オンライン診療 日本でも導入進む コロナウイルス対策

オンライン診療 日本でも導入進む コロナウイルス対策
k10012402901_202004240718_202004240720.mp4
電話やインターネットを使って医師が離れた場所にいる患者を診ることができる「オンライン診療」。日本でも新型コロナウイルスに感染するリスクを減らす取り組みの1つとして導入が進んでいます。
国はことし2月末から複数回受診しているかかりつけ医でこれまでと同じ薬を処方してもらう場合、事前の診療計画がなくても電話などでの診療を認めることにしました。

さらに今月からは、初診では医師による対面診療が義務づけられていた従来の決まりが見直され、初回の診療からオンラインでできるようになりました。

ただオンライン診療についてはまだその存在や受診方法をよく知らない人が多いのが実態です。新型コロナウイルスの感染が広がる中、持病があっても感染をおそれてこれまでどおりの通院をためらう高齢者も出ています。

厚生労働省はオンライン診療を実施している全国の医療機関を取りまとめて近く公開することにしています。

電話診療を始めた病院では

東京 江戸川区にある「森山記念病院」では、外出の自粛が広がった先月6日から電話による診療を始めました。病院では患者からの予約の際に診察券の番号などを聞いてこれまでの受診状況を確認し、電話による診療の日を決めて当日、かかりつけの医師が対応します。

この日、内科を担当する野池博文医師は、心臓に疾患のある70代の男性を電話で診療し、胸に痛みや圧迫感がないかや血圧や脈拍の状況を聞き取り、これまでと症状が変わりがないことを確認していました。そして、総合的な所見から病院に来る必要はないと判断し、これまでの薬の処方箋を出しました。

患者は、処方箋が送られる自宅などの近くの薬局に薬を取りに行くことができます。

野池医師は「患者さんの顔が見えないので難しい面もあるが、高齢者にとっても病院に来る不安を取り除けると思う」と話していました。

病院には高齢者の患者を中心に問い合わせが相次ぎ、先月だけで電話による診療は58件にのぼったということです。

森山記念病院の松尾成吾院長は「患者の中には家の外へ出たり、病院に行ったりすることが怖いと感じる方もいるので、今の状況では患者と病院の双方にとっていい診療方法だと考えている」と話しています。

感染拡大前から整備進む米国では

アメリカでは広大な国土で、医療サービスを行き渡らせることが難しいため、新型コロナウイルスの感染が拡大する以前からオンライン診療の整備が進められていました。

アメリカ病院協会によりますと、2017年時点で加盟する全米5000の病院のうち76%で、オンラインによるビデオ通話などを活用した遠隔診療が行われているということです。

そして、先月以降感染が拡大し、治療にあたる医療現場がひっ迫すると、連邦政府が医師が遠隔で診察しやすいよう、プライバシーの保護に関する運用などの規制を緩和し、保険の適用範囲を広げたことなどから、活用が加速しました。

中には、医療従事者や患者への感染を防止するため、緊急外来以外はすべてオンライン診療に切り替えた病院もあります。

アメリカ西部カリフォルニア州のエンジェル・ヒメネスくんは(12)ことし2月、のどが痛くなり、せきが出るようになりました。

母親のアンドレアさんは学校が休校となっていて、外出を自粛していたことから、病院に予約を入れ初めてスマートフォンを通じて、エンジェルくんに診察を受けさせました。

医師は新型コロナウイルスへの感染にみられる症状とは異なっていると診断し、薬を処方し自宅で療養するよう指示し、エンジェルくんの症状はその後改善したということです。

アンドレアさんは「病院に行くと他の人から新型コロナウイルスに感染する危険性があったので、遠隔での診療を選びました。息子の症状もよくなりましたし、便利なシステムだと思います」と話していました。

米の医師 課題も指摘

オンライン診療について実際に診察にあたる医師は、医療従事者や患者への感染を防ぐ対策として評価する一方、利用が増えることでシステムが使えなくなるトラブルが出ていると課題も指摘しています。

アメリカ西部カリフォルニア州の小児科医成 相枝織さんはクリニックに勤務し、新型コロナウイルスへの感染が疑われる子どもたちの診察をオンラインで行っています。

成相さんのクリニックでは対面による診察を重視していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、先月からオンライン診療を開始し、現在は全体の半数以上の診察をオンラインで行っています。

オンライン診療について成相さんは「感染の疑いがある人全員が診療で病院を訪れれば、医師や他の患者への感染が拡大するおそれがあるため、こうした患者にはまずはオンライン診療をすすめたい。そのうえで、来院が必要かどうか、医師の判断にしたがってほしい」と話します。

一方、周辺の病院ではオンライン診療専用のシステムが、利用の急増で使えなくなり、スマートフォンなどのビデオ通話システムなどで対応する事態となったということで、成相さんは「個人の医療情報が流出する心配がある」と指摘しています。

成相さんは「新型コロナウイルスという新しい感染症が流行するなか、今までどおり病院に行くことが安心・安全ではないことを認識してほしい。そして病院側も、オンライン診療のメリットとデメリットを理解したうえで、患者が安心して利用できるようシステムづくりを進めてほしい」と話していました。

中国でも急速に広まる

新型コロナウイルスが最初に確認された中国では、医療機関での院内感染が深刻化したことを受け、医師の問診や薬の処方をインターネット上で受けられる、オンライン診療を導入する動きが急速に広まっています。

このうち上海中心部にある病院は、4年前から試験的にインターネットを通じたオンライン診療を行ってきましたが、ことし2月に市内の公立病院としては初めてオンライン診療を行う部署が独立した病院として、当局に認可されました。

患者は自宅にいながらスマートフォンのビデオ通話機能を使って、医師による問診や薬の処方を受けることができます。

また、広く普及している電子マネーを使って、受診料や薬代の支払いもオンラインで行うことができ、処方された薬は自宅まで直接、配送してもらえるほか、市内の提携している薬局で受け取ることもできるということです。

この病院では個室になった診療室に医師が待機し、次々に入る患者の診察をパソコンの画面を通して行っていました。

中国では当初、オンライン診療は保険の適用外でしたが、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を背景に院内感染が深刻化し、当局がその後、保険の適用を認めるなど規制緩和に動きました。

これを受けて各地の病院でオンライン診療を導入する動きが急速に広まっていて、この病院では診察を始めて最初の2週間で5000人以上の患者が、利用したということです。

オンライン診療を行う病院の責任者、周倹院長は「携帯電話とネット環境さえあれば、われわれ病院とやり取りすることができ、感染拡大や院内感染の防止に大きな役割を果たした」と話していました。