「安心のため」のPCR検査 希望者相次ぐ 新型コロナ

「安心のため」のPCR検査 希望者相次ぐ 新型コロナ
職場の上司に指示されて、新型コロナウイルスにかかっていない証明書がほしいと、PCR検査を希望する人が相次いでいるとして、医療関係者は「本当に必要な人のため、不要な受診は控えてほしい」と訴えています。
千葉市稲毛区の河内文雄医師の診療所では、新型コロナウイルスを疑う症状があり必要だと判断した場合には、保健所と相談しPCR検査の検体を採取しています。

しかし感染の拡大にともなって「自分が感染していないことを示す証明書がほしいので検査を受けたい」と受診する人が相次いでいるということです。

一時的な体調不良はあったものの感染を疑う症状はなく、職場に復帰する際などに上司から指示されて受診する人が多く、中には医師が上司に直接電話をして検査できないことを説明し、ようやく納得してもらったケースもあったということです。

同様の声は他の多くの医師仲間からも寄せられているということです。

河内医師は「部下を心配してではなく、仕事に復帰しても大丈夫という安心のために診断書がほしいというケースが多い。検体採取の際、感染のリスクが高いPCR検査を非常に軽く考えていて、説得に時間がかかるため、結局は他の患者さんの診療時間や医療資源を奪うことになってしまう。社会全体で、検査の本来の意味を理解してもらう必要がある」と話しています。

「必要ない人の検査 認められない」

検査結果の証明について厚生労働省は、ホームページに掲載している新型コロナウイルスに関する企業向けのQ&Aの中で、PCR検査は医師や自治体が必要と判断した場合に実施しているとしたうえで、検査が必要と判断されていない労働者について、事業者などからの依頼により証明がされることはないと明記しています。

また、産業医などでつくる「日本産業衛生学会」も、企業の担当者向けに公開している「企業と個人に求められる対策」の中で、国内では退院の際などを除き、陰性を証明するためだけに検査を受けることはできないと説明しています。

そのうえで、陰性を証明する書類を、退院後に職場復帰する社員が発行するよう求めることや、会社が社員に提出を指示するなど、診療に過剰な負担がかかる要求は行わないよう記しています。

発熱などがあっても感染したと診断されなかった場合については、当然必要がないとして言及していませんが、学会では近く注意を呼びかける文面を追加したいとしています。

産業医で日本産業衛生学会の宮本俊明理事は「PCR検査は本当に必要としている人のために行うべきで、必要ない人が本来のル-ルを無視して、やれというのは許されない行為だと理解してもらいたい」と話しています。