緊急事態宣言 1か月程度延長の方向 判断のポイントは

緊急事態宣言 1か月程度延長の方向 判断のポイントは
特別措置法に基づく緊急事態宣言をめぐって、政府は、対象地域を全国としたまま、1か月程度延長する方向で調整を進めています。

今後の流れ

1日、政府の専門家会議が開かれ、感染者数の推移や行楽地などへの人出の状況、それに、各地の医療提供体制などのデータを分析するとともに、今後の判断基準などについても意見が交わされます。

そして専門家会議の意見なども踏まえ、政府は宣言の延長に向けた手続きに入る見通しで、まず感染症の専門家などでつくる政府の「諮問委員会」から、宣言に関する政府の方針が妥当かどうか、意見を聴くことになります。

諮問委員会の見解が示されたあと、衆参両院の議院運営委員会で、政府方針の報告と質疑が行われます。

そして政府の対策本部が開かれ、宣言の延長が決定される見通しです。

今後は学校の休校や施設の休業への協力要請について、どのような取り扱いとするのかや地域ごとに対応を変えるのかといった点が焦点になるものと見られます。

判断のポイントは

専門家会議では、
1.感染状況
2.行動変容
3.医療体制の大きく3つの指標を重視しています。

1.感染状況

まずは感染状況です。これは毎日の新規感染者数の推移などを見ます。

東京都の場合、宣言が出された4月7日は79人。17日に201人に増えましたが、これをピークに、今週は100人を下回る日も出てきました。

専門家会議のメンバーの1人は、減少に転じ始めたものの、想定よりも減少スピードが遅いという認識を示しています。

数が単に減っているだけではなく、なだらかに減っているのか、急激に減っているのか、カーブの下がり方も重要なポイントだとしています。

また全国の1日の新規感染者数が100人を下回り、2ケタになるのが目安だと話す専門家もいます。

2.行動変容

次に行動変容です。政府は人との接触を8割削減する目標を掲げて、私たちに日々の行動パターンを見直すよう求めています。専門家会議によりますと、「8割削減できれば、1か月で確定患者数の減少がデータ上にはっきり見えるようになる」としています。

一方、削減率が8割に届かなければ、感染者数を減少させるためにはさらに時間がかかるとしています。

専門家会議は、主要駅や繁華街での人出や、時間あたりの接触数を、携帯電話の位置情報データなどを元に分析し、人々の行動変容が感染の抑制に結びついているか、評価を行うことにしています。

3.医療体制

続いて医療体制です。専門家は医療体制をとりわけ重視しています。特に地方は都市部に比べて、医療体制がぜい弱なところがあり、油断すると一気に医療崩壊が起きかねないからです。

具体的には、
▽病床がどの程度ひっ迫しているかや、
▽重症者の入院数、
▽軽症者が宿泊施設に移っているか、
▽検査がスムーズに行われているかなどを見ることにしています。

専門家の1人は「感染者数が抑えられてきたとしても、医療体制は各地でひっ迫した状況が続いていて、大型連休明けに解除できるような状況ではない」と話しています。

専門家会議はこうした科学的な知見や数値に基づいて評価を行うことにしています。

政府は、専門家が示す科学的な評価に加え、経済的・社会的な影響も考慮して、判断することにしています。

緊急事態宣言とは

緊急事態宣言は、先月成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく措置です。全国的かつ急速なまん延により、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合などに、総理大臣が宣言を行い、緊急的な措置を取る期間や区域を指定します。

対象地域の都道府県知事は、住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請することができます。

また学校の休校や、百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できます。

さらに緊急の場合、運送事業者に対し、医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は、医薬品などの収用を行えます。

安倍総理大臣は今月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を行い、今月16日に対象を全国に拡大しました。

このうち当初から宣言の対象とした7都府県に、北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都の6道府県を加えた13の都道府県を、特に重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていく必要があるとして、「特定警戒都道府県」と位置づけました。

