飲食店経営者ら 賃料猶予に関する法律制定を提言 新型コロナ

飲食店経営者ら 賃料猶予に関する法律制定を提言 新型コロナ
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で賃料の支払いが困難になっている飲食店の経営者らが記者会見を開き、政府などに対し、ビルの所有者に賃料の猶予などの交渉に応じることを義務づける新たな法律を制定するよう提言しました。
提言を行ったのは、外食チェーンの経営者らでつくるグループで、都内で開かれた会見にはテレビ会議システムを使って飲食店の店主ら150人が参加しました。

提言では感染拡大を受けた外出の自粛や休業要請によって多くの飲食店で売り上げが落ち込み、賃料の支払いが困難になっているとしています。

しかし、ビルの所有者などに賃料の支払いについて交渉を申し込んでも応じてもらえないケースも多いと窮状を訴えました。

そして新しい法律を制定し、ビルの所有者などが賃料の猶予などの交渉に応じることを義務づけるよう求めました。

ビルの所有者などの経営環境が厳しい場合には、政府系の金融機関が賃料を一時的に肩代わりするといった支援も必要だとしています。

グループは、飲食店の経営者の声をさらに集めて関係省庁や国会議員などに働きかけたいとしています。

グループのメンバーで20店舗余りのレストランを展開する松田公太さんは、「休業要請で外食産業は生き残りが難しい状況だ。まずは、出血を止めるために家賃を猶予してもらい生き残りのチャンスをいただきたい」と話しています。

老舗おでん屋 賃料が経営圧迫

都内の老舗のおでん屋では営業の自粛で収入が激減し、入居するビルの賃料が経営を圧迫する事態となっています。
東京 新橋にある創業昭和7年のおでん屋は、ふだんは平日も多くの客が訪れ週末は予約が取れないこともある人気店です。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて東京都が不要不急の外出を控える協力を呼びかけたことから今月4日から来月6日まで自主的に営業を休止しています。
この店ではランチや弁当の販売で営業を続けることも検討しましたが、従業員への感染リスクやテレワークなどで町を訪れる人が減っていることから完全休業することにしました。

しかし、店を休んでいる間でも賃料や人件費などで月500万円ほどかかり、ビルのオーナーからは今月の賃料140万円ほどの請求書が届けられました。

店主はビルのオーナーがローンや固定資産税の支払いを抱えていることを知っているため、賃料の値下げや支払いの猶予の相談を切り出すことができず、今は貯蓄を取り崩してやりくりしていますが、それも来月いっぱいが限度だということです。

店主は「こちらの売り上げが下がったからというだけで大家さんに賃料を減らしてほしいというのはいいづらいです。賃料は営業していなくても必ず出てゆくので、救済法があれば本当に助かりますし、営業再開したときの資本にもなると思います」と話していました。

対応追われる管理会社も

東京都内の繁華街のビルを管理する会社は、飲食店などとビルのオーナーとの間に立って賃料の減額などの対応に追われています。

半世紀以上にわたって都内の繁華街にあるビルの管理と仲介を行う会社では、現在、銀座や新宿 歌舞伎町、そして渋谷など、20以上のビルを管理し、飲食店など合わせて100以上の店舗が入居しているということです。

この会社によりますと、東京都が外出自粛を呼びかけた先月下旬から飲食店などから賃料の減額や支払いの猶予についての相談が寄せられ始めたということです。

そして、政府の「緊急事態宣言」以降、相談は急増し、この2週間、社員はビルのオーナーと連絡をとって、賃料の対応について協議しています。

会社によりますと、多くの飲食店などから「賃料を半額にしてほしい」という要望があるのに対し、ビルのオーナーの多くは1割から3割の賃料の減額には応じるものの、それ以上の減額については、「施設の維持費やローンの支払いなどを抱えているので厳しい」という声があるということです。

ビルの管理会社「イルタス」の貴島浩二取締役は、「管理会社としては双方の気持ちが分かるので賃料の折り合いをつけようと努力している。ただ、このままの状況が続けば、店舗もオーナーもいつまで持つか分からず、国の全面的な支援が必要だ」と話しています。

賃料の減額を決める動きも

飲食店などが営業の自粛で売り上げが減り、賃料の支払いが経営の重荷となる中飲食店とビルのオーナー双方が折り合いをつけて賃料の減額を決める動きも出ています。

東京 新宿区の早稲田大学の近くにあるラーメン店はスープのない「油そば」が学生に人気です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けていわゆる「3密」を避けるため、今月7日から店舗での営業を休止し、家庭で作ることができるラーメンの配達を行っています。

