コロナでも人とのつながりをオンラインで

コロナでも人とのつながりをオンラインで
新型コロナウイルスの感染拡大で、両親や友人と会えない人も多いのではないでしょうか? そうした中、ハッとさせられることばに出会いました。“Physical distance doesn’t mean social distance(人との物理的な距離を保つことは、心を通わせる交流を妨げるものではない)”。WHO=世界保健機関のテドロス事務局長の発言です。ソーシャルディスタンスと聞くと、人との交流を諦めなければいけないと思いがちですが、危機的な状況が続く今、むしろ人とのつながりは重要性を増しています。注目されているのが、オンラインの交流。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、新たな活用方法が次々と誕生しています。(国際部記者 山田奈々 田村銀河)

飲み会は居酒屋ではなくオンラインで

在宅勤務が増え、金曜日の仕事終わりにみんなで1杯…とはいかない今。大手ゲーム会社の「グリー」は、社員どうしの交流が途絶えないよう、オンラインの会議システムを使った飲み会を推奨。月1回、1人当たり3000円を上限に、会社が飲食代を補助する取り組みを始めました。
今、こうしたオンライン飲み会の需要が高まっていて、プラットフォームを提供する新たなサービスも登場。家族に新型コロナウイルスをうつしてしまうのではないかという懸念から、地方の実家への帰省を取りやめざるを得なかったベンチャー企業の社長が、ネットを通じて会いたい人に気軽に会ってほしいと始めました。
開始からわずか3日間で、7000件の利用があったといいます。人気の秘密は、その手軽さ。一般的なオンライン会議のシステムと異なり、アカウントの作成などの手間がなく、サイト上で作成したURLを共有してアクセスするだけで、簡単につながることができます。今後は、オンライン飲み会で、出前を注文できる機能を加えたり、バーや居酒屋などの飲食店が、オンライン上で営業できるシステムの開発を進めたりすることも検討しています。
(オンライン飲み会サービス「たくのむ」を開発 清瀬史社長)
「自分が実家に帰って家族が感染して亡くなってしまったら、そんなつらいことはない。今は会いたくても会えない人がたくさんいると思う。お酒を飲まない人にも、本当に大切な人との時間を共有するために使ってほしい」

いい湯だな!オンライン銭湯で癒やし

「自宅での缶詰はもう限界!」という人のため、オンラインで“癒やし”を届けようという動きも。今ツイッター上では「#オンライン銭湯」というキーワードで、全国各地の銭湯や温泉が自慢のお風呂の様子を相次いで投稿しています。「ごぼごぼごぼ」と音を立てるジェットバスに入っていくような没入感のある映像から、森に囲まれた露天風呂に源泉から湯が注ぐ様子など、アップされた動画の数は50以上。「癒やされる!」とネットで話題になり、動画をBGMとして流しながら在宅勤務する人や、動画を見ながらお風呂に入る人が続出しました。
最初に投稿したのは、東京・杉並区の「小杉湯」の番頭で、イラストレーターの塩谷歩波さん。きっかけは、感染への警戒から銭湯の利用者が減ったことでした。銭湯は、緊急事態宣言が出ている東京都などでも休業要請の対象とはなっていないため、感染防止対策をして営業を続けることは可能ですが、客の減少は痛手で、自主休業を選択した銭湯も少なくないといいます。塩谷さんの銭湯には、ふだんは300~400人の客が来ていましたが、今は利用者が4割ほどまで減少。「自宅でも銭湯の気分を味わってほしい」と3月末に銭湯の湯船を撮影して投稿したのです。

塩谷さんが最初に投稿した動画の再生回数は、すでに100万回を突破。「厳しい環境だからこそ“癒やし”を届けたい」。銭湯や温泉地の人たちの思いが、湯巡りファンとの新たなつながりを生み出しています。
(「小杉湯」番頭・塩谷歩波さん)
「銭湯の非日常感を、ぜひ自宅からも味わってほしい。終息したらまたぜひ来て、これまでの不安をお湯で流してほしい」

オンラインでサイン会!?

ファンとのつながりが大切なエンターテインメント業界でもオンラインの活用が始まっています。中でも、小さなライブハウスでのお客さんとの“近さ”を売りにファンを獲得してきたいわゆる「地下アイドル」にとって、ファンと対面できない現状は死活問題。東京を拠点に活動してきた3人組の「XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム)」は、3月末の東京都の外出自粛の呼びかけで、10以上の公演の中止に追い込まれました。そうした中、編み出したのが直接、サインを手渡さない「オンラインサイン会」。4月上旬に初めて開催しました。
会場にはファンの姿はなく、カメラが立てられているだけ。机に向かうメンバーがインスタントカメラで撮影した写真にサインしていく様子をネットで配信します。あらかじめサイン入りの写真を購入する代金を支払ってくれたファン一人一人に話しかけながらサインを書いていき、後日郵送する仕組みです。ふだんなら20人余りの参加ですが、2時間のサイン会で延べ600人以上が視聴。併設のライブスタジオで楽曲も披露すると、「隔離生活のなか最高のライブだった!」などと、イタリアやイギリスなど感染拡大が深刻な海外からの書き込みも多数寄せられました。物理的な距離を乗り越えた、アイドルとファンとの新しいつながりの形です。
(「XOXO EXTREME」メンバー 浅水るりさん)
「ファンが見てくれていると思うと声が聞こえてくるような気がして、いつも以上に楽しんでできた。これからもインターネットを使って遠くの人にも届けたい」

取材を終えて

対面での交流が難しい中でも、オンラインで日々の楽しみを見つけ、何とか人とつながろうとする私たちの行動が、ひいては新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立たされるビジネスを支援することにつながっているのだと気付かされました。

取材を担当した私たち自身も、積極的にオンラインで友人や家族との交流を図っています。物理的に会うことができなくても、誰かとつながろうと、いつも以上に意識して行動すれば、人と人との交流は、決して失われないと実感しています。いつ感染拡大が収まるのか、先は見通せませんが、心の中はウイルスに支配されずに過ごしていけたらと思います。
国際部記者
山田奈々

平成21年入局
長崎局、千葉局、経済部を経て現在、国際部でアメリカ、ヨーロッパを担当
国際部記者
田村銀河

平成25年入局
津放送局、千葉放送局を経て国際部