テレワーク 働きぶりの“見える化” 導入広がる 新型コロナ

テレワーク 働きぶりの“見える化” 導入広がる 新型コロナ
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、テレワークを導入する企業が増える中、会社にいないため、働きぶりを直接、見ることができない社員の勤務時間や勤務状況を管理するシステムの導入が広がっています。
都内のIT関連企業「アイエンター」は、先月から230人の全社員を対象にテレワークを導入しました。テレワークを導入する多くの企業が悩むのが、社員が自宅で本当に働いているのか、仕事が滞りなく順調に進んでいるのか、働きすぎになっていないか、見えなくなることです。

この企業がテレワークを始める時に導入したのが、パソコンのクリック一つで勤務時間が管理できるシステムです。パソコンのデスクトップ上に、「着席」「退席」というボタンがあり、テレワークを行う社員が業務の開始時と終了時にそれぞれクリックするだけで、自動で日々の勤務時間を管理してくれます。

また、昼食などで休憩に入るときも、そのつど、「退席」と「着席」のボタンをクリックすることで、休憩時間も1秒単位で記録されます。

記録された内容はシステム上で管理され、会社の上司は、部下が今働いているのかどうかや、月の勤務時間がどれくらいになっているかを確認できます。

さらに、このシステムでは、社員が「着席」のボタンを押して仕事をしている間の、パソコンの画面がランダムに撮影され、上司に送信される仕組みもあります。いつ画面が撮影されるか社員には分かりません。

会社では、自宅で働く社員に一定の緊張感を持ってもらう効果があると考えています。また、上司は送信されてくる画面を見れば、部下が今どんな作業をしているか把握ができます。
この企業で働く直井俊樹さんは、7人の部下をかかえるグループのリーダーです。テレワークを始めた当初は、部下の顔が見えなくなってコミュニケーションが難しくなることを心配していましたが、システムを通じて働きぶりが見えるため今のところテレワークは順調だと受け止めています。

直井さんは「ボタンを操作するだけで、勤怠をつけられるので簡単です。チームのメンバーの作業状況も管理でき、働きすぎている人はいないかというのも確認できるのが非常に便利で、障壁なくテレワークができていると思う」と話していました。

テレワーク 課題は社員の評価

新型コロナウイルスの影響でテレワークが長期化していった場合に課題になるのが社員の評価です。テレワークで仕事のしかたが変わるのに対応して社員にどんな目標を与え、どうやって業績や成果を評価するか考え直す必要も出てきます。

人事評価のシステムを提供している都内のITベンチャー企業は、ことし2月からテレワークを導入する場合の課題について、オンラインセミナーを開いています。参加した中小企業からは、社員の働く姿が見えない中、どう評価すればいいかという悩みが増えているといいます。

そうした悩みに対してこの企業が提供しているのが、AI=人工知能を使った人事評価のシステムです。システムは社員一人一人の売り上げや作業量などの目標を上司が設定。社員は与えられた目標をどう達成するか書き込みます。それをAIが添削し、評価しやすい数値目標などを書き込むよう促す仕組みです。

システムを通してテレワークで、離れた上司と社員が目標を共有し、成果を意識しながら働き目標の達成度合いを定期的に評価していきます。
人事評価のシステムを提供する会社「あしたのチーム」の堤雄三取締役は、「今まで物理的に自分の近くにいて、仕事をしているかどうか確認できたが、物理的にそれが見えない中で、社員は自分自身がきちんと認められているか、雇用側は社員がきちんと仕事しているだろうかと、ストレス抱えた企業からの相談が増えている。経営者側と従業員側のつながりがすごく弱くなる。物理的な影響が出ているので、つながりを担保する仕組みとしてもすごく今、重要な役割を果たすと思っている。テレワークというのが、中小企業において、人事制度をきちんとやらないといけないというきっかけになっていると思う」と話していました。

専門家「テレワーク 今は過渡期」

「リクルートマネジメントソリューションズ」の武藤久美子シニアコンサルタントは、「新型コロナウイルスの厳しい状況の中、とにかくやってみようというのが今の現状だ。テレワークを導入した時点では、企業は細かく社員を管理しようという心理が働きがちだが、今は過渡期で、今後、このぐらい見ておけば大丈夫という折り合いがつけられるようになってくるのではないか。互いが自分たちの状況を発信したり、周囲に気軽に話せる環境が大事だ」と話していました。

そのうえで、武藤シニアコンサルタントは、「職種や業種によっては難易度の違いはあるが、テレワークの未来は加速していくだろう。これまでフルタイムで働けなかった人や通勤が難しかった人など、いろんな制約があった人が仕事に参加できたり、時間や地理を超えたコミュニケーション手段が多様化することで、いろんな人と協同で仕事ができるようになるだろう」と話していました。

さらに、「ポストコロナでは働き方や人のつながり方、ビジネスのつながり方、作り方が変わり、成果を改めて定義しないといけない日がくるのではないか。多くの企業でもう一度見直す必要があると思う」と話し、企業にとっては感染拡大を防ぐために始まったテレワークが、仕事の進め方や評価の仕組みの見直しにつながるという考えを示しました。