帰国者受け入れのホテル 感染への不安抱えながら 新型コロナ

帰国者受け入れのホテル 感染への不安抱えながら 新型コロナ
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新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、海外から帰国した人たちの受け入れ先となっているホテルの従業員も、日々、感染リスクへの不安を抱えながら、最前線で仕事を続けています。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、客室の稼働率が大幅に落ち込んでいる、東京都内のホテルは、厳しい経営状況の中、今月から、海外から帰国してウイルス検査を受けた人が、14日間の健康観察中に滞在する場所として、受け入れを始めました。

受け入れるのは、検査で陰性だとわかった人たちですが、感染の可能性は否定できません。ホテルでは、ほかの客や、従業員への感染を防ぐため、対策を徹底しています。

まず、客と従業員が直接向き合うフロントには、透明のシートを張って、飛まつ感染対策をとりました。また、レストランなどの共用スペースも、人と人の接触を少なくするために閉鎖しました。
健康観察中のため、外出できない客には、ホテルで作った弁当が1日3食分提供されています。さらに、部屋の清掃は、客がチェックアウトして3日たってから行うことにしました。
清掃担当の従業員の装備は、マスクと手袋だけではなく、全身を覆う防じん服、さらにはゴーグルをかけます。そして、ドアの取っ手などに消毒液をかけて入念に拭くことから始めます。

担当する男性は「長期滞在のお客さんのタオルやシーツは、直接渡さないで部屋の外に置いて、自分で取ってもらうようにして、できるだけ接触しないようにしている」と話していました。
こうした中、ホテルで働く人たちに衝撃が走った出来事が起きました。今月6日、系列の別のホテルで通常の客として滞在していた女性が、新型コロナウイルスに感染していたことがわかったのです。

ホテル側によりますと、この女性は、体調不良を感じたため、今月1日にウイルス検査を受けていました。同居する人に迷惑をかけたくないとして、今月3日からホテルに宿泊しました。ホテルでは、チェックインの際、客に発熱などの健康状態を質問し、感染の可能性を確認する書類に署名を求めていましたが、この女性からの申告はなかったということです。

滞在中、女性には検査の結果が陽性だったことが伝えられましたが、それをホテル側が知ったのは、今月6日の朝、女性がフロントに直接伝えに来たということです。

チェックインを担当した男性は、「頭の中が真っ白になり、何も考えられない状況だった。具合が悪かったり、せきこんだりしている状態ではなかったので、判断は難しく、なぜもっと早く言ってくれなかったかという怒りのような気持ちがこみ上げてきた」と話していました。

その後女性は、保健所によって車で病院に移送されました。女性が滞在していた系列のホテルは、現在も、一時休業したままです。

感染防止対策に限界があるなかでのホテルでの仕事。従業員の男性は、「特にホテルは不特定多数の方が出入りし、スタッフもたくさんいるので、1人でも陽性者が出たということになると、現場がいちばん大変になる。具合が悪かったときは、私たちも特にお客様をお預かりしている立場ですので、お伝えいただければうれしい」と話しています。
私たちの社会を支えるためにリスクを背負いながら働く人たちを支えようという取り組みが広がっています。

取材したホテルの運営会社は、系列の別のホテルで、今月中旬から、医療従事者向けに1泊1000円で宿泊できるプランを打ち出しました。

医師や看護師の間で、みずからの家族への感染リスクを不安に感じる人や、連日の激務のなか、病院泊まりでさらに体力を奪われるという声を聞いたからです。インターネットを使って資金の支援を求めたところ、22日午前9時現在、およそ700人から290万円余りの寄付が集まり、医療従事者の宿泊は、来月6日まで無料になりました。さらに、ホテルの従業員も支援の対象になりました。

ホテルの運営会社の平林朗社長は、「医療崩壊してしまうと、日本の安心安全がなくなるのではないかという恐れを、私たちも感じている。医療従事者は過酷な環境で働かれているので私たちは何ができるだろうと考え、宿泊を提供することにした。非常に多くの人たちから賛同をいただいている」と話していました。

寄付をした人たちからは「医療従事者やホテルのスタッフの皆さんに感謝したい」とか、「健康と安全を願っている」といった190余りのメッセージが寄せられ、支援の輪は広がり始めています。