「外出制限解除は早すぎる」58% 米メディアの世論調査

「外出制限解除は早すぎる」58% 米メディアの世論調査
アメリカの主要メディアのウォール・ストリート・ジャーナルとNBCテレビが今月13日から15日までに全米の900人を対象に実施した世論調査では、回答者の6割近くが経済活動の再開に慎重な姿勢を示しています。
調査では「外出制限の解除は早すぎる」と回答した人が58%となった一方で、「外出制限が長すぎる」と回答した人は32%で、経済活動の再開を急ぎ、感染が再び拡大することを懸念している人のほうが多かったとしています。

また、調査の回答者を党派別に分析した結果、民主党支持層の77%、無党派層の57%が「外出制限の解除は早すぎる」と回答した一方、共和党支持層で同様の回答をした人は39%で、逆に「外出制限が長すぎる」と回答した人が48%と、経済活動の再開を求める回答が全体の半分近くを占め、党派による考えの違いも浮かび上がっています。

9割の州と首都で外出制限

アメリカでは20日の時点で、全米の9割に当たる45の州と首都ワシントンで住民の外出を制限する措置がとられています。

多くの州では警察や医療従事者、スーパーの店員や電気、ガス、水道、公共交通機関といった社会基盤の維持に必要な職業の人を除いて、すべての社員や従業員などの出勤を禁じていて、東部ニューヨーク州では違反した事業者には、罰金や事業所の閉鎖などの罰則を科すことにしています。

また、南部オクラホマ州は65歳以上の住民と持病のある人に限って、外出を控えて自宅にとどまるように命じています。

一方で中西部ノースダコタ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、アイオワ州、南部アーカンソー州の合わせて5つの州は住民の外出を制限する措置をとっていません。

その理由について、サウスダコタ州のノーム知事は17日の記者会見で「感染を広げないためにサウスダコタの人たちが、責任ある行動を取ってくれると信頼している」と述べています。

また、一部の州は経済活動の段階的な再開に向けて動きだしていて、このうち南部フロリダ州は17日、一部の地域で時間を限定してビーチと公園を開放したのをはじめ、20日からは南部サウスカロライナ州が衣料品店や書店、生花店など一部の業種の営業再開を認めています。

相次ぐデモ 背景に政治的思惑も

アメリカでは、トランプ大統領が経済活動の再開に向けた指針を発表した今月中旬から、全米各地で外出規制の緩和や経済活動の再開を訴えるデモが相次いでいます。

デモは東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州、南部フロリダ州、西部カリフォルニア州など、全米の少なくとも28の州で起きていて、このうちペンシルベニア州の州都、ハリスバーグでは20日、州議会の前に200人を超す人たちが集まりました。

参加した人たちは経済活動の再開を訴えるプラカードを掲げて「外出制限で生活が苦しくなっている」と声を上げました。

参加者の中には怒りをあらわにする人もいて、警備にあたる警察官に詰め寄る人もいるなど混乱した様子もありました。

5人の子どもを育てているというケイト・カマローさんは「個人で旅行代理店を経営していましたが、仕事がなくなりました。夫の収入も半減しました。十分な補償も得られておらず、住宅ローンを支払えません。私の知っているかぎり、収入がない中で何か月も生活できるだけの蓄えがある人はほとんどいません。この状況をなんとかしなければいけません」と話し、一刻も早く規制を解除して仕事を再開させてほしいと訴えていました。

生活への影響を訴えたり、不満を募らせたりする人がいる一方で、アメリカのメディアはデモの背景に政治的な思惑もあるという見方を伝えています。デモの中には与党・共和党に近い保守系団体が主催したり、トランプ大統領を支持する団体が呼びかけたりして起きたものも少なくなく、今月15日に中西部ミシガン州の首都ランシングでのデモも保守系の団体が主催したことが明らかになっています。

ミシガン州は感染で死亡した人が全米で3番目に多く、野党・民主党所属のホイットマー知事は今月上旬、外出制限を今月30日までに延長し、住民がほかの家を訪ねることも原則、禁止しました。

これに対し、一部の住民が州の庁舎に向かって自家用車で列をなして抗議の意思を示すなど、州では反発も出ています。

このデモを呼びかけた保守系団体の幹部のマット・シリーさんは、インタビューで「デモは、州知事の命令に住民は服従せず、抗議することを示している。州知事は経済活動の再開までにあまりにも長い時間をかけていて、多くの家庭を苦しめている」と主張しました。

そのうえで「トランプ大統領の段階的に経済を再開する計画に賛同する。これはとても堅実な計画だ。身体的、精神的、経済的な健康状態が悪化していることに注意すべきだというのがトランプ大統領が伝えようとしていることだ」と述べ、トランプ大統領の方針を強く支持しました。

シリーさんが経営する車両部品会社の工場は、州の緊急事態宣言が出される前の先月9日に取材した時にはフル稼働の状態でしたが、外出規制が出されてからは売り上げが75%減ったということで「州の感染のピークは過ぎたと専門家が話している。新型コロナウイルスは全滅しないため、全滅するまで家に閉じこもり続けるのは無理だ。経済活動を再開して、みんなが仕事に戻れるようにするべきだ」と訴えていました。