News Up

“ママやめたい!” 外出自粛で広がる悲鳴

ことし2月末に公開された映画「ママをやめてもいいですか!?」。

育児に奮闘しながらも、時に孤独や育児の困難さを感じ「ママをやめたい」と思ってしまったことがある母親(とその家族)の日常を描いたドキュメンタリー映画だ。

NewsUpに2月に掲載した記事では、制作陣や映画に登場する家族の思いを伝えた(文末にリンクあり)。

その後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、映画館での上映は難しくなってしまったが、制作陣のもとには「子どもと家に引きこもり、毎日イライラ」「今本当にママやめたい!」と上映を求める声が寄せられ、急きょオンライン上映が決まった。

外出の自粛などが続く中、家族がお互いのことを思いやりながら過ごすためのヒントは何か、改めて取材した。(ネットワーク報道部記者 有吉桃子)

映画「ママをやめてもいいですか!?」とは

赤ちゃんの夜泣きで夜中に何度も起こされる母親。
それに気付かず眠り続ける夫。
ろくに眠れないまま朝を迎えた母親は、子どもを着替えさせ、ごはんを食べさせ、子どもにごはんや飲み物をこぼされて拭いたり、ちょっと目を離すと子どもがトイレに手をつっこんでいたり…。1日中慌ただしく過ごしてまた夜が来る。

そんな子育て中の“あるある”と、育児に孤独や困難さを感じ、産後うつなどを経験した母親と家族の姿を描いた映画だ。

署名でオンライン上映が決定 寄せられた声は

映画のホームページより
2月末から3月にかけて東京などの映画館で上映されたが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大で上映中止に。

しかし、映画のホームページには、休校や外出自粛が続く中だからこそ映画を見たいという声が続々と寄せられた。
「今まさに子どもと家に引きこもり、毎日イライラ…。子供に怒鳴りっぱなし。私もそんな状況ですし、そんなママがきっとたくさんいると思います。この映画はきっとそんなママを救ってくれる気がします」

「学校も休校中。私はフルタイムで病院勤務。それなのに旦那は在宅ワークで家にいても家事育児は他人ごとは変わらず。母親の負担は変わらず増えるだけ」

「陣痛の時も分娩の時も、病院では感染拡大しないようパパが介入できずにいます。産後うつが増加してしまうのではないかと危惧しています」

「オンラインだと自宅で夫にも見てもらえる。ママの大変さを感じてもらう良い機会だと強く期待しています」
ホームページに寄せられた上映を求める署名はおよそ1400件にのぼり、急きょ、5月末までオンラインで有料で上映されることになった。

オンライン上映を見たママは

5歳と2歳の2人の子どもを育てている志澤佐和子さんは、どうしてもこの映画を見たいと署名をした1人だ。

志澤さんが、これまででいちばん“ママをやめたい”と感じていたのは、2人目の子どもが生まれてから、上の子が幼稚園に入園するまでの1年間だった。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、上の子の幼稚園は休園になった一方、夫はふだんどおり出勤して仕事をせざるをえない状況に。

1人で朝から晩まで2人の子どもを家でみる日々が続き、再びつらい気持ちになることが増えたという。
志澤佐和子さん:
「ずっと一緒なのでかわいいだけじゃ済まないこともたくさんあります。自分がほっとできる時間はまったくなくて、一日中座ることもできないぐらいバタバタしているのでどうしても追い詰められて、自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってしまうと、子どもたちのちょっとしたいたずらとか失敗に怒りすぎてしまったり、イライラしてしまったり・・・。今までは自分のメンタルを保つために外に出て人と話をしたり、子どもたちを連れて電車に乗ってお出かけして気分を変えたりして頑張れていたので、外に出られない、周りの人とつながれないのは子育てにおいて結構つらい状況だと思っています」
志澤さんは、「ママをやめてもいいですか!?」というタイトルを目にしたときに、2人目の子どもを産んだあとの感情と似ていると感じた。

夫は仕事が忙しく、実家も頼れない状況で、何もかも1人で抱えていた自分…。

オンライン上映が始まっていたことを知り、子どもたちを寝かしつけたあとのわずかな時間を使って、泣きながら映画に見入ったという。
志澤さん:
「映画に出演しているママたちが言うことに本当に共感できて、自分自身が感じてきたけれど、なかなか周りの人には言いづらいようなことを言ってくれて、私だけじゃなかったんだなと思い、すごく救われました。頑張っている自分を肯定してもらったようで、自分自身が満たされたので、その分、子どもたちにもちょっと優しく出来ていると思います」

