全国高校総体 中止決定 新型コロナウイルス感染拡大で

全国高校総体 中止決定 新型コロナウイルス感染拡大で
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、高体連=全国高等学校体育連盟は、ことし夏の高校スポーツの総合大会、全国高校総体を中止することを決めました。全国高校総体の中止は、昭和38年に始まって以来初めてです。
ことしの夏の全国高校総体は、東京オリンピック・パラリンピックの当初の開催時期を考慮して、30の競技を21の府県に分散させ、一部の競技を除いて8月10日から24日の間に開かれることになっていました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、高体連は大会の開催を前提に準備を進めていましたが、緊急事態宣言が全国に広がり県やブロック単位での予選となる大会が行えない地域が相次いだことで対応を迫られていました。

高体連は16日午後、臨時の理事会を開き、選手や大会関係者の安全を考慮して全国高校総体の中止を決めました。

全国高校総体の中止は、昭和38年に始まって以来初めてです。高体連は午後6時半すぎから会見を行い、国内の新型コロナウイルスの感染者が1万人を大きく超え収束には相当な時間がかかると言われていること、競技中だけでなく移動や宿泊などによる感染リスクが大きく選手をはじめ大会関係者の安全や安心を確保することが難しいこと、学校の休校で十分な練習時間を確保するのが困難であることなどを理由に挙げました。

高校スポーツでは、高体連の加盟団体がことし3月に開く予定だった全国大会がすべて中止になったことに加え、今回、全国高校総体も中止になったことで、3年生にとっては「最後の夏」を迎えられない厳しい現実を突きつけられる形となりました。

一方、夏の全国高校野球については高野連=日本高校野球連盟が、来月20日に開く大会の運営委員会で審議するということですが、今回の中止の決定が影響を及ぼすのではないかという指摘も出ています。

高体連 岡田会長「命を守ることを選んだ」

全国高校総体の中止を発表した会見で高体連は、命を守る決断だったことを強調しました。

この中で岡田正治会長は「インターハイは高校生最大のスポーツの祭典として夢の舞台であり、中止の判断の向こうには大きな悲しみと目標を失った高校生の姿があることは痛いほど承知している」と選手たちをおもんぱかったうえで「高校生たちの安全安心、命を守ることを選んだ」と述べ、命を守る決断だったことを強調しました。

そのうえで高校の運動部の生徒たちに対して「これまで取り組んできた練習はむだにはならない。仲間と協力し、共に汗や涙を流した一日一日の取り組みが掛けがえのない財産になる。生涯、スポーツに関わっていってほしい」とメッセージを送りました。

高体連では各都道府県の高等学校体育連盟に対して、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し安全に部活動を行える状況となった場合には、3年生の成果の発表の場や大会などを設定できないか検討してほしいとしています。

奈良隆専務理事は「時期や会場などの関係からインターハイに代わる全国大会を実施することは不可能だと考えている。地域ごとに事情は違うため一律にはできないが、できるかぎりお願いしたい」と話しました。

一方、今大会は21の府県での分散開催が予定されていたため、高体連は不足する費用の一部としてインターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングで寄付を呼びかけ、今月15日現在で7256万円が集まっていました。

寄付金の使いみちについて奈良専務理事は「きょうの段階では協議する時間がなかった。印刷物など、すでに支出している部分も踏まえ検討したい」と話しました。

全国高校総体 30競技で高校日本一を決める大会

全国高校総体は高校スポーツ最大の祭典で「インターハイ」とも呼ばれ、ことしの夏は30の競技でそれぞれの高校日本一を決める総合大会です。

かつては各地で競技ごとに全国大会が行われていましたが、57年前の昭和38年に高体連=全国高等学校体育連盟が大会を統合しました。会場は都道府県ごとの持ち回りとなっていましたが、近年は負担を軽減するため全国9つのブロック単位での開催となり、準備や運営には地元の高校生も関わって地域を挙げて盛り上げます。

例年、全国6000校以上から選手が参加し、第1回大会でおよそ2万人だった選手数は昨年度、およそ2万8000人に増えました。

オリンピックに出場するトップアスリートが参加する競技もあって競技力の向上にも大きな役割を果たしています。

競技ごとの選手数を見ると、最も多いのは陸上、次いで水泳ですが、それに続くのがソフトテニスやソフトボールとなっています。

東京オリンピックと時期や地域が重なる予定だった、ことしの夏は21の府県の広域開催で、30の競技に推計で選手と指導者だけでおよそ3万8000人、観客は延べ70万人の来場が見込まれていました。

ことしの総体 競技会場や宿泊施設確保など準備険しく

ことしの全国高校総体の準備は険しいものでした。

大会は近年、全国9つのブロックで順番に開催され、ことしの大会は当初、群馬、茨城、栃木、そして埼玉の北関東の4県を中心に開催される予定でした。

東京オリンピック・パラリンピックを考慮して、大会の日程を東京オリンピックの閉幕直後の8月10日からパラリンピックが開幕する直前の24日までとしましたが、それでも競技会場や、選手・関係者が宿泊する施設の確保が難しいという現実に直面します。

このため高体連は急きょ去年になって、30の競技を北は東北から南は九州まで全国21の府県に分散させて開催する異例の決定をしました。

そこで課題となったのが、分散開催による費用の問題です。通常であれば開催地が8割程度を負担しますが、分散開催のため高体連も費用を負担する方針を示し、必要なおよそ7億円を目標に寄付を募りました。

しかし、今月15日現在で集まった寄付は目標の10%余りの7256万円にとどまっていました。