この津波避難施設の利点、知ってました?

この津波避難施設の利点、知ってました?
古墳のようなこの施設。津波避難マウンドです。難関中学校の入試で、利点を答える問題が出されました。一緒に考えてみましょう。

9年前の東日本大震災。それまでの想定を上回る地震が発生し、津波で大きな被害を受けたことは、記憶に鮮明に残っています。この震災を教訓に、国は「南海トラフ巨大地震」や「首都直下地震」の想定を見直してきましたが、4月21日にも新たな想定が示されました。

東日本大震災を上回る地域も

今回、見直されたのは、北海道の十勝沖から根室沖の「千島海溝」と「日本海溝」のうち、北海道の日高沖から岩手県の三陸沖の領域です。ここは、巨大地震が300年から400年ほどの周期で発生し、大津波が起こっていたとみられているところで、前回の大津波は17世紀ごろに起きたと見られています。

ということは、すでに400年ほどがたっていて、いつ起こってもおかしくないということか…。

新しい想定では巨大地震が起きた場合、どのような津波が発生するというんでしょうか。

「千島海溝」沿いで最大クラスの巨大地震が発生した場合は…。
津波の高さ
▽北海道えりも町 最大27.9メートル
▽北海道釧路町 最大27.3メートル
▽北海道広尾町 最大26.1メートル
▽北海道根室市 最大22メートルなど
「日本海溝」のうち北海道の日高沖から岩手県の三陸沖で巨大地震が起こった場合は…。
津波の高さ
▽北海道えりも町よりも西側の各地 10メートル程度
▽北海道浦河町 最大14.5メートル
▽青森県八戸市 最大26.1メートル
▽岩手県宮古市 最大29.7メートル
▽宮城県気仙沼市 最大15.3メートル
▽福島県南相馬市 最大19メートル など
東日本大震災を上回る津波が予想されている地域もあるんです。

問題に挑戦しよう!

今回は、津波への備えについて、ことしの中学入試で出題された問題で考えていきますよ。
問題。
「次の図は静岡県の海岸近くで見られる建造物で、図Aも図Bも津波から人々を守るために作られたものです。AとBを比較して、Aの利点を2つ答えなさい」
住んでいる地域によっては、大人でも見たことがない人もいると思います。

Aは、古墳のようにも見えますが、違いますよ。「津波避難マウンド」という避難場所です。

Bは「津波避難タワー」というものです。どちらも、東日本大震災のあと、巨大地震による津波の被害が想定される静岡県や三重県などで整備が進んでいます。

施設の特徴を考えてみる

では、静岡県で行われた訓練の様子を紹介するので、利点を考えてみてください。
まずは「津波避難マウンド」。静岡市で行われた訓練では、参加者が人工的な小高い丘を上っていきました。丘は海抜8.7メートル。丘に沿って作られているスロープを使って、住民およそ150人が避難しました。
次は「津波避難タワー」での訓練。浜松市で行われた訓練では、階段を上って避難しました。タワーの高さは10メートル余りです。車いすを使っている人も参加していて、大人4人で抱えてのぼる訓練も行われました。ということで、答えはわかりましたか?
津波避難マウンドの利点の模範解答です。
「スロープがあるので、車いすの人やお年寄りも避難しやすい」

施設の環境に注目

でも、入試では、利点を2つ説明する必要がありました。

うーん、もう1つと言われると…。
そこでミガケ取材班が訪ねたのは、社会の時事問題に詳しい学習塾の星野文江さん。問題の写真をよく見て、考えてほしいと言われました。

何か気付きますか? ポイントは「植物」ですよ。
ということで、答えは…。
四谷大塚 星野文江さん
「津波マウンドが周りに木が植わっていたり、ちょっと公園のようなものになっていたりするのがわかります。ふだんから公園として近くの住民の方たちが利用できるという点が、津波避難タワーとは違って、利点の1つと考えられます」
模範解答の2つ目の例がこちらです。
「災害時以外にも、住民の憩いの場として活用できる」

考えることを習慣に

ただ、2つの視点を答えるのは、簡単ではないな…。

どうやって、学んでいったらいいんでしょうか?
四谷大塚 星野文江さん
「バリアフリーが、生活の場にどう生かされているのか考えて、表現できる力が重要になってくると思います。『どうしてこの施設があるんだろう』と考えることを習慣にしておくと、学習する力の基盤につながっていきます」
一方で、「津波避難タワー」のほうが優れている点もあるんですよ。

静岡県の防災担当者に聞いたところ、「津波避難マウンド」より狭い土地でも建設できるという利点があるということです。

知恵は歴史の中に詰まっている

最後に、もう1つクイズ。

津波避難マウンドはどうして作られたか知っていますか?

静岡県には、現在60余りの「津波避難マウンド」があるんですが、その原形は江戸時代にあったと言われているんです。
こちらは、静岡県袋井市にある江戸時代に作られた人工の小山です。台風による高潮でおよそ300人もの死者が出たあと、生き残った人たちが避難する場所として作ったものです。

地元では、命を助けてくれる山、「命山(いのちやま)」と呼ばれています。

東日本大震災のあと、住民から「先人の知恵を生かした『平成の命山』をつくってほしい」という要望が出されて、津波避難マウンドが作られたということです。

東日本大震災に襲われた三陸沿岸にも、「津波てんでんこ」という命を守る教訓があります。「地震が起きたら津波が来るから、それぞれ逃げろ」という意味です。

家族もそれぞれ命を守る行動しているから、信じて自分の命を守ろうという教えで、震災当時、避難につなげた子どもたちもいました。

あなたの地域の歴史にも、命を守る大切な知恵があるかもしれません。この機会に調べてみては?
「週刊まるわかりニュース」(土曜日午前9時放送)の新コーナー「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。

「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉千秋キャスターと考えていきましょう!