駅の利用“事前に連絡を” 広がる不安の声

駅の利用“事前に連絡を” 広がる不安の声
駅に掲示された「利用する際には事前に連絡をお願いします」というお知らせ。

女性は「この時間帯は、絶対に来ないでください」と言われ、驚いたといいます。
都市部のJRの駅で今、何が起きているのでしょうか。(さいたま放送局記者 清有美子)

「この時間帯は絶対に来ないでください」

さいたま市に住む井上三佳さんは先天性の病気で足に障害があり、車いすを利用しています。

自宅からJRの電車を乗り継いで、福祉作業所があるさいたま市北区の土呂駅に通っていますが、乗り降りには駅員の介助が欠かせません。
しかし、ことし2月、駅員から1枚の紙を手渡され、思わぬことばをかけられました。

「この時間帯は絶対に来ないでください」

井上さんはあぜんとしました。
手渡された紙を見ると「始発から午前6時半頃」「午前9時30分頃から午前11時頃」など、1日のうち6つの時間帯が「インターホン対応」になると書かれていました。

「インターホン対応」とは

「インターホン対応」とは、JR東日本が経営の効率化のために5年前から徐々に進めている取り組みです。

一部の時間帯で駅の窓口に駅員が不在となるため、その時間帯は窓口に設置されたインターホンを通じてやり取りします。
さいたま市内の駅の場合、利用者がインターホンに話しかけるとターミナル駅の大宮駅の駅員につながります。緊急の場合は、大宮駅の駅員からインターホンがある駅にいる窓口以外の業務をしている駅員に対応するよう指示をする仕組みです。

3月から新たに2つの駅で導入され、さいたま市内では半数以上の11の駅で導入されました。

JR東日本では、「公共交通機関としての使命を果たすためには、効率的な駅運営が必須であり、将来的な鉄道利用者の減少や社員数の減少を踏まえ、限られた人的資源で駅を運営していく必要があることからその一環とし、駅遠隔操作システムを導入している」と説明しています。

利用者から不安の声

「インターホン対応」の案内は駅に掲示されていますが、取材を始めた2月の時点では、車いすの利用など駅員の案内を利用する場合は「ご乗車の1日前までにご連絡ください」と書かれていました。

今は、この表現が「事前の連絡にご協力をお願い致します」と書き換えられています。
駅を利用するのに、事前に連絡が必要というJR東日本の対応に利用者からは不安の声が上がっています。乗り降りの際に駅員に介助をお願いしている井上さん。
勤めている福祉作業所は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、通勤の混雑を避けるため、勤務時間を午前11時から午後3時までとふだんより短縮しています。このため井上さんが帰宅する午後3時は、土呂駅の「インターホン対応」の時間帯に当たってしまいました。また、体調の変化などで急に、いつもと違う時間に電車を利用することもあります。
井上さんは、「何かあった時にすぐに対応してもらえないおそれがあるのは困ります」と話していました。

さらに、視覚障害者からは「インターホンが付いている位置がわからない」、聴覚障害者からは「インターホンがあっても使えない」などの声が出ています。

見直しを求める動きも

ことし2月、さいたま市など5つの自治体は、埼玉県を通じてJR東日本に対し、駅員の再配置など対応を見直すよう要望を出しました。
事前に連絡が必要となれば、車いすを利用する人の移動や社会参加の制限につながったり、緊急時の対応への遅れや利用者への利便性が低下したりするとしています。

取材に対して、JR東日本は「駅係員が直接対応する場合と同等レベルのサービスを提供できている。スムーズにご利用いただくために関係箇所への連絡が必要な場合がありますので、事前の連絡にご協力をお願いしています」とメールで回答しました。

専門家「きめ細かい対応求められる」

公共交通機関のバリアフリーに詳しい「交通エコロジー・モビリティ財団」の澤田大輔課長は次のように指摘しています。
澤田課長
「障害があるなしにかかわらず、どのような人でも公共交通機関を利用したいときに利用する、行きたい目的地に行けるということが重要です。特定の人が事前に連絡を求められたり、移動時間を多く見積もらなければいけなかったりするなど、ほかの利用者と違う負担が出てしまう対応は課題があると思います。経営の効率化の必要があるのであれば、経験ある退職者を再雇用することもできると思います。小さい駅であれば地域の商店の人に案内をお願いできるかもしれません。国や自治体、住民が連携し利用者のニーズを洗い出して問題に対応する仕組みを作っていくことが大切だと思います」
徐々に都市部で進んでいる駅の窓口の“無人化”。

生産人口の減少が進む中、経営の効率化は避けて通れない問題ですが、その仕組みに不安を感じている人たちの声にどのように向き合って対応していけるかが問われています。
さいたま放送局記者
清有美子
平成15年入局
経済部、報道局遊軍を経て
現在は、さいたま市政や経済を担当