クルーズ船調査 無症状の人の部屋からも新型コロナ遺伝子

クルーズ船調査 無症状の人の部屋からも新型コロナ遺伝子
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新型コロナウイルスの集団感染があったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染が確認された人の客室を国立感染所研究所のグループが調べたところ、症状が出ていなかった人が滞在していた部屋からも新型コロナウイルスの遺伝子が検出されたことが分かりました。
この調査は国立感染症研究所の山岸拓也室長らのグループが行いました。

グループでは、多くの感染者が出た「ダイヤモンド・プリンセス」で乗客が下船したあと、客室内のどのような場所からウイルスの遺伝子が検出されるかをPCR検査を使って調べました。
その結果、感染者が滞在した33部屋のうち21部屋でウイルスの遺伝子が確認されたということです。

詳しく見てみますと、ユニットバスのトイレの床からは全体の39%にあたる13部屋で、ベッドの枕からは34%に当たる11部屋で、またテレビのリモコンからは21%に当たる7部屋でウイルスの遺伝子が検出されました。

また、このうち感染は確認されたものの、検査をした当時症状が出ていなかった人が滞在していた13部屋については、54%に当たる7部屋のトイレの床から、38%に当たる5部屋の枕から、23%に当たる3部屋のリモコンから、それぞれ検出されたということです。

感染していない人の部屋からはいずれもウイルスは検出されませんでした。

調査を行った国立感染症研究所の山岸室長は「症状のある人からも、ない人からも同じような場所から同じ頻度でウイルスが検出されたということが今回の重要な発見だ。無症状の人からもたくさんのウイルスが出ている可能性があり、清掃や消毒をしっかり行っていく必要がある」と指摘しています。

症状が出る前に他人に感染の報告 濃厚接触者の定義も見直し

新型コロナウイルスに感染した人の中には、発熱などの症状がみられない無症状の人が報告されています。

国立感染症研究所の報告では、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客でPCR検査で陽性と判定された人のうち、51%に当たる318人が検体が採取された時点では無症状でした。

海外でも、中国の保健当局が先月14日までの累計で6700人余りの無症状の感染者がいたことを公表しています。

こうした無症状の人から感染がどの程度広がるおそれがあるのかは、まだよく分かっていません。

ただ潜伏期間中のため検査時点では無症状だったものの、その後発症した人については、症状が出る前からほかの人に感染していたという報告があります。

シンガポールの研究グループは、国内のケースの調査で症状が出る前にほかの人に感染した例があったとして、発症前の潜伏期間でも対策を取るべきだと指摘しました。

このほかにも体内のウイルスの量は、発症の数日前から増えているという研究結果が各地のグループから報告されています。

WHO=世界保健機関でも、はっきりとした症状が出てくる3日から1日前にウイルスの検査で陽性となることなどから、潜伏期間中の感染は起こり得るとしています。

このため感染者との接触について、「症状が出る2日前から1メートル以内で15分以上接触した人」などと定義を見直しました。

また厚生労働省も先月、「濃厚接触者」についての定義を「発症の2日前から」と改めています。