あの時でも売れたのに、コロナは別だった… ある豆腐店の閉店

あの時でも売れたのに、コロナは別だった… ある豆腐店の閉店
新型コロナウイルスの感染が広がる中、東京 新宿区にある豆腐店が店を閉めることを決めました。店主は「リーマンショックでも東日本大震災でも豆腐が売れなくなることはなかったが、今回は別だった」と影響の大きさを語っています。
店を閉めることを決めたのは東京 新宿区で酒井政彦さんが営む豆腐店で、先々代から79年続く豆腐作りをやめることにしました。

家業を手伝い始めた若いとき、京都で食べた木綿豆腐のおいしさが忘れられず、「にがり」ではなく、「すまし粉」と呼ばれる独特の柔らかさの出る凝固剤を使った木綿豆腐の味にこだわり続けました。

酒井さんは「毎日必ず木綿豆腐を1丁だけを買いに来る近所のおじいさんがいた。何も言わないが、味の変化に気付いているようで怖かったし、裏切れないと思った」と客との思い出を語っています。

店はかっぽうやホテルなど30件ほどの取り引き先がありましたが、飲食店が休業するようになってから毎日のように注文が減りました。4月の半ばには配達する豆腐は「0」になり、毎日500丁作っていた豆腐は店頭で販売するための3分の1ほどになりました。

酒井さんは「リーマンショックでも東日本大震災でも豆腐が売れなくなることはなかったが、今回は別だった。末端の豆腐屋に影響が来るなんて」と話しています。

また、「融資制度はあるがそれは借金だし、新型コロナウイルスの影響がいつまで続くか分からない中、やむをえなかった」と話していて、知り合いのそば屋からも“先に店を閉めるよ、申し訳ない”という電話があったということです。

酒井さんは「商店街は、対面での触れ合いがあるから人が集まる。新型コロナの影響で会話や触れ合いもなくなっている。世の中から笑顔がなくなり冷たくなっていくようで不安に感じる」と話していました。