“アフターコロナ”をどう勝ち抜く? ローソン 竹増貞信社長

“アフターコロナ”をどう勝ち抜く? ローソン 竹増貞信社長
世界中を脅かしている新型コロナウイルス。日本の経済界は今、業種や立場を問わず、緊急事態ということばでは言い表せないほどの大きな危機に直面している。一方で、オンラインを活用した仕事の進め方や人々の交流は、新しい時代の潮流を生み出し始めている。経済界は今回の危機をどう乗り越えようとしているのか。そして新しい時代にどう立ち向かうのか、各企業のトップに聞く。1回目は、コンビニ大手ローソンの竹増貞信社長。商社マンからコンビニトップに転じた50歳の経営者が見据える、新時代のコンビニの在り方とは。(聞き手 経済部記者 仲沢啓)

緊急事態下のコンビニの現状は

緊急事態宣言が全国に拡大された後も、原則として通常どおり営業を続けているコンビニ。社会インフラとしての位置づけがますます高まっている。

しかし外出自粛や在宅勤務などの影響で、オフィス街などの店舗の利用客が大きく減り、3月の売り上げは業界全体で去年の同じ月を5.8%下回った。9年5か月ぶりの大幅な落ち込みだ。

4月はさらに大きな影響は免れない。現状はどうなっているのか、聞いた。
ローソン 竹増社長
「4月の売り上げは、立地によって差はありますが、平均して2割から3割減少しています。今まで昼間の人口が多かった都心のオフィス立地の店舗では、売り上げが7割から8割落ち込むなど、営業を続けるうえで非常に厳しい中でやっているのが現状です」
「これまで、阪神・淡路大震災や東日本大震災などさまざまな震災や災害を経験してきましたが、そうした時には『開いている店がコンビニしかない』という状況が長く続き、何から何までコンビニで買い求めていただいていました。今は、生活に必要な店は(コンビニ以外にも)開いているので、日々のまとめ買いはスーパーで、ちょっとした買い物をコンビニでと客が使い分けていて、これまでとは使われ方が違っています」
竹増社長
「消費も変化しています。コンビニの買い物は、外出時に“あ、水がほしい!”という買い方をされるのですが、外出自粛の状況ではそういう客は少なく、目的を持って日々の物を買いに来ています。牛乳や納豆、豆腐、卵、食パンといった毎日の食生活に必要なものを近くのローソンでささっと買う傾向が強くなっています」
ローソンをはじめとする大手コンビニは、地域の商店主などの個人や企業がオーナー(チェーンの加盟店)となって店を経営する「フランチャイズ」の仕組みで運営されている。こうしたオーナーを支えていくこともコンビニ経営の重要な柱だと竹増社長は語る。
竹増社長
「(客の中には)都心に住んでいる人や、高齢の方、スーパーまで行けない人もたくさんいます。そういった方々のために、しっかり店を開けて暮らしを守る必要がある。さまざまな震災を経験してきて、町を支えてきたという経験がコンビニオーナーのDNAにもなっていて、新型コロナウイルスが終息するまで、本部も一緒になってそれぞれの店を支え、町を支えていく必要があります。コンビニは、営業の継続ができなくなることを最も避けなくてはならない。国の支援もさまざまなメニューがあるので、しっかり活用しながら、本部としても個別の店ごとにどういうニーズがあるかを確認し、定量的な支援、人的な支援も含めて検討していきたいと思っています」

営業を継続するために

コンビニは「密閉・密集・密接」のいわゆる“3密”の状態になりやすい環境だ。営業を継続するために、ローソンは以下のような対策をとっている。
▽入り口のドアを定期的に開放する
▽飛沫感染を防ぐためレジカウンターに透明なカーテンを設ける
▽レジ待ちの客が間隔をあけて並ぶよう床に目印を貼る
▽店ごとに混雑する時間帯を掲示し、比較的空いている時間帯の来店を促す
▽トイレやごみ箱の利用は緊急時をのぞいて原則、休止
また深刻な人手不足対策に対応するために導入した「セルフレジ」。去年、ローソンは全国1万4500店舗すべてに導入したが、今回の感染拡大に際して、従業員と客の接触を避ける効果があり、大規模な設備投資が今回の事態に生きた。
社会インフラとして営業を続けるうえで、店の従業員や、物流を担う人たちなど、市民生活に欠かせない仕事に従事する「エッセンシャルワーカー」に安心して働いてもらうことも重要だ。しかし現状では、従業員のための消毒液やマスクが常に不足しているという。
竹増社長
「全国でマスクや消毒液が不足していて、当然、医療関係者のためのものがいちばん大事です。ただ、町のライフラインとして暮らしを守るコンビニでも、マスクや消毒液がまだまだ足りていない。本部としても供給を増やしていきたいが、国などからのサポートがあれば店の従業員も勇気づけられると思います。従業員が安心して働くことができれば客も安心して来店できる。そうした環境を整えることで新型コロナウイルスをなんとか乗り越えていきたい」

危機が突きつけるものとは

売り上げが大きく落ち込むなどギリギリの状態で営業を続けているローソン。新型コロナウイルスの感染拡大がコンビニに突きつけたものはなんなのだろうか。
竹増社長
「すべての業種、仕事にとっても同じだと思いますが、リアルの企業もネットの企業も、人の営みの上に仕事があり、企業がある。外出の自粛などで人の営みが制限されることは、ローソンにとってもまさに商売が制限されることと同じです。コンビニは自由であれば自由であるほど必要とされる存在なんだなと感じています」
竹増社長
「昭和、平成のコンビニは、均質化した店舗を全国に広げることで大きくなってきました。令和の時代は、『この店は無人でスピーディーに買い物できる店舗』、『この店は地域に特化した弁当だけ置くような店舗』というように、いろんな店があってしかるべき。個店個店、いかにいろいろな花を咲かせるかが、次の成長にかかっていると思います」
「今は生活を支えるために働いてくれている方に感謝し、この感謝が秩序を作って我慢できることにもつながる。そうして乗り越えた先には深まった絆でさらに社会がよくなるはずです」

新時代を生きるには

「コロナショック」で、人々が働く環境、ビジネスをする環境は激変している。新時代を生きる上で、何を考えどう行動すべきか、聞いてみた。
竹増社長
「改めて、自分自身の理念・やりたいこと、どう社会に貢献できるかを見つめ直すいい機会だと思います。企業に勤めている人は、企業の理念に立ち返ってみれば、コロナの中で自分たちがやるべきことが見えてくるのではないでしょうか」
「実務では、テレワークなどをきっかけに、むだな作業があぶり出されてきます。むだだと思ったものはすぐにそぎ落とし、やっぱり大事だなと思うことをもとに仕事をしていく必要があります。コロナが終息したあとは大変チャレンジングな世の中になる。しっかり戦っていけるように、筋肉質になることが大事です。ローソンとしてもそういう思いでやっていきたい」
竹増社長は、新型コロナウイルスが終息したあとを見据え、すでに3つ4つの新たなアイデアを温めているという。コンビニがこの危機をどう乗り越え、成長を果たしていくのか、注目していきたい。
経済部記者
仲沢 啓
平成23年入局
福島局、福岡局を経て
現在、流通・食品業界などを担当