“給料ファクタリング”に注意を 新手のヤミ金融被害急増

“給料ファクタリング”に注意を 新手のヤミ金融被害急増
「給料の前借りサービス」などとうたってサラリーマンなどに高金利で金を貸す、「給料ファクタリング」と呼ばれる新手のヤミ金融の被害が増えています。新型コロナウイルスの影響で給料が減って返済できなくなるケースもあり、大阪の弁護士や司法書士のグループが注意を呼びかけています。
「給料ファクタリング」は、サラリーマンなどが給料日に受け取る予定の給料を業者が前もって債権として買い取り、現金を融通するもので、インターネットやSNSの広告で「給料の前借りサービス」などとうたわれています。

しかし、手数料は年利換算で法定金利の10倍以上になるケースもあり、金融庁は実質的には貸金業で、無登録の業者を新手のヤミ金融だと指摘しています。

大阪と東京の弁護士や司法書士のグループには、ことしに入って給料ファクタリングに関する相談が寄せられ始め、ことし3月以降、215件に増えたということです。

急増している背景に新型コロナウイルスの影響があるとみられ、「給料が大幅に減り、返済ができない」とか「生活が苦しくなり、手を出してしまった」といった相談が相次いでいるということです。

返済が滞れば職場や家族に電話されて脅されるケースもあるということで、相談に当たっている弁護士と司法書士のグループは、給料ファクタリングを絶対に利用しないよう呼びかけています。

法定金利の10倍以上の手数料

「給料ファクタリング」は新手のヤミ金融だとして金融庁が注意を呼びかけています。

「ファクタリング」は本来、取引先から代金を受け取る権利、「売掛債権」の買い取りを意味することばで、企業などの当座の資金調達に使われる金融サービスのことをさします。

これに対し「給料ファクタリング」は業者がサラリーマンやパートなど勤め先のある人に、給料日に受け取る予定の給料やその一部を債権として買い取る形で、前もって現金を融通する仕組みです。

多くの業者はインターネットやSNSの広告で「給料の前借りサービス」などとうたい、利息も不要で、貸金業にはあたらないなどと宣伝しています。

例えば来月の給料を20万円と見込んでいる人が、すぐにその金額を使いたいと考えた場合、業者に申し込めば、その日のうちに20万円から一定の手数料をひいた金額が口座に振り込まれます。

その後、給料日に勤め先から入った給料の20万円を業者に渡します。

業者とのやり取りはメールや無料通信アプリで完結し、初めに運転免許証と給与明細の写真などを送れば、ほとんど審査は必要なく、多重債務者でも利用できるとうたう業者が多いということです。

しかし、業者の手数料は利用者が受け取る資金の2割を超えるケースが多く、金融庁はこれが実質的には利息にあたり、年利換算すれば法定金利の10倍以上となることから違法な貸金業だとしています。

新型コロナで収入減返済困難も

「給料ファクタリング」で10万円を借り入れたというイベント関連会社に勤める40代の男性が電話で取材に応じました。

男性は新型コロナウイルスの影響で、見込んでいた給料が先月から減り、返済が困難になっているということです。

男性が「給料ファクタリング」で初めて金を借りたのは去年で、その経緯や理由について、「ネットやツイッターの広告で『給料の前借り』とか『ヤミ金ではない』とか説明されていて、現金が足りない時だったのでうさんくさいとは感じたが、『ヤミ金よりはましかな』と思い手を出してしまった。スマートフォンだけの10分ほどのやり取りで、給与明細と運転免許証の写真を送信すれば1、2時間ほどで現金が振り込まれた。あまりの手軽さにお金を借りてる感覚は正直なかった」と話しています。

しかし給料日に入ってきた給料は業者に渡すため、再び手元の現金が不足し、繰り返し「給料ファクタリング」を利用せざるを得なくなっていったといいます。

今はイベントの仕事が全くないため休みが増えていて、今月以降の給与はさらに減少することが見込まれるうえ、会社が倒産して職を失うのではないかと危機感を募らせています。

男性は「返済の見込みがたたなくなると、それまで女性のオペレーターの対応だったのが、怖い男性の声で何度も電話がくるようになり、『職場や家族に電話する』と脅されています。収入が減って返せるあてもなく、給料日が来るのが怖い」と話していました。

新型コロナで生活困窮 被害増加を懸念

ヤミ金被害の対策に当たっている「大阪いちょうの会」の司法書士、前田勝範さんは「『給料ファクタリング』の利用者は20代から40代までの比較的若い世代が多く、『給料の前借りサービス』など手軽さを売りにしているため、『ヤミ金』という認識がなく、安易な気持ちで手を出している。新型コロナウイルスの影響で今後、生活に困窮する人が利用してしまうケースが増えることが懸念される」と指摘しています。

そのうえで「実質はヤミ金なので絶対に利用せず、当座の金に困っている人は社会福祉協議会の緊急小口資金などの公的な支援を受けるようにしてほしい。また、利用してしまった場合は、弁護士、司法書士に相談してほしい」と話しています。