視覚障害者も収入途絶える 障害者団体が支援要望 新型コロナ

視覚障害者も収入途絶える 障害者団体が支援要望 新型コロナ
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのソーシャル・ディスタンシング=社会的距離は、視覚に障害がある人にとって、生活の糧となる仕事をも奪う形になっています。
東京 北区であん摩マッサージ指圧の治療院を開いている遠藤吉博さん(62)は、先天性緑内障の病気で10歳の時に完全に視力を失いました。

その後、あん摩マッサージ指圧師の資格を得て、30年ほど前に治療院を開業し、生計を立ててきました。しかし、直接、患者の体に触れて行うマッサージは、感染拡大のおそれがあるため、休業せざるをえませんでした。

遠藤さんは、「感染のリスクに不安を抱えたまま来てもらっても、患者の心は安まらないし、どうしても患者と接触してしまうため、休業することに決めた」と話していました。

休業から、2週間余り。それまで、治療院には日に2人から3人の患者が訪れ、月20万円程度の収入になっていましたが、今、収入は全くありません。さらに、治療院の部屋の月7万円余りの賃貸料も重くのしかかります。

遠藤さんは、「収入がゼロというか、家賃があるのでマイナスだ。ふだんから蓄えがあれば別だが、蓄えを作れるほど収入はなかった。この先どれくらいまで、緊急事態が続くのか。感染予防はもちろんだが、仕事の収入も得なくてはいけないという葛藤がある」と複雑な心境を話していました。

障害者の団体が国に支援要望

新型コロナウイルスの感染拡大で、視覚に障害がある人のマッサージの仕事が大幅に減少するなど、雇用や生活への不安が広がっているとして、障害者の団体が国に支援を求める要望書を提出しました。

日本視覚障害者団体連合は、先月下旬から今月にかけて設置した、仕事や生活への影響に関する窓口に寄せられた相談を踏まえ、国への要望書を22日付けで提出しました。

要望書では、視覚障害者が仕事にすることが多いあん摩マッサージ指圧師の仕事が激減しているとして、所得の保障を求めています。

また、病院や買い物に行く際に同行してくれる「ガイドヘルパー」の利用が、腕をつかむなど濃厚接触にあたるため難しくなっているとして、車を利用するなど柔軟な支援方法を認めることなどを求めています。

このほか、盲学校の寄宿舎に入っている生徒の中には、寄宿舎が休みに入り、泊まるところがなくなるのに新型コロナウイルスの影響で自宅への帰省が難しくなっているケースがあるとして、学校側の柔軟な対応を求めています。

自身も全盲の橋井正喜常務理事は、「マッサージの仕事はもちろん、視覚障害者は移動を含めて何をするにも手助けが必要で、濃厚接触になってしまう。こういうときだからこそ、私たち視覚障害者に声をかけていただき、助けていただければ」と話していました。

団体では、引き続き情報を集めていて、相談の電話番号は03-3200-0011で、平日の昼休みを除く午前10時から午後4時まで受け付けています。

また、FAXが03-3200-7755、メールがsoudan@jfb.jpとなっています。