「無給医」が新型コロナ患者の診療に従事 日本医科大病院

「無給医」が新型コロナ患者の診療に従事 日本医科大病院
大学病院で診療にあたっても給与が支払われず、十分な補償もない「無給医」の問題について、東京都内の大学病院で若手医師らによる実態調査が行われ、「無給医」も新型コロナウイルスの患者の診療にあたっている実態が明らかになりました。調査を行った若手医師らは労働基準監督署に調査結果を提出しました。
「無給医」とは、大学病院の若手医師のうち、実習や研究などの名目で診療に当たっていて、受け取るべき給与の全額または大半が支払われていない大学院生などのことです。

今回の調査は、東京 文京区の日本医科大学の大学病院で診療に当たっている大学院生や研修生およそ120人を対象に、有志の若手医師らと日本労働弁護団が共同でアンケート形式で行い、32人から回答を得ました。

それによりますと、回答者の8割にあたる25人が、現在無給、もしくは給料のほとんどを支払われていない「無給医」か、過去に「無給医」だった経験があると回答しました。

このうち4人は大学病院との間に雇用契約がないということです。

残り21人は雇用契約はあるものの、実態とかけはなれた契約も多く、フルタイムで働いているのに契約上は週2日しか働いていないことになっていて、月8万円しか支払われていないという回答が複数ありました。

さらに、回答が得られた「無給医」の半数以上の18人が、新型コロナウイルスに感染した患者の診療にあたっているか、今後診療にあたる予定があると回答しています。

アンケートに回答した医師からは「外来や夜間の呼び出し、コロナ患者の診察もした。これが労働でないなら何なのか」といった不安を訴える声も寄せられたということです。

調査を行った若手医師らは待遇改善や補償を求めていて、労働基準監督署に調査結果を提出しました。

無給医の院生「労災認められるかも不安」

調査にあたった若手医師の1人でみずからも無給医の大学院生は「個人が声を上げると不利益を被るおそれがあり、これまで改善されてこなかった。今後新型コロナウイルスに感染するおそれもあるが、雇用契約が不十分な中で労災が認められるかも不安だ。労働者としての権利が認められるよう国や行政が主導して指導してほしい」と話しています。

日本医科大「労働対価の賃金未払い ないと承知」

日本医科大学は「研究の補助業務としての診療を行うことはあるが、労働の対価として賃金が未払いになっているケースはないものと承知しています。大学院生で新型コロナ診療に携わっている者はいますが、労災補償などには対応しています」とコメントしています。

文科省 雇用契約や保険料支払いなど求める通知

「無給医」について、大学病院を所管する文部科学省は「大学院生などが新型コロナウイルスの患者の診療にあたる機会が今後増えることが想定される」として、4月22日に全国の大学病院長に通知を出しました。

通知では、大学院生などが診療に従事する場合には雇用契約を結んで賃金を支払うなど適切に雇用・労務管理を行うことや、大学院生であっても労働にあたる診療を行っている場合は労災保険の対象となるため、保険料の支払いを徹底することを求めています。