医療機関 約半数でマスク使い回し 医師グループ調査

医療機関 約半数でマスク使い回し 医師グループ調査
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、医療機関でマスクなどの物資の不足がどのくらい深刻化しているか医師などでつくるグループが調査したところ、感染者を受け入れているか、または受け入れる可能性のある医療機関のおよそ半数で使い捨てのマスクを数日にわたって使い回していることが分かりました。
調査は、医療機関にマスクなどの物資を届ける活動をしている医師などのグループが先月末からインターネットで実施していて、今月20日までに128の医療機関から回答を得ました。

このうち新型コロナウイルスの患者を受け入れているか、または今後受け入れる可能性のある感染症の指定医療機関など75の医療機関の状況を調べたところ、診察などで広く使われ、通常は1日に何回も取り替えることもあるサージカルマスクについて、ふだんどおり使えると回答した医療機関が6だったのに対し、▽1日に1枚しか使えないが34、▽2~3日に1枚が23、▽4日以上という回答も12に上り、半数近くの医療機関で1枚のマスクを数日にわたって使い回していることが分かりました。

さらに感染症の患者などを診察する際に使われるN95と呼ばれる高性能マスクは、▽ふだんどおり使えている医療機関が22、▽1日1枚が25、▽2~3日に1枚が3、▽4日以上が25でした。

また、サージカルマスクで24の医療機関が、N95マスクで20の医療機関がまもなく枯渇すると回答しました。

調査を行った医師などのグループの代表で帝京大学ちば総合医療センターの萩野昇医師は「ニューヨークなど、海外で起きた医療崩壊の端緒には医療従事者にマスクなどの防護具が十分に行き渡らなくなったことがあったと言われ、早急に対応が必要だ」と話しています。

女性医師「マスクは週に1枚 感染の恐怖との戦い」

関西地方の医療機関に勤める女性医師はサージカルマスクが先月上旬から一人につき週に1枚しか配布されなくなりました。

高性能のN95マスクも週に1枚となり、どちらのマスクも同じものを1週間、使い続けているということです。

このため、マスクを外す際は内側を触らないように注意し、1日の仕事を終えると紙でくるんで保管しています。

今月に入ってからは新型コロナウイルスに感染した患者の受け入れも始まり、マスクが不足する現状に不安を募らせていると言います。

女性医師は「1週間使い続けるのはとても不潔で、形だけマスクをしているという状態なので、万が一、自分が感染して、院内感染を広げてしまったらどうしようという恐怖と戦いながら仕事をしています」と話していました。

また、手術着や手袋などさまざまな医療物資が世界的な需要の高まりを背景に供給が滞り始めているということで、女性医師は「まだ感染した患者の診療が始まったばかりなのに、スタート地点でこれだけ物資が足りないと、今後どんどん感染が広がったときに、どれくらいの防護具がそろっているのだろうかと、裸で闘わないとダメかもしれないという不安があって、気持ち的に追い詰められています」と話していました。

使用済みマスクを回収 再利用

医療機関でのマスク不足について、大学病院に勤める外科医が取材に応じました。

この病院は感染症の指定医療機関ではありませんが、地域の患者数の増加に伴い、2週間ほど前から軽症患者の受け入れが始まりました。

それに伴い、病院からサージカルマスクの使用を1日に1枚までに制限されるようになったといいます。

さらに、先週からは院内の手術室の前にマスクを回収する箱が設置され、そこには「欠品になる前の備え」として「しっかり洗って滅菌します」などと書かれていたということです。
これついて医師は「通常は手術のたびに変えているマスクが先週から再利用するために回収されるようになりました。

手術は長時間におよび、一度消毒した手は顔に触れられないので、マスクの中には鼻水や汗で落ちた化粧がべったりついてしまいます。

いくら滅菌されたとしても誰が使ったか分からないマスクを使うのは生理的に厳しいです」と話しています。

この医師は新型コロナウイルスに感染した患者の診療にはまだあたっていませんが、今後、動員される可能性が高いということです。

また、院内のどこで感染した患者に接するか分からないため、手術以外でもマスクをする必要があり、院内では自分で手作りしたマスクを使っているといいます。

医師は「政府がマスクを調達していると聞くが、現場には供給されている実感がなく、せめて前線で診療にあたる際には身を守る物資が届くようにしてほしいです」と訴えています。

緊急避難マスクなどの寄付呼びかけに反響も

調査を行った医師などのグループでは、個人宅や企業に眠る医療物資を掘り起こし医療機関に届けるプロジェクトを今月から本格的に始めました。

SNSを通じてサージカルマスクやN95マスクなどの医療物資の寄付を呼びかけたところ、この半月ほどで少なくとも200件の寄付が寄せられたということです。

プロジェクトでは、医療機関に対してマスクのほか、ガウンやゴーグル、グローブなど、医療従事者の身を守るために必要な資材の在庫状況を尋ねるアンケートも実施していて、寄付で集まった物資を随時、必要としている医療機関に届けています。

グループの代表で帝京大学ちば総合医療センターの萩野昇医師は、「新型インフルエンザ対策で医療用マスクなどを備蓄している企業もある。寄付だけで賄えるわけではなく綱渡りの状況に変わりはないが緊急避難的な措置として、最前線に防護具を届けるためにそうした物資を寄付してほしい」と話していました。

萩野医師は物資の寄付などの申し出はメールで連絡してほしいと呼びかけています。

メールアドレスは、covid19maskjp@gmail.comです。