出演者の家族は

映画に登場するサトミさんとケイさん(仮名)の家族。

私(記者)が2月に取材させてもらった時は、夫婦がお互いを思いやりながら、一緒に2人の子どもの子育てを楽しんでいるという印象を受けた。

そんなサトミさんだが、子どもが赤ちゃんのころは、昼も夜も眠れないうえ、休むこともままならず心身を疲弊させていた。

夫のケイさんは家事や育児に協力的だったが、2人の気持ちは時にすれ違い、うまくコミュニケーションを取れない日が続いていた。

そんな中、人一倍真面目なサトミさんは「もっといいママになりたい」「旦那さんに安心して仕事に行ってほしい」と思い詰め、頑張れば頑張るほどつらくなり、たびたび“不安発作”を起こすようになっていた。
その後、サトミさんとケイさんがお互いへの理解を深め、問題を乗り越えていけたのは、映画への出演がきっかけだった。

サトミさんは、自分の経験を伝えることで、同じような思いを抱えている母親たちの役に立ちたいと思って、家庭にカメラが入ることを承諾した。
インタビューを受ける中で、サトミさんは、夫にうまく頼れずに抱え込んでしまっていたこと、ケイさんは、妻が何を求めているのか聞く時間を作れていなかったことに気がついた。

それからは「夫婦が同じだけの責任を負う」という考え方を共有し、協力し合って子育てに励んでいる。

新型コロナウイルスの影響は?

そして今、学校の休校や保育園の休園、外出の自粛で、多くの家庭が我慢を強いられている。サトミさんとケイさんの家族はどう過ごしているのか、ビデオ通話のアプリを利用して、改めて取材させてもらった。

夫婦の上の子が通っている小学校は休校に。下の子の幼稚園からは登園をなるべく控えてほしいと要請され、子どもたちは行き場を失った。

サトミさんが仕事をセーブしたり、実家を頼ったり、ふだんどおり職場に出勤しているケイさんが、時には子連れで出勤したこともあったそうだ。
サトミさんは子どもと家にいる時間が急激に増えても、以前のように「ママをやめたい」と思うことはなく、一緒にうどんを小麦粉から作ったり、おやつを作ったり、遊んだり、楽しみながら過ごせているそうだ。
サトミさん
「あの頃の自分だったら本当につらかったかもしれないけど、私、今家に子どもといてこんなに楽しく思えるって、自分でも変化を感じました。やっぱり『やらなきゃ』とか『こうじゃなきゃ』って、自分で自分を追い込むようなことが減って、できないことはできないって自分でも認められて、前は旦那さんに頼ったら罪悪感を感じていたんですけど、今は頼れてうれしいと思えるし、子どもたちにも自分の素直な気持ちを言うこともできるようになりました」
そして、外出を自粛せざるをえない今の状況の中で、つらい思いをしている親たちに映画に込められたメッセージが届けばと願っている。
サトミさん
「外出の自粛などで家族が家にいる時間が増えてDVや虐待の増加が心配されるというニュースを見て『あっ』と思いました。そういう人にこそ映画を見てほしいし、赤ちゃんを抱っこひもに入れてるママさんを見かけると、すごく不安だろうなとか、すごい頑張ってるなと思います。もしかしたらそのママさんはつらい気持ちを抱えているかも知れないけど、赤ちゃんを抱っこしている姿を見て、私も励まされるし頑張ろうって思えるので、映画の中にも出てくることばですが、『1人じゃない。私もあなたも1人じゃないよ』って伝えたいです」
ケイさん
「家にご主人がいるとけんかも増えるというような話も聞きますが、この映画が家族のことを話すきっかけになるんじゃないかなと思います。僕らも映画の撮影を通してお互いに話をするきっかけをもらったようなところもあるのですが、そういうきっかけになったらいいと思います」

家族の大切さ 見つめ直して

「私だけじゃない。みんな頑張ってお母さんをやっているんだ」

そう考えられるだけで少し気持ちが楽になるのかもしれない。

新型コロナウイルスの脅威が続く中で、家にこもりがちになり、ストレスがたまる困難な状況だからこそ、みんなが、家族のあり方や子どもを育んでいくことの大切さを見つめ直していけたらいいと感じている。

特集

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。