子ども食堂 4割近くが活動休止 「つながり維持が大事」コロナ

子ども食堂 4割近くが活動休止 「つながり維持が大事」コロナ
臨時休校や外出自粛が続く中、全国の子ども食堂の4割近くが活動休止に追い込まれていることが、NPOなどが行ったアンケート調査で分かりました。一部の子ども食堂では、活動を食料品の配布などに切り替えて支援を続ける動きも出てきていて、NPOは「子ども食堂は必要とする人の生命線になっている。人と人との物理的な距離は取りながらも社会のつながりは維持していくことが大事だ」と話しています。
「NPO法人 全国こども食堂支援センター むすびえ」などは、全国の子ども食堂の運営団体を対象に、今月の活動状況についてアンケート調査を行い、35の都道府県の231団体から回答がありました。

それによりますと、新型コロナウイルスの影響で活動を休止や延期している団体がおよそ39%に上ることが分かりました。

理由としては、地元の自治体から自粛を要請されたことや、運営に関わるボランティアを集められないといったことがあげられています。

一方で、活動内容を「食材の配布」に変えたという団体がおよそ22%、「弁当の配布」に変えたという団体もおよそ21%に上り、利用者が密集しないよう感染予防対策をとったうえで支援を続ける動きも出てきています。

ただ、「困っていること」などについて自由記述の形式で意見を求めたところ、利用者が「生活困窮へと突き進んでいる状況です」、「子ども食堂でつながっていたシングルマザーの方の支援ができなくて困っている」、「家庭内が見えてこないため虐待も含めてSOSが出せない状況が危惧されます」といった声が寄せられ、支援が難しくなっている現状が浮き彫りになっています。

NPO法人の理事長の湯浅誠さんは、「子ども食堂は必要とする人たちの生命線にもなっています。顔を合わせられない、距離を取らないといけないという意味では、非常に厳しい状況であるのは間違いないと思います。ただ、物理的に距離はとったとしても、社会のつながりは維持していくことが大事だと思います」と話しています。

活動の場失い支援困難な食堂も

子ども食堂の中には、活動の場が失われ、家庭への支援が難しくなっているところも出てきています。

東京 府中市の団体は、4年前から月1回、自治会の施設で子ども食堂を開き、多いときには60人ほどの親子が参加していましたが、先月から新型コロナウイルスの感染を防ぐため休止を余儀なくされました。

しかし、学校が休校になって給食がなくなると、食事に困る家庭が増えるため、団体では市の施設を借りてレトルト食品やお菓子などの食料品を配布する活動に切り替えました。

先月は3回実施し、延べ90人を超える人が利用したということですが、今月緊急事態宣言が出されると市の施設も使えなくなってしまいました。

自治体や企業からはたくさんの食料品の寄付が集まっていて、団体では、取りに来てもらう時間を分散するなど感染防止対策を行いながら配りたいと考えていますが、配布場所の確保が難しいといいます。

今月は市内の教会が場所を提供してくれましたが、今後も継続できるか不透明な状況だということです。

子ども食堂を運営する「こどもの居場所作り@府中」の南澤かおりさんは「食材はたくさんあり、もらってすごく助かるという方もたくさんいらっしゃるのですが、それをどこで配るかということに苦労しています。地域の施設の中には高齢者の施設と一緒になっていたりして使えないケースもあります」と話しました。

そのうえで、「食料品というのは『ツール』であって、皆さん、自分の声を伝える場所とか人とつながる場所を求めていると感じます。一時的ではなくて具体的、継続的な支援が必要だと思っています」と話しています。

形変えて支援継続の食堂も

東京 豊島区で子ども食堂や学習支援を行っている団体は、今週からひとり親家庭などに宅配で米やお菓子などを届ける支援を始めました。

豊島区では先月以降、区内の5つの団体が協力して、ひとり親家庭などに食材の配布を行ってきましたが、東京都に緊急事態宣言が出されたあとは、いったん取りやめていました。

しかし、感染防止対策を行いながらなんとか支援を継続できないかと考え、宅配で食材を届けることにしました。

宅配は、利用者にインターネットで申し込んでもらう仕組みで、その際、「今、困っていること」を書いてもらっています。

申し込みはすでに200件を超え、収入の減少や、子どもを預けられず職探しができないといった悩み、それに自分が感染した場合、子どもをどうすればいいのかといった不安が寄せられているということです。

食材を受け取った中学生の子どもを持つシングルマザーの40代の女性は、「顔が見えて相談できればいちばんよいのですが、この状況だと人に会えないし、家庭の悩みを行政の電話窓口に相談するのは少しためらいを感じてしまいます。特に、小さい子どもを持つ母親は仕事や収入が減り、家で留守番をさせている子どもにも不安を抱えているので、こういう支援があると、本当にありがたいです」と話していました。

団体の1つ、「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」理事長の栗林知絵子さんは、「申し込みをした方の中には『なんとか乗り越えます』という方もいれば、『子どもの預け先がなくて就職活動もできず、これからの暮らしをどうしよう』という方もいます」と話しました。

そして、「直接、顔を見て会う機会は減っているし、子どもや親たちの居場所がなくなっていますが、メールや電話はまだつながっている。こういう状況だからこそこれまでと違う手段で心と心がつながる方法を開発していくチャンスだと思っています。どうやって解決していくか、街の人みんなで考えていければいいと思います」と話しました。

NPO「社会のつながり維持が大事」

NPO法人 全国こども食堂支援センター「むすびえ」の理事長、湯浅誠さんは、ほとんどの子ども食堂が通常どおりの活動をできていない現状について、「感染リスクを下げるためには集まる場所を作らない方がいいというのは百も承知なのですが、気になる子どもや家庭のことを考えると、活動をやめることも難しい。そうした中で各団体は活動するにしても休止にするにしてもぎりぎりの判断の中で決定していて、非常に厳しい状況だと思っています」と話しました。

そして、学校の休校や外出自粛が子ども食堂の利用者らにおよぼしている影響について、「生活面から見ると大きいのは収入源や失業のリスクです。そしてもう一つ見過ごせないのが『在宅リスク』で、DVなどが典型的ですが、家庭内が煮詰まり、より深刻になることも懸念されています。だからこそ地域に子ども食堂のような居場所があることが大事だったのですが、それが開けなくなり心配な状況です」と話しました。

一方で、子ども食堂の中に、食料品や弁当の配布・宅配に切り替えて支援を継続する動きが出てきていることについては、「食材を提供するときに顔を合わせて愚痴を聞いたり、必要なアドバイスをしたり、形を変えつつも食材を通じてつながるという子ども食堂が持っていたエッセンスを維持しながらやろうとしている。文通やオンラインでのチャットなども活用しながら、なんとかつながりを絶やさないように努力されていて、まさにそこが希望だと思っています」と話しました。

そして、「子ども食堂は必要とする人たちの生命線にもなっています。顔を合わせられない、距離を取らないといけないという意味では、非常に厳しい状況であるのは間違いないと思います。ただ、物理的に距離はとったとしても、社会のつながりは維持していくことが大事だと思います。今回、人々の距離が生じたことによって、子ども食堂のようなつながりを維持する居場所の必要性への認識は高まっているし、コロナショックが収束したあとには、より一層そうした居場所が地域の中に増えていくという状況をつくっていきたいと思っています」と話しました。