宇宙飛行士 野口さんに聞いた “外出自粛中の秘けつ” とは

宇宙飛行士 野口さんに聞いた “外出自粛中の秘けつ” とは
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日本人宇宙飛行士の野口聡一さん(55)が、アメリカの民間企業が開発する新型宇宙船への搭乗が決まったあととしては初めてNHKの取材に応じ、意気込みを語るとともに、新型コロナウイルスの影響を念頭に、外出せずに健康的に生活するため、「ルーティーンを作る」などと宇宙飛行士ならではの秘けつを紹介しました。
日本人宇宙飛行士の野口聡一さんは、アメリカの民間企業、スペースXが開発する新型の宇宙船「クルードラゴン」の運用段階の1号機に搭乗し、国際宇宙ステーションに長期滞在することが先月明らかにされ、公表後としては初めて、NHKの取材に滞在中のアメリカからオンラインで応じました。

野口さんは民間企業の宇宙船に搭乗することについて、「民間が宇宙に挑戦できる環境を作ることで、多くの人がより遠くの宇宙に行ける時代の先駆けになると思っています。私の宇宙飛行士としての経験を注ぎ込んで、しっかり成功させたい」と意気込みを語りました。

そして、これまでの宇宙の滞在日数は通算170日以上に達し、3回目となる宇宙飛行を控えて、新型コロナウイルスの感染拡大で自宅から外出せずに過ごしている人を念頭に、「国際宇宙ステーションにいる宇宙飛行士も同じように行動制限があり、思うように人に会えないなど、似たような精神状況になります。そうした中で自分は、朝起きたあと水を飲んでから運動するという自分なりのルーティーンを作ることが、生活のペースをつかむために非常に大事でした」と狭い空間で健康的な生活をするため、宇宙飛行士ならではの秘けつを紹介しました。

そしてNASA=アメリカ航空宇宙局では、感染対策のために多くの訓練がオンラインで行われているということで、「宇宙船の操作手順を確認する動画を自宅で視聴しネットで質問するなど、訓練も遠隔化されています。仲間たちとコミュニケーションをとるのに苦労しているが、テレビ会議システムを使って顔を合わせていて元気にしているか分かるほか、後ろで子どもが走り回っているのが見えることもあり、こうしたこともすごく大事だと思っています」と現在の状況を話していました。

宇宙飛行士 野口聡一さんとは

日本人宇宙飛行士の野口聡一さんは、横浜市生まれの55歳です。東京大学を卒業後に民間企業でジェットエンジンの設計などに携わったあと、1996年に応募して宇宙飛行士の候補者に選ばれ、その後、正式な宇宙飛行士に認定されています。

2005年にアメリカのスペースシャトルで宇宙に向かい、国際宇宙ステーションの組み立てに携わりました。

また、2009年にはロシアのソユーズに乗って国際宇宙ステーションに5か月半、長期滞在しました。

これまでの宇宙での滞在日数は合わせて177日と、日本人としては若田光一さんに次いで2番目の記録です。

3回目となる次の計画では、アメリカの民間企業「スペースX」が開発する宇宙船「クルードラゴン」の運用段階の1号機に搭乗して宇宙に向かい、国際宇宙ステーションに長期滞在する予定です。

国際宇宙ステーションには居住モジュールと呼ばれる寝室や調理施設、それに運動器具などが備わっている生活用のスペースと、実験モジュールと呼ばれる実験や研究を行ういわゆる仕事場、それに倉庫の役割をもつスペースがありますが、簡単に外には出ることができない閉鎖空間です。

閉鎖空間の中でどのように健康を保って任務を果たしていくかは、宇宙飛行士にとっても重要な課題です。

野口さんは現在アメリカのヒューストンで、新型コロナウイルスの影響で制限を受けながらも、次の打ち上げに向けて訓練を続けています。

米の宇宙開発 民間企業の役割大きく

アメリカでは長くスペースシャトルが有人宇宙活動を支えてきましたが、運用や維持に多額の費用がかかることから、2011年に退役しました。

その後、アメリカは宇宙に人を送り込む独自のロケットを持たず、国際宇宙ステーションに行くにはロシアのソユーズを使っていましたが、ロシア側に1人当たり数十億円の費用を支払っていました。

アメリカは他国に頼らないで宇宙開発を行うことができるよう、新たな宇宙船の開発を求める声が強くなったほか、宇宙開発を通して経済成長を促し、コストを削減することも目指して宇宙船の開発を民間企業に委託することになりました。

そしてNASAが開発を委託する民間企業として、「スペースX」と「ボーイング」の2社が選ばれました。いずれも去年無人の飛行試験を行いましたが、ボーイングの宇宙船はエンジンが正常に作動せず、国際宇宙ステーションにドッキングできないトラブルがありました。

一方、スペースXの宇宙船「クルードラゴン」は無人での試験に成功しました。来月、「スペースX」の「クルードラゴン」はアメリカ人宇宙飛行士2人を乗せて打ち上げられ、国際宇宙ステーションにドッキングする初めての試験を実施することになっています。

この試験に成功すれば運用段階に入ることになり、時期は未定ですが、1号機に日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗して打ち上げが行われる予定です。

アメリカは2024年に再び月面に宇宙飛行士を送る月探査計画を進めていますが、この計画でも着陸船の開発に複数の民間企業の参加が予定されるなど、宇宙開発の分野では、民間企業が果たす役割が大きくなってきています。