで、観客を入れずに開催することを目指すとしています。

さらに9月の秋場所のあと各地で行われる予定だった秋巡業の中止も決めました。

相撲協会は、4月の臨時理事会で、当初の予定から2週間、夏場所の初日を延期するとしていましたが、その後の新型コロナウイルスの感染状況の悪化や、特別措置法に基づく緊急事態宣言について、政府が新たな感染者数は減少傾向に転じている一方、医療提供体制は厳しい状況が続いているなどとして、対象地域を全国としたまま、5月末まで延長する方針を明らかにしたことから、夏場所の開催は厳しいとの認識を示していました。

八角理事長「大変残念に思う」

日本相撲協会の八角理事長は、「相撲観戦を楽しみにしているファンの皆様には、大相撲を見せられる日が先になってしまい、大変残念に思います。力士をはじめとする協会員一同、今後も皆様と同様に、一生懸命、新型コロナウイルスの感染予防に努めていきます」としたうえで、「今後、本場所が開催できた際には、精いっぱい迫力のある相撲を見てもらえるよう、これからも取り組んでいきます」とコメントを発表しました。

また八角理事長は、名古屋場所の会場を東京 両国の国技館に変更して開催することについて、「特別開催として無観客開催を目指しています」としています。

さらに、秋巡業を中止とした理由については、「開催できるかどうかのめどが立たない中で準備を進めていくことは、主催者にご迷惑となると判断し、中止を決定しました」と説明しました。

そして、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を踏まえて、「一刻も早く現在の状況が終息することを願うとともに、感染症により亡くなられた方とそのご遺族に心よりお悔やみを申し上げます。また現在治療中の皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。全国各地で感染症の治療・ケアにあたられている医療関係者の皆様に心から感謝するとともに、エールを送らせていただきます」とコメントしています。

開催の可能性探ったが

日本相撲協会は、大相撲夏場所の日程を2週間延期するなどして開催の可能性を探っていましたが、緊急事態宣言の延長を受けて、開催を断念せざるをえませんでした。

ことし3月の春場所は、場所の1週間前まで開催するかどうかの検討が続き、一時は中止する案も上がっていましたが、結局、観客を入れない形での開催に踏み切り、1人の感染者を出すこともなく無事に場所を終えました。

しかし、春場所が終わった直後の3月下旬から感染の状況が急速に悪化し、先月3日、相撲協会は夏場所の開催を2週間延期して今月24日を初日とすると発表しました。

記者会見した八角理事長は、「通常開催を目指しながら無観客での開催や中止を含めて、あらゆる角度から柔軟な姿勢で検討を重ねたい」と述べ、中止の可能性を否定しませんでした。

その後も状況は好転せず、先月7日には東京や神奈川、大阪など7都府県を対象に緊急事態宣言が出され、10日には力士で初めての感染者が出たことが発表されました。

角界での感染拡大は続き、高田川親方や十両の白鷹山を含め、これまでに7人の感染が明らかになっていて、最初に感染した力士1人は今も入院して治療を続けているということです。

先月27日には、夏場所の番付が発表されたものの、力士は体をぶつけ合う稽古を控えるように求められ、基礎的な運動しかできず、場所に向けて十分な稽古ができている状況とは言えませんでした。

芝田山広報部長は、連日、報道の代表取材に応じ、「現状を踏まえて検討していく。諦めずに5月の開催を視野に入れていきたい」と、あくまで開催の可能性を探る姿勢を示していました。

しかし、今月1日、緊急事態宣言について安倍総理大臣が対象地域を全国としたまま、1か月程度延長することを決定する方針を明らかにするなど、夏場所の開催が厳しい状況となっていました。

そして、緊急事態宣言の延長が決定されたことを受けて、相撲協会は夏場所の開催を断念せざるをえませんでした。

芝田山広報部長「番付はそのまま次の本場所へ」

日本相撲協会の広報部長を務める芝田山親方は、夏場所の番付について「相撲を取るわけではないので番付の上がり下がりはない。そのまま移行する予定だ」と述べ、現時点で次に行われる本場所まで維持する考えを示しました。

今後の力士の稽古については「引き続き出稽古は禁止する。接触する稽古は原則として自粛を勧めるが、力士たちの体調を十分に観察したうえで、師匠の判断で取り入れてもかまわない」と柔軟な対応をしていく考えを明らかにしました。

角界では親方と力士の新型コロナウイルスの感染が相次ぎましたが、芝田山親方は「あくまで政府の緊急事態宣言の延長を受けて中止した」と強調したうえで「相撲界で40年以上やっていて、このようなことが起きるとは思ってもみなかった。皆さんと一緒に感染予防策を徹底して辛抱するしかない。私たちも苦渋の決断だ。本場所の開催は絶対的に必要なもので、次の場所に向けてしっかりと準備を進めていきたい」と話していました。

新大関 朝乃山「一日一日を大事に 今できることを」

観客を入れずに行われたことし3月の春場所後に大関に昇進し、新大関として夏場所に臨むはずだった朝乃山は「7月の場所に向けて、一日一日を大事に今できることを続けていきたい」と気持ちを切り替えていました。

春場所で44回目の優勝を果たした横綱 白鵬は「今は残念な気持ちだが、世の中がこういう状況なのでしかたがない。この5月をどう過ごすかが次の場所に生きていくのではないか」と心境を話しました。

例年は名古屋市で行われている7月の本場所の会場が東京 両国の国技館に変更されることについては「名古屋のファンの気持ちを思うと残念だが、これも世の中の状況を考えると今はしかたのないことだ。先の見えないたたかいだが、終息した時には名古屋のファンとも触れ合うことができたらと思う」と話していました。

横綱 鶴竜は「今できることを継続して行い、7月の場所で元気な姿を見てもらえるようにしっかり準備したい」と話し、大関 貴景勝は「引き続き、基礎運動を中心に体の全体を鍛えていきたい」と冷静に受け止めていました。