「お取り寄せ」が人気 売り上げ10倍の日も 外出自粛の影響

「お取り寄せ」が人気 売り上げ10倍の日も 外出自粛の影響
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための外出自粛が呼びかけられる中、全国各地の特産品などが「お取り寄せ」できるサイトでは1日の売り上げが多い時で10倍になるなど、利用が急増しています。
東京でグルメサイトを運営する会社では、食の産地から仕入れた食材を紹介してネットで販売していますが、外出自粛が呼びかけられた先月中旬以降、アクセス数が伸び、1日の売り上げが去年と比べて10倍に増える日もあったということです。

25日、都内の集荷場には、サイトに掲載されている野菜や果物、魚介類の箱が全国各地から次々と届き、社員らが発送に向けてひとつひとつ丁寧にこん包していました。

このうち、静岡県産のメロンは、入学式などの祝い事の贈答品の需要が減少し、通常の半値にあたる1個2500円で販売され、1か月で6000個の注文があったということです。

このほか、北海道産のウニは物産展の中止などから通常よりも安く販売されこの1か月で3千箱が売れたほかこれまで扱いのなかった生ワサビが出品され、1か月で100キロの注文があったということです。

サイトを運営する「食文化」の萩原章史社長は、「大型連休中に外に出かけたい気持ちもあると思うが、全国各地のおいしいものを家に『お取り寄せ』すれば生産者の方への支援にもなる。家で食べて元気で健康で過ごして欲しい」と話しています。

全国各地の食の現場を「お取り寄せ」で支える

東京・新宿の森彩さんと夫の遼樹さんは、新型コロナウイルスの感染拡大で会社が在宅勤務になり、自宅で一緒に食事する機会が増えたことから、インターネットを通じて全国各地の食材を取り寄せて料理しています。

この日は、生産農家に注文して届いた高知県の地鶏「土佐ジロー」のとり鍋と手羽先焼きを楽しみました。

森彩さんは、「お取り寄せは、外出自粛で出かけられないので、家にいながら全国各地のおいしいものを食べることができる上、注文することで生産者の人たちを応援できると思いました。事態が収束したら旅行で訪れ、その土地で食事を楽しみたいです」と話していました。

森さんたちはことしの大型連休中、北海道を訪れる計画でしたが、旅行を取りやめ、代わりに北海道からアスパラガスなどの食材を注文し、自宅で旅行気分を味わうことにしています。

地鶏生産農家が窮状をSNS発信 県内外から注文相次ぐ

高知県東部の山あいにある、安芸市畑山地区の小松圭子さんは、高知県の地鶏「土佐ジロー」を生産しています。

土佐ジローは、十分な期間を設けて飼育するなど認定を受けた生産者だけが飼育・販売できる高知県の地鶏で、脂質が少なく、うまみとコクが強い肉質が特徴です。

小松さんは、およそ5500羽を飼育していますが、経営する土佐ジローを出す宿の営業を自粛している上、これまで肉などを卸していた飲食店も休業に追い込まれていて、現在、収入はほとんどなく、厳しい状況が続いているということです。

小松さんは先月、自身のSNSで状況を発信したところ、インターネットサイトで販売している土佐ジローの肉や卵などの注文が相次ぎ、この収入が頼みの綱となっているということです。

サイトへのアクセスも例年の8倍に当たる1600人を超える日もあり、注文に際して「高知に泊まった気分で食べたいです。頑張ってください」といった励ましのメッセージを添える人もいるということです。

小松さんが暮らす地区はおととしの西日本豪雨で道路が寸断されて孤立し、宿や鶏の加工場がおよそ1か月間休業しました。

小松さんは「豪雨の時は『道が復旧すればなんとかなる』と前向きになれたが、今回は収束が見えず毎日が苦しいです。家にいるとストレスがたまると思いますが『土佐ジロー』を取り寄せて、応援してもらえたらありがたい」と話していました。

ネット活用 食の現場支援の動き広がる

全国の商工会議所では、需要が落ち込んだ食品の販売につなげようと、在庫を抱えた企業などの商品を紹介するサイトを相次いで開設しています。

このうち北海道では札幌商工会議所が、全国の百貨店などでの開催が予定されていた北海道の物産展が軒並み中止となったことや、観光客の減少などから、先月、在庫が過剰となった店舗などの商品を紹介する「緊急在庫処分SOS!」と名付けたサイトを開設しました。

サイトでは、およそ280の店舗のジンギスカン用の羊の肉やイクラなどの商品が紹介され、関心があれば、それぞれの店舗のサイトなどで購入することができます。

商工会議所のサイトには「苦渋の決断で長期間休業することになった」とか、「観光地からお客さんの姿が消えて、全く商品が動かない」といった店舗の切実なメッセージも紹介されています。

また、「オンライン物産展」と名付けて、地域の特産品をインターネット上で販売する取り組みも広がっています。

このうち、岐阜県飛騨市では市の観光協会などが実行委員会を結成し、クラウドファンディングで一般の人から資金を募り、そのお返しとして地元の特産品を届ける「新型物産展」というプロジェクトを行いました。

地元の食品加工会社など14社が参加して名産の飛騨牛や菓子などをお返しとして提示したところ、今月12日までのおよそ1か月間で合わせて238万円余りが集まったということです。