認知症介護 状況変化に対応難しく相談電話相次ぐ 新型コロナ

認知症介護 状況変化に対応難しく相談電話相次ぐ 新型コロナ
新型コロナウイルスの影響が長期化する中、認知症の患者や家族でつくる団体には、相談の電話が相次いで寄せられています。
京都市にある「認知症の人と家族の会」の本部事務局には、3月上旬から4月末までに、認知症の高齢者を介護する家族などから新型コロナウイルスに関する相談がのべ44件寄せられました。

「認知症の夫がマスクをつけようとしない」とか、「手洗いがうまくできず大声を出して怒るので、お互いにイライラしている」などと、状況の変化にうまく対応できない認知症特有の難しさを訴えるものが目立つということです。

またグループホームのリビングでの食事などが中止され個室に閉じ込められていて筋力低下が心配だとか、花見などのイベントが中止され不安だという電話が親から毎日かかってくるといった、入居型介護施設での生活の不安に関する相談もありました。

このほか各地の支部には、デイサービスの利用を減らしたのに、いつものようにデイサービスに行こうとして目を離した隙に出かけて迷子になり、転倒して病院に搬送されたケースなども報告されているということです。

「認知症の人と家族の会」の鈴木森夫代表理事は「認知症の患者もその家族も余裕がなくなっていて、非常に厳しい状況にある。とにかく1人で悩みを抱え込まないで親しい人に相談してほしい。事態がさらに長期化すれば、介護施設も家族も共倒れになるのではないかという危機感が強まっており、介護の分野にも思い切った財政支援をお願いしたい」と話しています。

専門家「認知症の人を不安にさせないことが大事」

専門家は、認知症の患者は状況の変化に適応するのが難しいため、新型コロナウイルスの影響が長期化すると深刻な影響を受けるおそれがあると指摘しています。

介護の問題に詳しい淑徳大学の結城康博教授によりますと、認知症の患者は、定期的に受けていたサービスが受けられなくなったり、顔見知りの介護職員や仲間に会えなくなったりすると、生活のリズムが崩れ、精神的に不安定になるおそれがあるということです。

結城教授は、「大声を出すなどふだんとは違う行動が出たり、精神的に不安定になったりするなど、本人に悪影響が出るだけでなく介護する家族への負担も増えるおそれがある。家にいる時間が長くなると、要介護度が重くなったり心身の機能が低下したりするなど、体の状態が悪化するおそれがあり、はいかいが目立つようになれば命に関わる問題にもなる」と述べました。
そのうえで、「マスクによって顔が隠れ誰かわからなくなると、認知症の人は不安になって精神的に不安定になることもある。置かれている状況を十分理解できない中でマスクをつけろと言われると、意地悪をされていると感じる場合もあるので難しい」と話しました。
さらに、「まずは認知症の人を不安にさせないことが大事だ。今まで慣れ親しんだ人たちの声を聞くだけでも心身の状態の低下が少しでも食い止められる可能性がある。人との接触が減る不自由な生活の中でも、写真を見せながら話しかけたり電話やテレビ電話で会話をするなど、可能な限りのコミュニケーションを取ることが必要だ」と話しました。