新型コロナで受け入れ規模縮小 発達障害などある子ども 家族は

新型コロナで受け入れ規模縮小 発達障害などある子ども 家族は
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新型コロナウイルスの感染拡大で発達障害などのある子どもや、その保護者が施設での受け入れを制限され、苦しい状況に追い込まれるケースが出ています。
東京 足立区の「うめだ・あけぼの学園」は、発達の遅れや障害のある就学前の子どもとその保護者を中心に支援を行っていますが、緊急事態宣言を受けて、今月中旬からは子どもの受け入れについては、規模を縮小せざるをえなくなっています。

しかし、外出自粛によって子どもに大きなストレスがかかることが想定されるため、週1回の登園日を設けています。

今月24日には、自閉症や生まれつき筋力が弱いなど障害のある子どもたちが登園し、専用の遊具を使って元気に遊び回っていました。

子どもたちはトランポリンに乗って飛んだりはねたりして笑顔を見せていましたが、保護者からは、施設に通えなくなって寝る時間が遅くなったり、いたずらが増えたりして、負担が大きくなっているという声や、これまで積み上げてきた療育の効果が消えてしまうのでないかという不安の声が聞かれました。

施設では子どもたちのペースが崩れないように、オンライン会議システムを使って、保護者との個別相談や療育プログラムの動画配信を始めています。

運動障害がある3歳の娘の歩行訓練の方法について、理学療法士からオンラインで助言を受けた35歳の母親は「特殊な成長過程を歩んでいる子なので、私一人では、『この子に何をしてあげられるんだろう』と悩んでしまう。プロから直接アドバイスをいただくことで、成長が見られるので、すごくありがたいです」と話していました。

「これが続いてしまうと…」

原田紀恵さん(41)は「うめだ・あけぼの学園」に4歳の次男、智伸くんと、3歳の三男、義伸くんを通わせています。

次男の智伸くんは、対人関係を築くのが苦手な発達障害と診断され、ことばが出にくいことから施設に週5日通って専門の職員から療育を受けてきました。

2人とも、施設にある訓練用の遊具で遊ぶのが日課でしたが、自宅で過ごすことが増えたことで寝る時間が遅くなり、いたずらが増えていて、家族の負担も大きくなっているということです。

原田さんは「遊んで帰ってくるという習慣がなくなると、寝る時間が遅くなってしまう。最近いたずらがひどくて、電気をつけたり消したりして反応を見て笑うとか、部屋の鍵を開けて脱出するようになって、繰り返されるとこちらもイライラしてしまうこともあります」と話していました。

そのうえで、終息の見通しが立っていないことについて「家族としても精神的にきついです。これが続いてしまうと、本当にどうなってしまうのだろうと思います」と話していました。

「積み上げたもの崩れる不安」

狩野香織さん(34)は「うめだ・あけぼの学園」に4歳の次女の結さんを通わせています。

結さんは、ことばの発達に遅れがあるほか、生まれつき筋力が弱く、去年の春から週5日、施設に通って専門の職員から支援を受けてきました。

1年間、施設でことばを引き出したり、器具を使って筋肉を動かしたりするトレーニングを継続して受けたことで、効果を実感していましたが、それが今回、なくなってしまうのではと不安を感じています。

狩野さんは「施設でやってきたのと同じことを自宅でするのは努力しても無理なところがあります。せっかく1年間積み上げてきたものが崩れてしまう感じがして、それがいちばん恐怖です。同じことを繰り返すことが、発達が遅い子どもにすごく効果的だということを身をもって目の当たりにした1年だったので、それがすぱっと切れてしまい、すごく不安に感じます。普通の子がすぐ切り替えて、ぱっと戻せる生活習慣も、発達に問題を抱えている子は倍以上の時間をかけてやっと戻せると思っている」と話していました。

緊急事態宣言を受けて施設に通えるのが週1日だけになり、家にいる時間が多くなっていますが、時々、衝動が抑えられなくなることがあるといいます。

狩野さんは「ことばが少し単語で出るようになって、外に出かけたい気持ちを表せるようになっている。その気持ちに応えてあげることが発語の発達にもつながると思うので、すごく心苦しいです。2週間であれば何とかやっていけるが、これが3週間、4週間、1か月以上になってくると、子どもの行動、親たちにも影響があると思います」と話していました。

加藤正仁園長 「保護者含めたサポートが大切」

学園の園長で、全国児童発達支援協議会の会長を務める加藤正仁さんは保護者を含めたサポートが大切だと訴えます。

加藤さんは「施設に通っていた子どもが、ずっと家にいるようになると、親御さんにも大変なストレスがかかる。発達のためには、安定した療育環境が重要な要因になる。保護者が混乱していると子どもはいち早く気付いて発達にも影響が出てしまうので、子どもと同時に親をサポートしていくことが大切になる」と話していました。