米ニューヨーク州 約14%に抗体確認と発表 新型コロナ

米ニューヨーク州 約14%に抗体確認と発表 新型コロナ
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アメリカ、ニューヨーク州のクオモ知事は新型コロナウイルスの抗体検査を3000人に実施したところ、およそ14%に抗体が確認されたと発表しました。ただデータは限定的だとして、実態の把握には検査の拡充が必要だとしています。
全米で感染拡大が最も深刻なニューヨーク州では、州全体でどれだけの人が感染し抗体を持っているかを調べるため、今月20日から抗体検査を始めています。

これについてクオモ知事は23日の記者会見で、初期段階の検査の結果、無作為に選んだ3000人の13.9%に抗体が確認されたと発表しました。

ニューヨーク州では22日の時点で26万3000人の感染が確認されていますが、クオモ知事は州全体の人口から計算した場合、13.9%は270万人にあたるとして、感染が把握されているより広がっている可能性を指摘しました。

ただクオモ知事は「検査は暫定的で限定的だ」としていて、実態の把握には検査の拡充が必要だとしています。

またWHO=世界保健機関は先に抗体検査の技術は十分に検証されておらず、抗体自体に関しても不明な点が多いという認識を示しているほか、専門家からは検査の詳細がわからず、今回のおよそ14%という割合はこれまでの研究結果に比べて高すぎるという見方も出ています。

一方、クオモ知事はこの日の記者会見で、新たな入院患者は減る傾向が続いていたものの、この3日間はおよそ1300人とほぼ横ばいになっていると指摘したうえで、「入院患者数が減らなければ議論は始まらない」と述べて、外出制限の緩和と経済活動の再開の判断にはまだ早すぎるという考えを示しました。

「高すぎる割合」 専門家から疑問の声

ニューヨーク州のクオモ知事が抗体検査で3000人のおよそ14%に抗体が確認されたと発表したことに関して、マウントサイナイ医科大学で抗体検査を開発しているフロリアン・クラマー教授はツイッターで「高すぎる割合だ。検査対象の人の情報や検査の正確性を明らかにしてほしい」として、これまでの研究結果に比べて感染者の割合が高いとして、検査の詳細を公表するよう求めました。

ニューヨーク州は抗体検査について「州の衛生研究所が開発した検査を使用した」と公表していますが、詳細は明らかにしていません。

抗体検査 社会での感染状況を知るのに有効

抗体検査はウイルスなどに感染した後にできる「抗体」と呼ばれるたんぱく質が血液中にあるかどうか調べる検査で、感染した経験があるかどうか分かります。

ウイルスなどの異物が体に侵入した際には、血液中にある白血球の一種の免疫細胞が抗体を大量に作り出して異物を排除し、病気になるのを防ぎます。

血液中に抗体があることが分かれば、過去に感染した経験があるということになり、多くの人について調べることで、社会の中でどれくらいの人が感染したことがあるか知るのに有効だと考えられています。

例えば、2012年に初めて確認されたコロナウイルスの一種で、重い肺炎を引き起こす「MERS」の場合、WHOのデータでは感染したのはおよそ2500人で、少なくとも850人が死亡したとされていますが、サウジアラビアで行われたおよそ1万人を対象にした調査では、0.15%の人が抗体を持っていたとされ、実際にはさらに多くの人が感染していた可能性が示されています。

一方で、検査で検出できる程度にまで抗体が作られるには一定の時間がかかることから、検査の時点で感染しているかどうかは分からないとされ、感染の有無を調べる手段となっているPCR検査のように使うことは難しいとされています。

また、新型コロナウイルスの抗体があった場合に、再び感染するのを防げるかどうかについては、まだはっきりと分かっていません。

日本感染症学会の理事長で、東邦大学の舘田一博教授は、「アメリカのニューヨーク州で行われた抗体検査では多くの人が気づかないうちに感染し、いつの間にか感染が拡大することが示唆されている。国内でも感染の実態を知ることは対策を検討するうえでも重要で、今後、抗体検査の必要性は増すと考えられる」と話しています。