店を経営する石田正徳さんは、売り上げが落ち込む中、合わせて6つの店舗と事務所の賃料150万円が経営を圧迫していることから、ビルのオーナーや不動産会社に賃料の減額を相談しています。21日は、このうち1店舗が入居するビルのオーナーと面会し、今月はじめに相談した来月からの賃料の減額について改めて話し合いました。

オーナーの須藤俊勝さんは、今後の国や自治体の支援制度の活用も視野に入れ最も適した賃料を決めたいとしたうえで、当分の間、来月分から3か月間の賃料を25%減額することを提案し、石田さんは受け入れました。

「油そば専門店麺爺」の石田正徳さんは、「まずは安心しました。オーナーも厳しい状況の中話し合いの場を設けてくれて本当に幸せです」と話していました。

オーナーの須藤俊勝さんは、「どんな支援制度が活用できるのかわかりにくく、結果を出すまで時間がかかりました。お互い厳しい状況だからこそ今後も助け合っていきたい」と話していました。

ビルのオーナー側は…

東京の渋谷や表参道のビルのオーナー、谷崎憲一さんの元には、賃料の減免に関する相談が相次いでいるといいます。

谷崎さんは、「気の毒なので何とかしたいが、減額に応じるのが難しい。後払いを求めるお願いもあるが世の中の状況が元に戻った時、苦しいやりくりの中通常の家賃に上乗せして返済するというのは大変で、返せないのは目に見えている。ビルの維持費や金融機関への返済が必要なので大家によって異なるが、収入が3割以上減ると赤字になる。金融機関への返済が滞るというのは信頼関係における重大な事項になるため、手持ちの金を切り崩しても返済することになる」と減免に応じることの難しさを説明しました。

そのうえで、「この状況が3か月後に終わるのか半年後に終わるのか、全く読めない。大家が、借り入れ金を銀行に返せないと結果的に建物が差し押さえられ競売にかけられる。そうなると入居者は全員出て行かなくてはならない」と長期化がもたらす店舗とオーナー双方への影響を心配していました。

独自に支援の自治体も

地方自治体の中には、外出自粛の影響で売り上げが減っている飲食店などに対して、賃料の補助など独自の支援策を打ち出しているところもあります。

▽山形市は、主に飲食店向けとして売り上げが一定程度減り、かつ1か月以上休業した場合、30万円を上限に最大3か月分の賃料を補助する緊急の経済対策を行うことにしています。

また、▽福岡県久留米市は飲食店などを支援しようと賃料を減額した店舗のオーナーに対し、固定資産税などを減額する方針を発表しました。

▽宮崎市では、売り上げが一定程度減った飲食店などに対し、10万円を上限に1か月分の賃料の80%を、補助するとしています。

さらに、▽大分県別府市は市内の中小企業や個人事業主を支援しようと月7万円を上限に最長で半年間、店舗などの賃料の半額を補助することを決め、21日から申請の受付が始まりました。

赤羽国交相「現場の状況を注視」

賃料の支払いが困難になっている事業者を支援するため、自民党が賃料の減免などに向けて必要な法整備を検討する方針を示していることについて、赤羽国土交通大臣は、具体的な内容は承知していないとしたうえで、「休業要請によってテナント業者が大変、深刻な状況になっていて、賃料の支払いが大きな負担になっていることは認識している」と述べました。

そのうえで「テナントの家賃負担の問題については、国会でもさまざまな意見が出ていると承知しているし、この状況が長引けば長引くほど大変な状況になる。現場の状況を注視しながら、関係省庁と連携してしっかり対応していきたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長[さらなる経済対策必要]

自民党の世耕参議院幹事長は、事業者に対する賃料の免除や、雇用調整助成金の助成額の引き上げなど、さらなる経済対策が必要だという考えを示しました。

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で、経済対策を盛り込んだ補正予算案について、「10万円を1日も早く届けるため、できるだけ早い成立を目指していく。この補正予算案ですべてをカバーできるわけではなく、さらなる経済対策が必要だ」と述べました。

そのうえで、賃料の支払いが困難になっている事業者への支援について、「政治的決断が必要であり、賃料負担を免除するくらいの施策をとるべきだ」と指摘しました。また、雇用調整助成金の助成額について、「1人1日8330円が上限だが、雇用を守っていく経営者への助けとしては不十分だ。1万2000円を超える水準にすべきだ」と述べ、引き上げるべきだという考えを示しました。