ステイホームの陰で 居場所を失う少女たち 新型コロナ

ステイホームの陰で 居場所を失う少女たち 新型コロナ
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新型コロナウイルスの感染拡大で「ステイホーム」として外出の自粛が求められる中、自宅に居場所がなく、学校も休校となるなど外で過ごす場所も失い、孤立を深めているという少女たちの相談が、支援団体に相次いで寄せられていることがわかりました。SNSで知り合った男から「家に泊めてあげる」と誘い込まれるケースもあり、支援団体は少女らが犯罪に巻き込まれる危険性があると警戒を強めています。
東京 渋谷区のNPO法人「BONDプロジェクト」には、新型コロナウイルスの感染が広がる中で、さまざまな悩みを抱えた少女や若い女性からの相談が寄せられています。

その中で目立つようになっているのが、外出の自粛が求められてストレスをためた親などから強く当たられたりして、自宅に居場所がなく、学校も休校となるなど外で過ごす場所も失い、孤立を深めているというものです。

感染拡大の影響で、仕事がテレワークになった母親と暮らしているという17歳の女子高校生からは、「母親が物を投げたりどなったりして、しんどくて、ずっと同じ家にいるのが限界だ」という悲痛な叫びが寄せられていました。

さらにSNSで知り合った男から「家に泊めてあげる」と誘い込まれるケースもあり、性的な行為を強要されたという相談もありました。

支援団体では、居場所をなくした少女たちが犯罪に巻き込まれる危険性があるとして、ネット上でパトロールを行って警戒を強めています。
「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさんは、「外出しないでくださいという状況だが、家にいられない子からすると、ますますせっぱ詰まるのだと思う。犯罪に巻き込まれてほしくないと思うが、SNSでつながった場合、本当に潜って見えなくなってしまうので、私たちはつながり続けていくしかないと思っている」と話しています。

18歳女性「居場所ない…」

札幌市に住む18歳の女性は、外出の自粛が求められる中、親から強く当たられることが増え、自宅に居場所がないと感じ、支援団体に相談を寄せたということです。

今月から大学に通う予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で休校になったほか、カフェなども休業していて、自宅の外で過ごせる居場所がなくなったということです。

こうした中、SNS上で居場所を求める書き込みをしたところ、「家に泊めてあげる」と男に誘われ、睡眠薬を飲まされて性的な行為を強要されたり、首を絞められたりしたこともあったということです。

支援団体の「BONDプロジェクト」では、相談が寄せられた場合、本人に会って支援の方法を探っていますが、今は新型コロナウイルスの影響で直接会うことが難しいため、18歳の女性とはテレビ電話で話す形で、SNS上のやり取りの危険性を伝えていました。

18歳の女性は「親は妹には普通に接しているのに、私にだけ嫌な態度を取ってきて、家にいるのがしんどい。外で過ごすことができていた飲食店も閉まっていて、居場所がない。家にいたくないとかいうことをSNSで書き込むと、相手から返信がすぐに届くし、私のことをすごく気にしてくれるから。ずっとこの生活が続くのかと思うと嫌だけど、今はどうしようもない」と話していました。

ネットパトロールを阻む問題も

「BONDプロジェクト」では、居場所のない少女たちがSNS上で犯罪に巻き込まれるのを防ごうとネットパトロールを進めていますが、新型コロナウイルスの感染拡大が進む今月は、その取り組みを阻む問題が起きているということです。

ネットパトロールでは、「家に泊めてあげる」と居場所がない少女らを誘い込む書き込みなどを見つけると、悪質なアカウントを凍結する海外の専門機関に通報しています。
これまでは通報に対してすみやかにアカウントが凍結されてきましたが、感染が広がりをみせる先月は凍結される割合が落ち込み、今月は26件通報したものの1件も凍結されていないということです。

支援団体の担当者は「通報が3月、4月に入って多くなり、手が回っていないのではないかと感じている。ただ、悪質なアカウントは今も野放しで女の子に声をかけ続けていて、本当に深刻な状況だと思う。通報を強化しているのは、できるだけ犯罪につながる可能性を小さくしたいと思うからで、今の現状は怖いし、焦りを感じる」と危機感を訴えていました。

支援施設も感染 入所できず

新型コロナウイルスの影響で、支援団体が保護した女性たちを預ける施設の中には、受け入れが難しくなっているところもあるということです。

関東地方に住む女子大学生は、幼い頃に両親から虐待を受けたということですが、感染拡大にともなって親のテレワークが多くなり、自宅で一緒に過ごすことに息苦しさを感じているということです。

今でも親から「生きている価値がない」などと言われることもあり、自傷行為をしてしまうこともあるということです。

女性は親から離れて生活できる支援施設に入所する予定でしたが、先月下旬、ほかの施設で新型コロナウイルスの感染者が出たことで、そこで暮らす人たちを女性が入所する予定だった施設に避難させるため、入れなくなったといいます。

施設の担当者からは「今はどこの施設も受け付けていない」と言われ、その後の連絡もないまま1か月がたつということです。

女性は「父親の在宅ワークも増えてきて、どんどん逃げ場がなくなっていく。もう自宅にいるしかないと自分で言い聞かせて耐えていますが、耐えきれなくなったときに自分を傷つけてしまいます」と話していました。