工事中断 3000か所以上 作業員の雇用に影響の懸念 新型コロナ

工事中断 3000か所以上 作業員の雇用に影響の懸念 新型コロナ
新型コロナウイルスの感染拡大で大手建設会社が相次いで工事の中断を決める異例の事態になっています。中断の対象となる現場は全国で少なくとも3000か所に上り、事態が長期化すれば下請けや中小零細企業の作業員の雇用に深刻な影響を与えかねないとの懸念が強まっています。
建設業界では、現場の社員が新型コロナウイルスに感染して自宅療養中に死亡したことなどから、大手建設会社がビルやマンションなどの工事を相次いで中断する方針を打ち出しています。

NHKが大手や準大手などのゼネコン20社に問い合わせたところ、中断の対象となっている現場は全国で少なくとも3000か所に上ることが分かりました。

このうち東京・中央区で建設が計画されている12階建てのオフィスビルは来年の3月末の完成を目指し、清水建設が工事を進めていましたが、発注者との協議の結果、来月6日まで中断することになりました。

現場では作業員の検温や朝礼の分散など感染防止対策を徹底していましたが、緊急事態宣言が出たあと中断が決まったということです。

懸念される 作業員の雇用

業界団体によりますと、建設現場で働く人は全国で330万人余りに上り、そのほとんどは中小零細企業や「ひとり親方」と呼ばれる個人事業主とされています。

工事の中断によって一時的に仕事がなくなった場合、元請けの建設会社などから下請けへの補償がなければ資金繰りが悪化し、作業員の賃金が支払えなくなるほか、雇用を維持できなくなるおそれもあります。

こうしたことから国土交通省は、元請けの大手建設会社などに対して「下請け企業などの事業の継続に支障が生じることがないよう十分に配慮してほしい」と呼びかけています。

下請け企業「中断 理解できるが…」

工事中断の影響を受けている下請け企業は大手建設会社の判断に一定の理解を示す一方、事態の長期化を懸念しています。

横浜市神奈川区の「貴和建装」は、ビルやマンションなどの内装工事を手がける従業員3人の会社です。大手建設会社などから仕事を請け負っていて、秋ごろまで仕事の予定が埋まっていました。

しかし首都圏を中心に緊急事態宣言が出されてから工事の中断や中止の連絡が相次ぎ、先の予定がすべて白紙になってしまったということです。

そこで知り合いのつてを頼って、アパートの外壁の塗装など屋外でできる工事を融通してもらいましたが、いずれも数日で終わる仕事のため、まもなく収入を得られなくなるということです。

従業員の賃金は出勤日数に応じて支払われる仕組みとなっていて、仕事が少なくなればその分賃金も減ってしまうため、事態が長期化すれば従業員の生活にも深刻な影響が出るといいます。

岩井耕治代表は「元請けも作業員の命を守らねばならず、中断の決断については理解できます。ただ中断したとしても従業員を食べさせていかないといけないし、会社も残していかなければなりません。本当に以前の仕事の状況に戻れるのか、先が見えず、不安です」と話しています。

専門家「産業全体の存続 考えた支援を」

建設業の雇用の問題に詳しい芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授は一連の工事中断の動きについて「建設現場は屋外というイメージがあるが、休憩所やロッカールーム、高層の建物だと多くの職人がエレベーターで移動することになり、典型的な3密の状態が生じてしまう。人命を守るという観点から、元請け企業の現場を止めるという判断も理解できる」と話しています。

一方で雇用への影響について「建設現場は小さい所でも数十人、大きな現場だと1000人を超えるような人が働いていて、一つ一つの現場が1つの会社のようなものだ。それが中断すると大勢の働く場が失われてしまう。現場には日当払いの職人も多く、現場が止まったとたんに収入が途絶えるという事になり、非常に大きな問題だと思う」と指摘しています。

そのうえで「新型コロナによる工事の中断が長引くと、中小零細の会社の経営が厳しくなってしまう。技能を持った会社がなくなってしまうと、社会インフラや建物の品質、後のメンテナンスなど、いろいろな面で問題が出てきてしまう可能性がある。元請け企業も非常に厳しい状況ではあるが、職人の方々は大事な相棒であり経営の基盤でもあるので、この産業全体の存続を考えた支援をしていかなければならないと思う」と話していました。