宣言の期間は来月6日までですが、政府は宣言の対象地域を全国としたまま、1か月程度延長する方向で調整を進めています。

緊急事態宣言めぐる経過

新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言をめぐる経過です。

2月27日 安倍首相 特措法整備へ準備指示

新型コロナウイルスの感染拡大に備え、安倍総理大臣はことし2月27日、政府の対策本部で関係閣僚に対し、緊急事態宣言を可能とする特別措置法の整備に向けた準備を進めるよう指示しました。

3月4日 党首会談で協力呼びかけ

一部の野党から私権の制限に懸念も出る中、安倍総理大臣は法案の早期成立を図るため、3月4日、野党5党の党首らと個別の会談を行い、協力を呼びかけました。

3月13日 特措法可決・成立

3月13日、新型コロナウイルス対策の特別措置法が参議院本会議で可決・成立。

3月26日・28日 緊急事態宣言 法律上の手続き整う

東京都内などで感染者が急増する中、政府は3月26日、特別措置法に基づく「対策本部」を設置しました。そして、2日後の28日の対策本部で、政府などが取り組む全般的な方針を盛り込んだ「基本的対処方針」を決定し、緊急事態宣言を行うための法律上の手続きが整いました。

3月31日 自治体や医療関係者から宣言出すよう求める声

緊急事態宣言をめぐって、政府内では経済への影響を考慮し、慎重に対応すべきだという意見が根強くありましたが、東京都の小池知事や大阪府の吉村知事ら自治体側や日本医師会などの医療関係者からは、宣言を出すよう求める声が強まりました。

4月6日 安倍首相 緊急事態宣言出す考え表明

4月に入り、東京都内の1日当たりの感染者数が100人を超え、政府内でも緊迫感が高まる中、安倍総理大臣は6日、新型コロナウイルス対策を担当する西村経済再生担当大臣、感染症の専門家などでつくる政府の「諮問委員会」の尾身茂・会長と会談し、状況の報告を受けました。

そして夕方、記者団に対し、翌7日に緊急事態宣言を出す考えを明らかにしました。対象地域は東京など7都府県、期間は5月6日までの1か月程度として、対策本部でもこうした方針を表明しました。

4月7日 緊急事態宣言を決定

4月7日、諮問委員会が東京都をはじめ7都府県を対象に緊急事態宣言を出すなどとした政府の方針は妥当だとする見解を示したことを踏まえ、安倍総理大臣は衆参両院の議院運営委員会に出席して政府の方針を説明。夕方の対策本部で、宣言を決定しました。

これを受け、安倍総理大臣は記者会見し、人との接触機会の7割から8割削減を目指すとして、7都府県の住民に対し、外出を自粛するよう呼びかけました。また、政府は、臨時閣議で緊急経済対策を決定しました。

4月10日 東京都 休業要請行う業態など公表

緊急事態宣言の発出を受け、東京都の小池知事が4月10日、休業への協力要請を行う具体的な業態などを公表。都は当初、百貨店やホームセンター、理髪店などにも要請を行う考えでしたが、政府との調整を踏まえ、対象には含めないことになりました。

4月16日 安倍首相 宣言の対象地域の全国拡大決定

緊急事態宣言の対象となった7都府県以外でも感染拡大が続き、愛知県などが独自の緊急事態宣言を行う中、安倍総理大臣は4月16日の対策本部で、宣言の対象地域を全国に拡大することを決定。翌日の記者会見で、大型連休に向け、都市部から地方への移動を自粛するよう重ねて呼びかけました。

4月29日 安倍首相“全面的な解除は難しい”

29日の参議院予算委員会で、安倍総理大臣は現状でも新規の感染者数の増加が続いているとしたうえで、「5月6日に『緊急事態が終わった』と言えるかどうかは依然、厳しい状況が続いていると思う」と述べ、全面的な解除は難しいという認識を示しました。

そして各地の人出の状況や感染者数の推移、医療提供体制などを注視しながら、慎重に検討を進めています。